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インゲームフォトグラフィについての考察その1:ゲーム攻略に写真撮影が必須なゲーム


ゲームの中の写真撮影は、それだけで十分なコンテンツ


ゲームの中の風景や出来事もまた、プレイヤーに何らかの感情を生むのは間違いありません。それは現実と同じであり、つまりはその瞬間を切り取るという行為もまた、現実と同じ感情を生むのではないかと思います。

今回からいくつかのnote記事に分けて、ゲームの中の写真撮影…通称インゲームフォトグラフィについて考えていきたいと思います。



「インゲームフォトグラフィー」とは

これは名前の通り、ゲームの中の景色や情景、場面を写真に撮る、ということです。もちろんゲーム画面の映ったモニターをカメラで撮るのではなく、スクリーンショットやフォト機能で撮影するということです。動画ではなく、静止画です。
これについて考えていく、そのスタートとして、「写真」というものから考えます。



写真

そもそも、ゲームの中で「写真を撮る」ということはどういうことなのか。
まずは、現実で写真を撮ることから振り返ってみます。

今まで写真を撮ったことが無い人、写真を撮られたことが無い人はいないと思います。
時間と共に変わっていく世界を切り取り、思い出として残すことが出来る写真。息を飲むような美しい景色、行ったことの無い場所の景色を共有してもらう手段としての写真。構図にこだわり、今にも動き出しそうな迫力あふれる写真。
写真という視覚の情報を、伝えたり伝えられたり。そうすることで、情報の伝達以上に、感情や思い出の共有も出来るのは、写真のいいところですよね。
もちろん、「他の人と一緒に撮る写真」というものもあります。学校の入学式や卒業式、はたまた結婚式など人生における節目で撮る記念写真や、友人とふと撮る写真など。思い出を形として残す、簡単で便利な手段の一つです。

今、そんな写真撮影が、ゲームの中で徐々に盛り上がってきています。
ゲームの中の思い出を残したり、共有したりするための撮影。
ただ単に画面のスクリーンショットを残すという段階から、現在はその撮影自体に様々な効果を加えることも可能な段階へと進化してきています。
私自身も、景色が美しいゲームなんかは攻略そっちのけで撮影に夢中になってしまったりしています。

そんな中、多くゲームをプレイし、スクリーンショットを撮影していたとき、ふと気づくことがありました。
写真を撮る...写真として記録を残すゲームに、種類があるということです。
分解して考えると、下記の通り分けられるのではないでしょうか。

①「ゲームの進行において、写真撮影が必須なゲーム」
②「ゲームの進行には関係なく、オプションとして写真撮影(フォトモード)があるゲーム」


これらについて、ゲーム例を出して考えてみます。



「ゲームの進行において、写真撮影が必須なゲーム

まずは、ゲームの進行(攻略)そのものに写真撮影が必須のゲームです。
ゲーム自体の目的や、ゲーム進行のトリガーとなっているのが写真撮影で、これを抜きにしては話が進まないゲームについて考えます。


「New ポケモンスナップ」

最も新しいものだと、『New ポケモンスナップ』なんかが非常に良い例になると思います。

ポケモンを捕まえるでも戦わせるでもなく、「撮影」することが目的となっているゲームです。
主人公は、海や森、山などいくつかのマップをめぐり、その地域に生息しているポケモンを撮影することがこのゲームの目的です。

ポケモンを撮影した際、その写真(画像)の中の、ポケモンの大きさ・向き・ポーズなどが点数化され、ポイントとなります。また、新しいポケモンを撮影することでもポイントになり、一定のポイントが貯まることで新マップ解放(ゲームの進行)に繋がっていきます。
ポケモンもただオブジェクトとして存在しているのではなく、その個性に沿った動きをしていたり、他のポケモンと干渉しあったりと、生態系を感じられるような作品でした。

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一方で、そのようなキャラクターものではなく、完全に想像の世界、ゲームの中で形作られた世界を撮影する、というゲームもあります。インディーゲーム「UMURANGI GENERATION」です。



「UMURANGI GENERATION」

このゲームは、決められたステージの中を移動し、いくつか指定されたアイテムや景色を撮影すれば次のステージへと進める、というものです。グラフィックはPS1、PS2くらいのようなややチープな感じがありますが、音楽面も合わせて、チープさというよりはあえてその表現でゲームを制作しているグルーヴ感のようなものを感じました。

ゲームの中身なのですが、マップの中を移動し、自由に撮影できるのはやはり面白いです。ポケモンスナップは一定のルートを自動でキャラクターが移動する「レールシューター」方式でした。これは、自分の意志で自由に動けないことを意味します。(いい記事があったのでシェアします!)


一方でこのゲームは、自分で自由にマップを動くことが出来るので、自分のこだわりで撮影が可能でした。

また、指定されたもの以外も撮影できるので、全く関係ない鳥や人物を撮影したり、またその写真の色味なんかも調整できるので、どちらかというと写真という自分の作品を作り上げるような印象もあります。
加えて、写真を撮る事に、その写真に値段が自動でつけられるのも面白さのひとつでした。

1つのステージ自体は広くはないので、ある程度撮影に満足したら次のステージに行きたくなります。そのために指定されたものを撮影するのですが、これがどちらかというと「宝探し」に近い印象でした。
これは、ひとつの気づきであったと思います。

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撮影目標が決められている



We Become What We Behold

一方で、撮影という行為を用いた風刺的なゲームも存在します。

この「We Become What We Behold」は、プレイヤーが撮影した一つの場面がゲーム内のメディアで放映され、それを見たキャラクターがその内容に影響されていく、というゲームです。ゲームというか、アート的な部分が相当に強いものであると思います。

例えば、帽子を被っているキャラクターを撮影すれば、みんなが帽子を被るようになります。

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一方で、別々の主張の人同士が喧嘩しているような部分を撮影すると、それぞれのタイプの人達がお互いを憎むようになります。

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このような刺激的な一瞬をメディアで公開し続けたら世界はどうなるのか...。
極めて短時間で終わるゲームなので、興味ある方はぜひ。

このように、写真撮影がそのままゲーム内に影響し、どんどん世間が変わっていく、そんなゲームも存在します。



「特定の物・場面を撮影」それは宝探しと似通ったゲームになる

他にも撮影がゲームのコアになっているゲームはありますが、いくつかプレイしてみて思うのは、これらは「決められた答えを『見つける』ゲームプレイ」を行っているものであるということです。

どういうことかと言いますと、例えばポケモンスナップであれば、どれほど自分が「このマップの空は本当に綺麗だ!ずっとこの空だけを撮影していたい!」と思い、そう実行したとしても、ゲーム自体は永遠に進行しません。永遠にエンディングには辿り着けません。新しいポケモンや、ポケモンの珍しいポーズや接近した写真などを撮影することが「求められる」のです。

それは言い換えれば、まさに宝探し。珍しいポケモンなんかは、いくつか条件を満たすことで撮影が可能になります。ここだけ切り取れば、パズルゲームと言ってもいいかもしれません。

写真撮影と言われてイメージするものは、この世の全てを、自由に切り取るという動作のことではないでしょうか。

しかし、これらのゲームでは「ゲームの進行のために(ある程度のブレ幅はあれど)指定のものを撮影する」ということが求められ、ゲームを進める際に完全に自由があるわけでは無いのです。あくまで制限され、最終的には特定の目的を撮影するよう、強制されています。これは、「スクリーンショット」「フォトモード」とは明確に違う、意味と目的を持った撮影です。この部分は、写真撮影を必須としていないゲームとの明らかな違いです。



「Umurangi Generation」をプレイしたときにふと感じたことがあります。
このゲームは前述の通り、いくつか指定されたアイテムや景色を撮影すれば次のステージへと進める、というものです。
マップの中をうろうろ探し、それこそ小さいアイテムを探したり決められた景色を探していたとき(つまりは、自由な写真撮影だと思いつつも、先に進むために強制的に特定のオブジェクトを探さざるを得なかったとき)に感じたのは「果たしてこれは撮影という行為である必要があるのか?」ということでした。

撮影が必須のゲームは、広義での宝探しゲームだったと考えます。
それはつまるところ、撮影行為はあくまで演出で、ゲームの設定上写真を撮るという動作が求められているだけであり、必ずしもゲームのコアとしては「カメラを構えて写真を撮る」というプロセスを経る意味は無いのです。プレイヤーが宝を見つける、というアクションこそが重要で、そこの演出は、カメラで撮影でも、スケッチするでも、頭に記憶するでも、なんでもいいわけです。そういった「世界観上の設定」をつけてしまえばいいわけです。

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では、どうして写真撮影なのか。



シャッターを押す=ボタンを押す

写真を撮影するという「ひと手間」。
なぜそのような行為を、ゲームプレイの中に用いてきたのか。
宝探しゲームなら、わざわざ写真を撮る必要は無いのではないか。
その理由は、写真撮影という行為がゲームの操作と似通っている部分があり、なおかつそれが没入感に寄与しているからだと思います。

カメラを趣味にしている方はいらっしゃいますが、大抵の人はそこまでカメラに詳しくないのではないでしょうか。どのような機能があって、どのような操作を行うと撮影にどのような影響があるか。少なくとも私は全然詳しくありません。
私にあるのは、インスタントカメラ、デジタルカメラ、そしてスマートフォンによる撮影の経験です。そしてそれらには「何かしらを指で押すことで撮影が行われる」という共通点があります。
シャッターを押すのか、スマホの画面を押すのか、色々あると思いますが、指で何かを押して動作させるのは同じです。ここが、ゲームのコントローラーやマウスクリックと似ているのではないかと考えました。

ゲームの操作方法と現実の動作が似ているというのは、意外と無い物です。だからこそ、過去にはつりコンネジコンといった単一の動作に対応するもの、Joy-Conのように多数の動作をカバーするものが開発され、ゲームの操作を現実の動作に近づけてきたのだと思います。

なぜ、現実の動作に近づけるのか。
それこそ、ゲームにより深く集中する、自分が撮影しているという没入感を生み出すためであると推測します。そしてそれは、主人公...多くの場合「カメラマン」を、ロールプレイするという行動への一助となっているのです。

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「没入感」

没入という意味では、ゲームの中で撮影した写真を共有するという点でも少し興味深い点を見つけました。

現実で、スマートフォンで撮影した画像をSNSにアップロードする、というのは良くあることだと思います。そして、他者からの評価を受ける。それが、ある意味で承認欲求を満たすことに繋がります。これは本当にありふれています。

同じく、ゲームの画像をアップロードする、ということもまた、近年非常に一般的なこととなってきています。ゲームハードの機能として、アカウント連携されたSNSに、スクリーンショットを投稿することが出来るのです。もちろん、PCも同じで、スクリーンショット機能を用いれば簡単にSNS投稿が出来ます。それこそ、スマホのゲームも同じですね。

その、ゲームの画像をSNSにシェアするという行動についてです。
非常に細かく、感覚的に言えば、PCやゲームハードの機能でスクリーンショットを残すというのは、本当に些細な差ですが「ゲームに現実世界の機能が土足で入り込んでくる」、そんなイメージがあるのです。そのゲーム自体に存在しない機能が急に入ってくるので、一旦は意識をゲームそのものから離し、現実世界のTwitterやFacebookなどを意識する必要があるのです。

Newポケモンスナップでは、これらの機能が全てゲームの中のコミュニティで完結していました。ゲームの中で撮影された写真を、あくまでゲームの中のネットワーク、コミュニティへとアップロードする。そして、そこで評価をもらうことが出来る。一歩も、ゲームの外に出ていないのです。全てがゲームの中で完結しています。
「Umurangi Generation」もまた、ゲームの中から外にどんどんシェアしてくれ、というような導線が出来ています。ゲーム外からプレイヤーが能動的にシェアするのと、ゲーム内から誘導されるのでは、地味に印象が異なります。少なくとも、没入感は途切れません。

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ゲームプレイ自体が現実世界を模した写真撮影であり、かつそれを他者から評価されるという、これもまた同じく現実世界でもあり得る状況を、ゲームの中で構築した「Newポケモンスナップ」。ゲームからある意味メタな、現実のSNSへと導線を繋げた「Umurangi Generation」ゲームから離れないという没入感を強めていることは間違いありません。



まとめ+次回予告

写真撮影が必須のゲームのコアな部分は、あくまで宝探しゲームである。
そして、それだけであれば写真撮影という行為はわざわざいらないのではないか、と考えたのが最初でした。そして、では逆になぜそのようなひと手間をかけたのかを考えたところ、単純にカメラマンという存在のロールプレイだけでなく、現実のカメラとの操作方法の類似性・同一性、没入感の強化などがあるのではないかと考えました。

一方で、こういった写真撮影のゲームにつきものなのは「評価」です。
対象物を写真に捉えていればOKな場合もありますが、そうではなく、撮影した写真がスコア化されるものもあるでしょう。
果たして、その評価軸はなんなのかを少し掘り下げて、また別のnoteに書いてみたいと思います...が、これは時間がかかりそうなのでおいおい書こうと思います。もしかすると、創作を扱うゲーム全てに波及するかもしれません。でもやっぱり、「上手い撮影をしよう」とゲームに言われて、自分として気に入った写真が低評価だと、どうも腑に落ちないところはありますので、ここは突き詰めたいところです。

また、今回は写真撮影がゲーム進行に不可欠なゲームを紹介しましたが、次回はそうではない、いわゆる「フォトモード」が存在するゲームとその魅力について考えていきたいと思います。

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