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『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018』を観た(2018/8/1)

日本の地域型芸術祭の先駆け的存在であり、とどのつまりの語源という説もある新潟の越後妻有を舞台とした『大地の芸術祭』は、2000年から始まり3年に一度開催されている。近年海外からも注目されており、 恐らく、今や新潟で有名なものと言ったら『米』『フジロック』に次いで『大地の芸術祭』が来るのではなかろうか。

私は同地域で今年の3月に開催された『大地の芸術祭の里 越後妻有2018 冬 SNOWART』で芸術祭の魅力にどっぷり浸かってしまったので、メインである夏にも来てしまった。

丸1日のオフィシャルバスツアーや、駅から午前午後で出発する半日コースの周遊バスの好きなコースを選択するという手もあったけれど、バスもそれなりにお金がかかるし時間の融通が利く点から私は自家用車で大地の芸術祭を巡った。
とはいえ、日帰り旅で広大な里山に分布するアート作品全て鑑賞するのはどう足掻いても無理なので、事前に観たいものを絞りに絞って計画を立てた。本当は3日間位かけて温泉も巡りつつ全ての作品を鑑賞したかったさ…。

そして実際観る事のできた作品はこちら

【中里エリア】
N079ぺリスコープ
N080ライトケーブ

この作品のある清津峡渓谷トンネルは入るとひんやり。そしてライトケーブは最深部にあるので歩いて20分近くかかったけれど、合間合間にある見晴らしスポットの景観も素晴らしいし、壁や地面に動物のマークがあったり全く落ち着けないトイレもあり謎の民族音楽もあり道中も楽しい。

N012中里かかしの庭


【松之山エリア】
Y052最後の教室

冷房が無く蒸し暑いけれど、真っ暗な空間、学校の中心部からは心臓音、幕で覆われる教室、学校という胎内で閉校した時の生徒との記憶と共に眠り続けている様だった。


Y101影の劇場
最後の教室と同じ廃校内の最上階にあるのだけれど、こちらは魑魅魍魎が住み着いている感じで面白かった。


Y035エリクシール/不老不死の薬

不老不死の薬とあるからもっと禍々しいものと思いきや漢方の類い。果実酒を漬け込むのが好きなので見ていて面白かった。こういう瓶に漬け込まれたものを見て可愛いと思ってしまうの、私だけだろうか。


Y072家の記憶

前々から気になっていた塩田千春さんの作品。正確な日数を忘れてしまったけれど、製作期間がこの規模の物なのに想像以上に短い日数でびっくりした記憶がある。


Y106ブラックシンボル

急な坂道に突如現れる。遠くから観たらまた違った印象だったのかな。


Y013夢の家

ここは宿泊できる作品で、宿泊者は部屋の色と同じ用意された寝巻きで寝てそこで見た夢の内容を夢の本に書き記すというルールがあり、本を読んでみると狙ったようなカッコつけた文章の人もいれば完結に書く人、全く夢を見られなかったなりに捻り出した言葉を書いている人といて、他人の直筆夢日記を読むというのは中々背徳感もあったけれど興味深かった。知らない誰かに読み継がれ記憶に生き続ける誰かの夢。


Y027名前蔵
Y045ラトビアから遠い日本へ
Y109Lost Winter

【松代エリア】
D330ドクターズハウス
D347アート・フラグメント・コレクション
D322影向の家
影向は神が宿るという意味があるらしい。恐らく2年ぐらい前に同じ作品を足立区の空き家で観たけれど、説明の有る無しでは全く見え方が変わるね。時が止まった感覚にさせるのはやっぱり凄い。


D266ブランコの家

ここに住んでいた姉妹の記憶。ブランコで遊んでいた記憶の宿る家。

D325桐山の家/BankART妻有2018

横浜の大学生が迎えてくれた。麦茶ありがとうございました。


D209静寂あるいは喧騒の中で

家の外からもドンドン叩くような音が聞こえるのだけれど入ると更に凄い騒音で、惑星を精製しているような雰囲気だった。

D349昼の光ににじむ灯
夜に観なければならなかった作品…

D132マウンテン

このエリアは虫がとにかくでかいし多いしまとわりつく。


【十日町エリア】
T384喫茶TURN
T385 10th DAY MARKET
T320Winter Circlet

T317チョマノモリ

ここは冬に来た時は雪に埋もれていて少しだけ絵が見えていて何なんだろうと思っていたけれど、こんな大規模な地上絵だったとは…


T025~T029,T221~T230,T233,T280,281,T233,T280,T281,T305 越後妻有里山現代美術館[キナーレ]内常設展示
冬に来た時はちょうどT230のLOST # 6という作品がメンテナンス中で観る事が出来なかったのだけれど、暗い部屋の中でライトの点いたミニカー? が立体模型の中を走っていて、走っている所から見える風景がそのまま壁に影で映し出されていて面白かった。ずっと観てしまう。


T353~T380 2018年の<方丈記私記>建築家とアーティストによる四畳半の宇宙

方丈=四畳半 のスペースで創られたカフェ、バーやサウナ、寛ぎスペース等がキナーレ中庭に多数散りばめられていて、ゆくゆくはこの方丈を十日町市街地のあらゆる場所にはめ込んで行けば街の活性化にも繋がるのでは? という提案。
四畳半という狭いけれど何にでもすぐ手が届く空間。とても落ち着くよね。あの箱が街にひょこひょこと設置されていたら、無意識に吸い込まれて行ってしまいそう。

T352Palimpsest

当初予定していた箇所を時間の都合削ってしまったけれど、案外予定していなかった箇所が道中や観る場所のすぐ隣にあったので観る事にしてみたりと、結構沢山作品を観る事が出来たし棚田も美しかった。でも後々考えるとやっぱり他の作品ももっと観たかったとも思えてくる…。
山中にある雪対策のトンネルのようなものも幻想的に見えてしまう芸術祭マジック。雪深い時期に訪れた場所に夏に再び訪れるって、色々発見もあるし感慨深いものがあるという事を知った。

開催初週の平日だったお陰か、最初に訪れた清津峡渓谷トンネルに向かう道で道路工事による渋滞があった以外は、特に目立った混雑は無かった。芸術祭公式で発信している情報を見ていると土日が常に混雑しているようで、本当にこのタイミングで訪れて良かったなあと思う。

夕暮れ時に車内できのこ帝国のアルバム『愛のゆくえ』とくるりの『くるりとチオビタ』を流していたけれど、暮れなずむ里山の風景になかなか合っていた。


空き家や廃校を付喪神的に見立てた作品、過去の記憶を現在に留める為の作品、これからの在り方を提案する作品、時代考証の元この土地はこう見えたと表現する作品とあり、世界中の人達へ里山の魅力を発信する為の芸術祭は、大地への問い掛けの様でもあり、山間部かつ豪雪険しい越後妻有を開拓をしていた時代に人が生きる為に自然と戦った様に、新しい時代を切り拓き生き残る為に人と自然が共闘している様でもあった。

また3年後に訪ねるよ越後妻有。どうか在り続けてほしい。

開催地:越後妻有地域(十日町市、津南町)
期間:2018年7月29日~9月17日
作品鑑賞パスポート:3,500円

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