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ゲーム「HAVEN」感想:イチャイチャした二人への愛着の魅力と、シンプルが故の物足りなさの天秤

概要

カップルで旅をするという斬新な設定は、ボリュームの少ないゲームでも十分なキャラクターへの愛着を生んだ一方で、戦闘や移動の物足りなさは否めない。しかしシンプルかつコンパクトにまとまり、丁寧なユーザビリティは完成度が高く魅力的。


物語

故郷にあったすべてを捨て去り、小さな宇宙船「ネスト」で辿りついた未知の惑星。ケイとユウの2人しかいない惑星で、愛に包まれた穏やかな時間を過ごしていた。
しかし、突然の地震が住み処でもあるネストを破壊してしまう。
どうにかネストの修理をするために惑星を探索することになった2人は、想像もしていなかった光景を目にすることになる…。
ときには、凶暴化した生物と戦うこともあるような生活の中で、ケイとユウの力を合わせながら、次の日を生き延びるために謎多き土地を探索していこう。

Steamの「HAVEN」ストアページより)

要は、カップルが逃避行の旅をしていたものの、乗ってきた宇宙船が壊れてしまったので修理する素材を探す、という物語です。




ゲームの流れ

基本的に、「宇宙船の中で過ごす」と、「屋外に出て修理品を探す」という2つがメインとなります。

宇宙船の中で過ごす
調理、食事、睡眠、会話などが可能です。そして、ほぼほぼどの活動にもケイとユウのいちゃつき会話が付属してきます。キスしたり性の話をしたりと、国産RPGではあまり触れないハードルを越えてきてるので、前情報無しに体験するとびっくりするかもです。
調理は素材を消費して食事を作って、その場で食べるか保存しておくかを選びます。食事は経験値アップの効果。

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睡眠は体力回復。

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他、回復アイテムの生成などが出来るようになります。探索の準備ですね。





屋外に出て修理品を探す

このゲームの大半はこれに費やします。
フィールドは広いオープンワールドというわけではなく、いくつかのマップを移動して探索していくこととなります。

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錆や果物が収集できますが、それ以外のものはほぼありません。アイテムの種類としては少なく、シンプルなわかりやすさが追求されています。

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戦闘
戦闘はシンボルエンカウント。敵から向かってくることはあまりないので、そこまで戦闘回数は多くありません。
戦闘自体はコマンドを選ぶスタイル。ターン制ではなくリアルタイムに、ケイとユウそれぞれの行動を決定します。二人同時に攻撃したり、少しずらして攻撃するなど、敵の種類に応じで戦略性が生まれます。

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宇宙船を修理するアイテムを見つけたら少しずつ宇宙船を修理。これは回収すると同時に自動で行われるので、ストーリー進行イベントです。

これを繰り返し、宇宙船を元通りにすることが目的となっています。

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良いところ

カップルという設定
ここがこのゲーム最大の特徴で最大の魅力です。既にゲームスタート時からカップルの二人が主人公のため、RPGでよくある、「出会いから仲良くなるまで」という過程が無いんですよね。
幼馴染とも違う関係は、二人の絆が強いことをすぐに把握できるため、短いインディーゲームであってもその関係性の深みが増したと思いました。

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このゲームは攻撃力や防御力が変動するゲームでは無いため、戦闘も戦略性が重視されています。一人がガードし、一人が攻撃するとか、二人でタイミングを合わせないといけない敵がいたりすることで、「二人が分担/協力して戦っている感」が強く、システムとキャラクター性が融合してカップル感を増していたのはうまい作りだなと思いました。

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また、至る所、それこそカットシーンだけでなく探索中にも二人の会話が交わされるのですが、かなり潤沢な種類のセリフが用意されています。「同じセリフばかりを繰り返す」というゲームあるあるが他のゲームに比べて少なく、人間らしさを感じるとともに、キャラクターへの愛着が沸きました。もちろん大半が、相手に対する愛の言葉、だったりします。

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シンプルでとっつきやすいゲームシステム
RPGにある、ステータスや装備など細かな設定が削ぎ落され、シンプルな作りとなっているため、覚えなければいけないことが少ないです。

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スピード感あふれる移動方法も含め、直感的にプレイできるのは強みになっていると感じました。設定やシステムを作りこんだRPGによくある、長いチュートリアルなども無く、この部分はこだわりなのであろうと思います。


ハイクオリティなBGM

サウンドトラックの評価は個人的には非常に高いです。シンプルで荘厳でありつつも、乗れる美しさというか。アンビエントなテクノのような雰囲気もありつつ、冒険する勇気、凛とした気持ちを表すようなダイナミックな盛り上がりも兼ね備えています。これが探索をの気分を盛り上げているのは間違いなく、ゲームを通しての「未知の星での冒険」の雰囲気づくりの大きな土台になっていたと感じました。

また、上記の動画はゲーム内の1曲のPV動画となります。このような動画が制作されることは稀だと思いますし、デベロッパーが音楽および世界観に対して力を入れていることを強く認識できる内容となっています。


サウンドトラックは、各種サブスクやYoutubeで配信中です。



惜しいところ

戦闘の必要性+HP回復
多くのRPGと同じように、戦闘を行うことで経験値を得ることが出来ます。
しかしこのゲーム、経験値がもらえることはそれほど重要ではないんですよね。
もちろん要所要所でボス的な敵はいるんですが、それも戦略が重要で、特に経験値をためてレベルを上げることはそこまで重要ではない気がします。
もちろんレベルを上げることで、最大HPが上がったりするので有利になることに変わりはないのですが、戦闘以外での方法、つまり食事で経験値を得られるので、あえて戦闘に固執する必要がありません

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さらには、戦闘で失ったHPの回復が決して簡単ではないので、どうしても戦闘でHPが減るを避ける→戦闘を避けたいという心理が働いてしまいます。具体的には、アイテムを使用することでHP回復が出来るのですが、ゲームが進むまでアイテムを使えるのは特定のポイントのみとなっています。3~4マップに1か所、キャンプ地があり、そこでの回復アイテム使用が可能です。いつでもどこでも回復可能なわけではなく、また回復アイテムの準備も素材集めから行う必要があるので、潤沢に準備することは出来ません。体感ですが、1度の戦闘をスムーズに行っても、最大HPの3分の1はダメージを食らう印象です。そして回復手段も限られている。ゲームが進めば回復手段も少し増えますが、極力、敵とは戦いたくありませんでした。

後半には敵からのエンカウントを防ぐ方法が可能になるので、ますます戦闘の必要性がなくなっていった印象です。JRPGのコマンド的な戦闘に寄せず、アクションRPGでも良かったんじゃないかな? とは思いました。


移動の単調性
移動は基本的に反重力ブーツで浮き、地面を滑るように動きます。徒歩よりも早く、何倍も爽快感があるものの、景色がさほど変わり映えしないため後半はやや飽きが来ました。
マップに点在する「錆」は、その場を通り収集することでアイテム生成の素材になるので、移動の目的となったり、1マップの錆を全て回収することでファストトラベルが可能になったりするのでそれは確かに移動のモチベーションになるのですが、しかしただマップを通過するだけとなると面白みが薄れていきました。

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また、この反重力ブーツはエネルギーを補給しないとエネルギー切れを起こしてしまいます。エネルギー切れは、錆の回収が出来なかったり使えるアクションスキルが使えなくなったりと不都合が発生します。マップ内の特定のスレッド(青い光)に沿って移動することで、補給されるという仕組みです。

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この画面右側に移っている青い光を通ることでエネルギーが回復


このスレッドはある意味通路の役割も果たしており、「特定のスレッド(青い光)に沿わないと移動できないマップ」が存在します。いわゆる道路代わりになっているようなものです。
そのため、マップ移動は自由に動き回れるというよりは、決まったルート、決まったスレッドから外れないよう慎重に移動しないといけない場面もありました。浮遊感のある自由な移動のはずが、その部分は制限され、特定のルートを移動させられているというストレスが少なからずありました。

もしこれが、例えば湖や森林、都市などのマップに分かれていたとなればもう少し興味が沸いたかな、と思っています。もちろん、このゲームはシンプルさを重要にしているところがあるので、あえてのシンプルな景色という作りなのだろうと思いますし、ゲーム全体のグルーヴとしてそれは成功していると思います。ただ、単調さが拭えなかったという印象はどうしても持ってしまいました。

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まとめ

フランスのデベロッパー、The Game Bakersによる今作。
斬新なカップルという設定、そこから生まれる思わずプレイヤーが置いてけぼりになりそうなくらいの、ときに生々しすぎる猥談と感じられるくらいの甘い関係およびセリフは、キャラクター同士の信頼関係の強さを感じるには最適でした。
しかも数時間でクリアできるインディーゲームであればなおさらで、短いゲームながらもキャラクターへの深い愛着が沸きました。この二人の関係性は、例えば探索中にそっと手をつなぎ始めたり抱擁し始めるなど、細部にも渡っています。この丁寧な作りは開発側の強いコンセプト、こだわりを感じ驚きました。

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マップでただ動かないだけで抱き合い始める二人


一方で、前述の通り戦闘や移動の単調さが後半になるほど顕著になり、どこか「ゲーム全体としてこのくらいの短さ(ボリューム)でよかったかも」と思うようにもなりました。また、世界設定の話 - 逃避行している二人を捕まえようとする人々のディストピア的な話もあるのですが、そこも強い求心力があるかというとそこまでではなかったので、ゲームを続ける動機という部分ではなかなか弱かったかなと思います。

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ただ、操作性やユーザビリティについては非常に良く出来ており、なるべくゲームの本筋と関係ないところでのネガティブな評価を無くそうとしているのはとても感じました。

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「シンプルでコンパクトにまとまったいいゲーム」であることは間違いないのですが、「シンプルさゆえに圧倒的に惹きつける魅力が少ない」というのが、端的な感想です。
もちろんシンプルだからこそ、珍しい「カップルでの逃避行」という設定がここで目立ち生きてくるのですが、もう1歩2歩くらい、物語なりアクションなりでガツっと夢中になる要素が欲しかったかなというところです。

まあ、それも、おそらくはこのカップルに対する魅力を強く感じていたからかもしれません。魅力的だからこそ、もっと色々な景色や場面でどんな反応をし、どんな協力をして対応し、絆を深めていくのか。
この二人が好きだからこその不満点かもしれません。



「カップルの逃避行」かつ、非常に甘いセリフや行動で満ちているゲームでした。やや物足りなさを感じる部分はあれど、戦闘など一般的なRPGにある要素を二人の関係とリンクさせた作りは、非常に新鮮で見事でした。
また、BGMも含め、この二人の世界およびゲーム全体の世界観、コンセプトは極めてしっかりと統一されているのも完成度が高くとても好みだと感じました。

がっつりRPG!と期待すると肩透かしとなってしまうと思いますが、インディーかつこの尖った設定に興味を惹かれた方は遊んでみても損はしないと思います。ハマる人にはがっつりハマるタイプのゲームだと思いますし、なんなら続編が出てもおかしくないゲームだと思いますので、気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。

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