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『Little Kitty, Big City』感想:とうとうネコになることができた。これは疲れた社会人に最も必要なゲーム

ネコになりたい。出来れば金持ちの家のネコになって何不自由なく暮らしたい。そう思ったことはありませんか。ありますよね。

犬に対して、自由気ままの象徴とされがちなネコ。
出社も、ノルマも、煩わしい人間関係も、売り上げも、給料も、年金も、結婚も、何一つ気にしなくていいネコ。

とうとうそんなネコになることが出来るゲームが生まれました。
このゲームをプレイしているときくらい、現実を忘れましょう。

『Little Kitty, Big City』、これは最初から最後まで、ネコを操作するゲームです。
操作する舞台は箱庭的なフィールド。住宅街とも言えますし、小さな商店街と言えるかもしれません。
全体的に建物の作りは日本的。というかおそらくモデルは日本の街。それも渋谷や新宿といった派手な場所ではなく、もっと地味な街です。

主人公のネコは、ある日自分の住んでいる(飼われている)家の窓から落ちてしまいます。家に戻ろうにも、戻る手段が見つからない。
街をふらふらして、他の動物たちとコミュニケーションを取りながら、また家に戻る方法を探します。

基本的にゲームは3Dの空間を移動するのみ。
途中、様々なクエストがあり、それに応えることで報酬をゲットすることが出来ます。
ネコに被せる帽子? 被り物? がよく手に入るのですが、これがまた……可愛い。
そう、このゲームは謎解きやアクションがメインではなく、「可愛さ」がメインのゲームなんです。

全体的なビジュアルがローポリ気味、アニメ的なこともあり、ネコの可愛さが抜群に表現されています。もう、スクショを撮るだけでも可愛い。
「うちの子が一番可愛い」と思わず唸ってしまうような、顔が緩んでしまうゲームでした。

これは「Stray」のときもそうでしたが、ネコゲーで魅力的なのが「人間では進めない・入れない場所に行くことが出来る」ということです。
ブロック塀をくぐったり、車の上に飛び乗って移動したり。

また、不思議とネコになると、人間の場合死ぬほど怒られそうなこともなんとなく許されてしまうのが良いですね。
固まっていないコンクリートを歩いたり、植木鉢を壊しまくったりしても、人間に捕まえられて追い出されるくらいで済んでしまうのは、平和で良いなと思いました。
こういう優しい世界はゲームの中にしかないかもしれませんが、それがまたいいんですよね。

つまみだされることも

オープンワールドではありますが、規模的に箱庭というほうがしっくりくるくらいのフィールド。
とは言え、水たまりは通れなかったり、犬がいると通れなかったりと色々通行できないところがあるので、ファストトラベルがあるのも嬉しいところ。

最終目的である自宅へ帰るためには、壁を登るためのスタミナが必要で、そのスタミナを上げるためには魚が必要で、魚を得るためには簡単なアクション(パズル)が必要で……と、やや段取りを踏む必要があるものの、難易度は極めて低いためあまりストレスにはならなかったです。

あわよくば、特にネコでしか行けないルートについてはナビがあると親切かとも思ったものの(結局次に進む道を見つけない限り先に進めないので)、それもまあ、ネコで街をぶらぶらするだけで癒されたので、さほど問題はなかったです。

私はクリアまでに3時間弱。クエストはやったりやらなかったりなので、極めようとしたら5-6時間は遊べるんじゃないでしょうか。
まあ、ボリュームに対して値段はちょっと高めかなと思いますが、昨今の為替事情だとしょうがないんですかね。

思ったのは、おそらくここ数年で最大の話題作であったネコゲー『Stray』との違い。
ネコになって、3Dの美麗なサイバーパンク空間を彷徨えるStrayは、大きな話題になりました。発売後の評判も非常に良く、Steamでは圧倒的に好評ですね。
ただ、私もStrayをプレイして思ったことがあり。
サイバーパンクの世界を、ネコとなって彷徨える体験は素晴らしいものでした。
ただ一方で、あのゲームはネコが悲惨な目に遭ってしまうんですよね。
それこそ、敵にのロボットに追いかけられ、捕まったらゲームオーバー。
過激な表現はされていませんが、おそらく殺されてしまうんじゃないかと。
そもそも、ネコにとても愛着があるわけではないのですが、それでもやはり動物がひどい目に遭うのは見ていて辛いもの。
そして何より、そんな状況にならないよう必死にプレイすること、それ自体が緊張感を生むものだったんです。

それはゲームにとっての魅力の一つでもありますが、しかし心のどこかではネコとしてまったり冒険するのを望んでいたところもあり、面白くもドストライクではなく、ホームランというよりツーベースヒットのような、惜しい感覚が個人的に残っていました。

だからこそ、この『Little Kitty, Big City』はまさに私の理想のゲーム。
「ネコが可愛そうな目に遭わない」ということ自体が、緊張感を無くし、まさに安心できる癒しのゲームとして確立されていたのです。
逆に言えば、ハラハラドキドキする緊張感を求めると、肩透かしを食らい退屈なゲームに思えてしまうかもしれません。
そのあたりの、趣味嗜好とのマッチング具合は大事だと思います。少なくとも、私はとても好きなゲームでした。

何より、この疲れる社会において一種の清涼剤、ストレス解消としての「純粋に可愛い」ネコ。自由気ままに動き、ときにはいたずらをし、ただ街を走り続ける。
とにかく気持ちよく、現実を忘れられる1作なのではないでしょうか。
発売2日で10万本を売り上げたというのも、世界中からのネコ需要および癒し需要を感じます。

街を彷徨うもよし、クエストをこなすもよし、なんならただスクショを撮るだけでも良し。

ネコゲーとして一つの完成形、「Little Kitty, Big City」。
日々この世知辛い世の中と戦っているあなたにこそ、おすすめです。


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