見出し画像

「ソウルライク」が苦手でも、クリアまで夢中にさせられた「Death's Door」が本当に名作

ソウルライク、しんどいです。
そもそも、社会人になって限られた時間でゲームしているのに、なんで数十分の苦労が水の泡になる体験を、お金を払ってまで繰り返しているのか。
過去にプレイした「デモンズソウル」は、苦労して苦労して最初のボスを倒し、そこで全てやり切った気持ちになりやめてしまいました。
また、苦労が水の泡になる点で非常に嫌いだったのがモンスターハンターの「卵運びクエスト」。プレイしたことのある人はわかると思いますが、ただただ敵を避けて地味に歩くだけのクエスト、本当に苦手でした。

もしかしたら、物語性の強いアドベンチャーゲームが好きになったのも、そういった体験の結果かもしれません。

とはいえ、昨今いわゆる「フロムゲー」が人気なのも当然、情報として入ってきます。ダークソウル、Bloodborne、SEKIRO。きっとクリアしたときの快感は人を虜にするのであろうと思いつつ、まず自分がクリアできるのか、そしてあの不気味な世界観にストレスは感じないか…など、懸念点が多すぎて手を出すには至りませんでした。

興味はありつつも、3Dの死にゲーは出来る気がしない。しかし名作と呼ばれるものはやってみたい。
その折衷案として自分の中で生まれたのが、「2Dソウルライクならまだ出来るかもしれない」という結論でした。



「death's Door」と出会うまで

2021年末。アトロク出演を終えた頃。
年末に向けて多少ゲームをする時間があったものの、これ!というゲームが特に見当たらず、何かないかな…と探していたときのことでした。
さすがに、年を越す前に今年プレイできていない名作と呼ばれるゲームを遊んでおきたい。そんな気持ちから購入したのが「ENDER LILIES」でした。
高難易度2Dアクションソウルライクゲーム。先ほどの通り、3Dは無理でも、2Dならいけるのでは。それは、X軸Y軸のみであれば、Z軸がある3Dゲームより簡単なのではないか。そんな謎の推論が根拠となっていたのですが、そのときはそんな浅い根拠でENDER LILIESに手を出したのでした。

結論、名作と呼ばれるのも納得の面白さ。美麗なビジュアルや音楽に醸成された世界観のもと、スキルやアクションが増える面白さ、「ん?負けイベントかな?」と思えるくらい強いボスも、パターンを覚えて対処することで打開することが出来るデザイン。「ああ、もう絶対無理!」と思いゲームを終了しつつも、30分後にはまたゲームを起動しチャレンジしてしまう中毒性。夢中になり、約15時間かけてクリアしていました。

「やっぱり2Dアクションならいけるかも」そう思ったと同時に、あの「ボスの攻撃パターンを覚えてうまく回避し、僅かながら攻撃を与える」という行為を何度も繰り返して倒したときの気持ちよさ。過去に遊んでいたゲームの中では、サガフロンティア2のラスボス戦や、アバタールチューナーでの人修羅戦を思い出す気持ちよさでした。

そして年末。2Dアクションかつ、ソウルライク、そして高評価ゲーム。
それらの条件に合致し、年末年始の休みに備え仕事納めの日に購入したのが「Death's Door」でした。



ビジュアル・音楽・物語・ゲーム性、全てが雑さの無い「高品質」

その…ビジュアルの質感にまず驚きました。
どこかクレイアニメ的なキャラクターや建物、そして灰色の世界。赤い武器が目立つその見た目に、ただならぬこだわりを感じます。
もちろんそれだけではなく、風・陰影・煙・水滴など、細かなビジュアルが非常に丁寧でした。雑さを感じられない、レベルの高いビジュアルでした。

丁寧なチュートリアルを兼ねた最初のダンジョンでも同じく、どこか硬質というよりは粘土的なマップが広がります。

ゲームにおける基本操作は斬り・弓・回避。シンプルな操作は直感的で、すぐに覚えることが出来ます。
HPもゲージではなくライフの個数となっているので把握しやすく、単純に「何回敵の攻撃を受けたらゲームオーバーになるか」が分かりやすかったです。

HPがなくなるとチェックポイントからやり直し

そしてそのようなビジュアルと操作を盛り上げるのが音楽。
生死をテーマとしているゲームということもあり、美しさの中にもどこか不協和音というか、綺麗だけれども少し怖さが混じってくるような曲調が印象的でした。それが、建物や自然など様々なステージに合わせた曲調でありつつも荘厳さを失わない統一感がありました。

ゲームとしては、命、すなわち「ソウル」を刈り取る「リーパー」のカラスとなり、様々な敵の命を刈り取るのが目的。命を刈り取られた相手は死んでしまいますが、そこ、つまり倒した相手にもドラマを生んでいるストーリーは新鮮でした。戦った相手を弔うシーンがあり、そのシーンがあることで、ただ敵を倒すアクションというだけではなく、敵を倒すという行為そのものに「意味」が付与されたような感覚でした。

ボスを弔うシーンも

ゲームの翻訳を架け橋ゲームズが担っているのも物語に集中できるポイントのひとつでした。やはり海外のどれほど名作と言われるゲームでも、日本語訳がめちゃくちゃであればその物語を味わうことは出来ません。
直近ではInscryptionやLOOP HEROなどを翻訳した会社だったので、質は担保されているなと思い購入しましたし、実際にプレイしてみても理解に苦しむような翻訳は無かったと思います。(そもそも会話ではなくアクションがメインのゲームではありますが)

そしてビジュアルから入り、音楽で盛り上げ、アクションで楽しみ、死にまつわる物語を知り、最後に待っているのがこのゲームの難関ポイントであり最高に面白い場面である、「ボス戦」です。



ボス戦の面白さ - 純粋な「パターン攻略」

ゲーム自体はダンジョンを攻略し、奥にいるボスを倒すことでステージクリア。これを数ステージこなすことでゲームクリアとなります。やはり、ソウルライクのゲームのメインディッシュと言えるであろう、ボス戦が非常に面白く、気持ちのいいものでした。

他のソウルライクゲームと同じく、ボスには攻撃パターンがあります。
初見ではその攻撃パターンすべてに対応することは困難であり、何度かダメージを食らってしまいます。そもそも、敵の攻撃に耐えられる回数が「4回」であり、回復手段もボス戦中は無いため、初見での攻略は非常に難しいデザインとなっています。ボス戦を打開するためには、敵の攻撃パターンを覚え、隙を見つけ、頭で考えた攻撃シミュレーションを実行するプレイヤースキルが求められることとなります。

ここが本当に面白いんです。ゾンビや悪魔がボスでない分、どこか可愛さやマスコット的な印象もあるボス。そのボスが、クレイアニメのような質感で攻撃をしてくる。そして、それを避けて接近し、攻撃する。
どこか可愛げのある全体的なビジュアルには恐怖感は無く、純粋にテクニックにゲームの全てを注力しているような印象でした。

「ここで〇回攻撃してくる」「この位置に移動したら遠距離攻撃をされる」など、段々頭で理解し、次にどのタイミングで攻撃すればいいかの知識を蓄積することでボスを倒す。この積み重ねはソウルライクなゲームに共通する部分だと思いますが、本当にその面白さを楽しめました。
そして、楽しめた理由のひとつに「このゲームの視点が一人称視点や三人称視点ではなく、見下ろし型である」というところがあります。



見下ろし型の視点とシンプルな操作が「心理的な快適さ」を生む

3Dアクションゲームをしていて、「なんだかよくわからないけど死んだ」という経験はないでしょうか。無双系でも、ソウルライクでも、アクションRPGでも。

「なんだかよくわからないけど死んだ」原因には2種類あり、ひとつは「敵の特殊な攻撃を初めて食らい、それが想定外の物であった」、そしてもう1つが「どこから攻撃されたかわからなかった」です。

1つ目の「敵からの想定外の攻撃」、これはよくあります。いわゆる、死に覚えゲーにありがちで、防御や回避を行わなければいけないものの、初見ではまず反応できない、というような攻撃です。これは、まさに「よくわからないうちに死亡する」という典型的なパターンではないでしょうか。打開するのは、ただただ死を繰り返しながら覚えていく。そして、対応できる技量をプレイヤー自身が身に着けていく。それしかありません。
一方で、意外と体験するのが2つ目の「どこから攻撃されたかわからなかった」です。

慌てて移動や回避をしているからこそ、つい敵を見失ったり。カメラの操作が追いつかなかったり。または、複数の敵に対して全く見えない方向から攻撃されたり。
1対1で敵にロックオン(常にカメラが敵を向く)といったシステムが利用できればまだいいものの、それでもカバーしきれない攻撃や複数の敵からの同時攻撃はどうしようもありません。こうなると、テクニックは関係なくただ理不尽さを感じてしまいます。「敵の攻撃パターンを覚える」という作業を行っても、見えなければ意味がありません。

このゲームの良さは斜めの見下ろし型の視点であるということ。敵の大きさも画面内に収まり、つまるところは「見えない攻撃」が無いのです。純粋に、敵の攻撃パターンを学習し対策を立て、指先に覚え込ませる。
雑魚敵であればどのような配置かを見下ろし型だからこそ先に把握することが出来、またボス戦では敵の攻撃をしっかりと見ることが出来ます。
その結果、「こういう攻撃が来るときはこういう予兆があり、こうやって回避する」といった、ゲーム攻略に関するプレイヤーの学習を阻害しないのです。

この視点がかなりストレスを軽減してくれました。
確か他のゲームのように攻撃を弾く「パリィ」要素は無かったと思うので、敵の攻撃を避けるには純粋な回避行動(ローリング)を用いることになります。攻撃方法は端的に言えば近接攻撃と遠距離攻撃しかないので、操作は極めてシンプル。考える要素、行動する要素が少ないので、敵の攻撃に対する、「答え」にたどり着きやすいのです。

あーでもないこーでもないと悩む時間が少ない分、重点を置かれるのはその「答え」を実行する自分のプレイヤースキル。
つまりこのゲームは、視点からも操作のシンプルさからも、「理不尽さ」「わからん殺し」で詰まる要素を徹底的に排除した、面白さは残しつつも不満点を削除するデザインを追求している、と感じました。
これが、「心理的な快適さ」を醸成し、ソウルライクの辛さを軽減していたのです。
そしてそれは、ボス戦に至るまでのダンジョンでも実現されていました。



雑魚敵に時間を食わない「おいしいとこどり」のゲームデザイン

少なくともこのゲームで一番カタルシスを感じるところは間違いなく、ボス戦です。
例えば「ENDER LILIES」では、その道中の敵もなかなか強く、ボスまで辿り着くのも一苦労でした。
もちろんそれはそれで面白さではあるのですが、Death's Doorではその部分の簡略化というか、雑魚敵の部分を繰り返さないような仕組みが非常によく考えられていました。

ひとつ感銘を受けたのが、ショートカットのマメさです。
ソウルライクのゲームでも、あるレバーを操作すると通れなかった道が通れるようになり、ダンジョン攻略、ボス戦への道が短縮化されることがあると思います。
Death's Doorで感じたのは、そのショートカットがかなり短いスパンで解放されるな、というところです。
少し進んだらショートカット、ここまで来たらスタート地点と道が繋がる、そんなユーザーに優しいショートカットがふんだんに用意されていました。

こういったショートカットは、雑魚敵との戦いをカットしてくれます。
つまりはその分ゲームとしての難易度は下がる(雑魚敵でHPを削られることは無くなる)ので、好みは人それぞれになるかと思いますが、私個人としてはダンジョン攻略がサクサク進むのは大歓迎、ゲームの中で一番美味しいところである「ボス戦」へ進むための時間が短縮されるのは嬉しいデザインでした。

また、一方で一部のダンジョンではほぼ敵が出てこず、ギミック解除がメインとなるデザインでもありました。
なかなか歯ごたえのあるギミックでもあり、面白さを感じたものの、ほぼ雑魚敵がいないのは意外でした。その分、HPの減少に気を使うことなくギミックの解除に集中でき、ゲームオーバーせずボス戦へとたどり着いたことは、「雑魚敵戦という作業をなくしボス戦へとスムーズに進める」、まさに「おいしいとこどり」のデザインでした。



夢中になり、4日間でクリア - 自己責任という名の麻薬

シンプルな操作と物語、ダンジョン攻略における親切なデザイン、プレイヤースキルの上達に重点を置いたボス戦…。
年末の4日間でクリアしていたので、間違いなく夢中になっていました。

これはまたそのうち別の記事で書こうと思っているのですが、とにかくそのゲームの挫折に対して「自己責任」という印象が強いほど、ゲームにのめりこむような気がします。
先ほども書いた通り、このゲームには理不尽さを感じませんでした。
敵の攻撃を食らってもゲームオーバーになってもそれは自分の責任。
つまりは、失敗する材料が全て把握できるんですよね。
失敗した材料があるからこそ、次はこうすればいい、ここで攻める/引くをすべき、などの対策を考えられると同時に、「ゲームのせいに出来ない」という気持ちが生まれます。
この「自己責任度合い」がしっかりしたゲームほど、難易度が高かろうが、離脱率が下がる気がします。

「こうすればいいのはわかっているんだけど、どうしても『自分の技術不足で』出来ない」という状況、解決方法が分かっている状況、つまりはゴールが見えている状況だからこそ、途中で投げ出すことなく、しかも夢中になって遊べたのかな…。そう思ったゲームでした。そしてそれは、ただの継続というわけではなく、無意識に「中毒」になってしまっているのではないかと思えるほど、時間を忘れて作業している、幸せな時間でした。



終わりに - ソウルライクへの興味

最初に書いた通り、どうしても時間が無駄になってしまうことを恐れてしまう自分がいます。
ソウルライクまたはそれこそダークソウルをプレイして、「時間を費やしたけど結局攻略できず無駄になった」という結果になってしまった場合を考えると、それよりは決まってクリアできるアドベンチャーや高難易度ではないRPGを好んでしまうところがあります。

そんな中プレイしたこのゲームですが、なんというか、極めて新ジャンルをプレイしたような感覚でした。初めての角度からのゲームの面白さを知ったというか。
いや、もちろんアクションRPGでこういうアクションだったり敵の攻撃のパターンを学習する体験はしてきたはずなのですが、ここまで難易度が高い、回復の出来ないボス戦は初めてでした。
そういった意味では、2Dソウルライクの入門にいいゲームかもしれません。

Ender liliesとこのゲームをクリアしたことで、2Dソウルライクへの興味が非常に高まっています。そしてゆくゆくは、3Dのソウルライク、フロムゲーにもチャレンジしたいと思います。

全てが高品質にまとまった、2Dソウルライク。ゾンビなども出ないので、そのあたりのビジュアルが苦手な人でも大丈夫。
「難しいゲームは苦手…」という人にも、ソウルライク入門としてお勧めしたいゲーム。
Death’s Door、本当に傑作インディーでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?