『瀬戸内国際芸術祭2019 ふれあう春』を観た(2019/5/24~5/25)
今年は四国八十八ヶ所よりもこちらを巡る人の方が多いのではなかろうか。
今年は3年に一度開催される瀬戸内国際芸術祭、4度目の年。
瀬戸内海の島々を舞台にテーマは『海の復権』、地球上のすべての地域の『希望の海』になることを目標に掲げている。
私が瀬戸内国際芸術祭を巡るのは今年が初めて。
公式の見解では、作品を楽しむのに大きい島は丸一日、小さい島は半日みた方が良いとしていて、公式ガイドブックの表紙にも『アートのある島々を、ゆっくりめぐろう』なんて書かれているけれど、私に許された日程は一泊二日。なのに巡るは沙弥島・小豆島・豊島・直島の4ヶ所。これでも厳選に厳選を重ねた結果。犬島・女木島・男木島にも行きたかった。そんな気持ちをぐいと押し込めながら、島を巡った。
今回観ることのできた作品まとめ。↓
◎一日目
【沙弥島~沙弥島海水浴場・万葉会館~】
sm03 そらあみ<島巡り>
観る角度によって印象が変わる。そらあみの近くにある海の落とし物にやたら目がいってしまった。
sm09 12島と港の物語 回遊式アニメーション
ハンドルを回して動くパラパラ漫画。それぞれの島の特色を現していて可愛かった。
sm08 大岩島2
私が観た中ではこの作品が一番好きだったかも。
鳴き龍のように、手を叩けばやたらと音が反響する空間。(そこは多分作品の本質ではないけれど)
古い絵巻の中に入っている様な感覚が面白かった。
【沙弥島~旧沙弥小・中学校~】
sm07 ピボット
話をかけても全く噛み合わない会話が育まれる。「芸術とは、ちょっと恥ずかしい事です。」という言葉が印象的だった。
sm04 フードクラブ
もしも入国制度が変わらず沢山のイラン人が日本に定着していたらこんな料理が出来ていたのでは? という発想でイランと日本の食文化が融合したレシピを配付していた。学校の調理室+理科実験室の様な場所。テレビ画面に映る、真っ暗で障子のある部屋で踊る人が不気味で高揚感を煽った。
sm05 一雫の海
静かな空間。ずっとずっと見届けていたい場所。
sm06 月と塩をめぐる3つの作品
sm02 ヨタの漂う鬼の家
船は建設中だった。しかし地球上で暮らすとは、を考え直すきっかけを与える場所だった。
【沙弥島~瀬戸大橋記念公園~】
sm01 階層・地層・層
sm10 八人九脚
【高松港】
tk01 Liminal Air -core-
高松港のシンボル的作品。
【小豆島~土庄港~】
sd01 太陽の贈り物
土庄港のシンボル的作品。葉の一枚一枚に色々な人の願いが抜かれている。
sd02 アートノショーターミナル
こちらは残念ながらメンテナンス中で全貌は判らず。
【小豆島~馬木・醤の郷~】
sd26 Umaki camp
sd25 オリーブのリーゼント
口には果物が載せられていた。マスコットキャラ的存在だと思う。
sd24 おおきな曲面のある小屋
sd23 鐘舎 Bell Shelter
鐘を叩くと波紋が動く。凛とした空間。
sd27 ジョルジュ・ギャラリー
上手く写真を撮れなかったけれど、場所によってきっちり形がハマる瞬間があるんですよね。
【小豆島~迷路のまち~】
sd22 つぎつぎきんつぎ
割れた陶器の強度を更に上げる且つおめでたいものとされている金つぎを何故割れていない陶器で…? と思っていたけれど、島の人々が使わなくなった陶器を、作品として甦らせたって事なんですね。
迷路のまちエリアは妖怪美術館もあり路地裏の雰囲気もとても良いので、妖怪好きな人には鳥取県の境港と同等ぐらいに是非行って欲しい場所。
◎二日目
土庄港から豊島へ。二日とも快晴という幸運。
【豊島~唐櫃岡~】
te10 島キッチン
ここには猫トラップがある。
te12 ささやきの森
風鈴の短冊には書いた人の大切な人の名前。
人知れず山奥の森の中、風が吹けば優しい音色で光と陰がくるくると舞う。どんなときでも頭の片隅で大切な人の幸せを願うって、こういう感じだよなあ。きっと。
te08 空の粒子/唐櫃
te09 あなたの最初の色(私の頭の中の解ー私の胃の中の溶液)
te11 ストーム・ハウス
民家内で嵐が来て去るまでが再現される。撮影禁止の場所だったけれど、部屋にバケツが置かれていてそこに雨漏りでぽたぽた雨水が滴り落ちてきたり、電気もチカチカしたり、五感で感じ取って欲しい作品。怖いのにワクワクしてしまう感覚はとても好きだ。
【豊島~唐櫃浜~】
te14 勝者はいないーマルチ・バスケットボール
te15 心臓音のアーカイブ
世界中の人々の心臓音を恒久的に保存し、心臓音を聴くことができる小さな美術館。私も心臓音を録った。
いつか誰かが私の心臓音を聴く時が来るのだろうか。自分の死後のこの世を想像してしまう。色々な人のそういった気持ちも保管されている場所。果てしない物語に出てきそうな場所だ。
この周辺も猫トラップ有。豊島は栗色にゃんこが多い気がする。
【直島~宮浦港~】
na01 赤かぼちゃ
とても有名なやつ。
na02 海の駅「なおしま」
na03 BUNRAKU PUPPET
na04 直島パヴィリオン
下のあみあみはペイントなんですね。
na05 直島銭湯「I♥湯」
ごてっとしているけれど、近くで観れば一つ一つの装飾が美しい。異国情緒漂う銭湯。いかがわしさ抜群。
【直島~ベネッセハウス周辺~】
つつじ荘バス停から徒歩で地中美術館へ行く道中にもオブジェが沢山。
この辺りの美術館のイメージに合わせてなのか景観を守るためなのか、カーブミラーや街灯は全て灰色だった。
na21 地中美術館
こちらは敷地内全面的に写真撮影禁止となっていたので写真無しだけれど、地中美術館の建物は線の使い方が面白かった。さりげない違和感の持たせ方と一見不便に見えない不便な設計。予約制の割には館内で待ち時間が発生するのはどうなのよって思ったけれど、さりげなく体験が生じる鑑賞って一番作品の世界に浸れるんだなあ。
モネの展示場所は音への配慮なのか作品に浸る為なのか靴を脱いでスリッパでの入場となっていて、独特な床の質感と色合い、絵に近づくと硝子に入り込む紫色(夕方で、自然光を取り込んでるから?)、一つの部屋で色々な時間軸と同居している様で、風景の切り取りでは無い、作品から生えてきた部屋という感じだった。作品への愛が無いと出来ない業だと思う。
因みに地中美術館周辺も猫トラップがあるので注意。
元々船は混雑するという情報をいただいていたので一本逃しても焦らない様な予定を立てていたけれど、最後の最後、直島から高松港へ帰る船を一本逃してしまっただけで他は思いの外スムーズだった。やはり今年はGWの10連休に大体のお客が吸い込まれていったのだろうか。
土地柄というか訪れる人の交通事情を鑑みてなのか、去年行った越後妻有の大地の芸術祭は作品の場所の案内表示が車目線で配置されていたけれど、瀬戸内国際芸術祭は歩行者目線だった気がした。
鑑賞を全て終えて、元々の滞在時間の都合一部しか巡れなかったけれど、まず驚いたのは作品と土地の間で生じる違和感というのが無かった事。日本でこんな事をできる場所があるとは思わなかった。
海や棚田、民家、元々の景色の美しさがあってこそなんだろうけれど、作品が妙に浮いている事無く正しい景色として組み込まれていて、あの有名な、直島にでんっ! と置かれている草間彌生さんのかぼちゃも、情報誌やネットの写真で観るよりも断然自然な物だった。写真の方が不自然になるって珍しい。それが不思議でしょうがなかった。地続きなのに特別な、元々異世界の住人としてスタートするRPGをプレイしているような体感。
何年か前に、ベネッセアートサイト直島によって瀬戸内の島々に世界中から観光客が集まり、島の活気が蘇った。というようなニュースを見たことがあるけれど、そりゃあ、世界中から観光客集まるよなあと思った。
瀬戸内国際芸術祭は、地域に根差すアートとはなんたるかを堂々と指し示していた。
開催地:直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、犬島、大島、沙弥島、本島、高見島、粟島、伊吹島、高松、宇野
春会期:2019年4月26日~5月26日
夏会期:2019年7月19日~8月26日
秋会期:2019年9月28日~11月4日
3シーズンパスポート:4,800円(前売:3,800円)
会期限定パスポート:4,000円