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『原田裕規 写真の壁 photography wall』を観た(2019/2/19)

遺留品等、産廃業者や清掃業者に渡った写真は、そのまま全て廃棄されずに特異な写真は古物商に売りに出され、普通の写真は正式に捨てられるらしい。
その、捨てられる写真を収集して造り上げられた作品を観た。

『写真の壁』の会場となった原爆の図 丸木美術館は細い田舎道を抜けて辿り着く、川を見下ろせる小高い場所にある。
水彩画家の丸木位里さん、油彩画家の丸木俊さん夫妻が共同で造り上げた、15部にわたる『原爆の図』を常設展示している美術館。

大きな屏風に描かれた『原爆の図』は、位里さんの故郷広島の原爆投下から3日後に現地を訪れ救出活動にも携わった丸木夫妻が長い年月をかけ造り上げたもので、原爆がもたらした悲痛の連鎖、おぞましい被害を後世に伝える為にも貴重なものであり、絵画作品としても物凄いものだと思ったけれど、よくよく観ると黴っぽい部分があってこれは実際に黴なのかそういう作品なのか気になっていたら、建物にちゃんとした温湿度管理や虫害対策が出来る設備がない為に実際劣化しているみたいで、新館を建てる為の募金を募っていた。

企画展である『写真の壁』は常設展示を抜けた美術館最深部にあった。

床に置かれたアルバム。

ほの暗い館内。

乱雑に置かれた廃棄写真。
写真の山。

会場奥に写真の壁。

圧倒的存在感。
寄って観てみるとなんの関連性も無い写真の集合体。写真の端が丸まり今にも落っこちてしまいそう。しかし時間の経過で落ちてしまう事も作品のうち、らしい。

写真に添えられていた文字を縦に羅列したものを『エンドロール』とタイトル付けしていたのも走馬灯のようで印象的だった。

山のように置かれた写真の手触りの埃っぽさ、劣化具合、見ず知らずの人の写真を見るという奇妙な感覚。しかし実家の押し入れにしまったアルバムを彷彿させる、懐かしさ。

原田裕規さんの、廃棄写真を用いた作品は何度か拝見した事があり、同じように廃棄写真が積まれていたけれど、今回は意味合いの違うものになっていた気がした。

丸木美術館で、全く知らない人の、大概の家庭にあるような家族写真や旅行の写真等を使う事で、大きな事件に巻き込まれるのは決してドラマチックな人生を歩んでいる誰かではなく、自分や、自分と同じように平凡に生きている誰かにも起こりうる。という面と、確かに何処かに存在していた筈の誰かに思いを馳せる事の難しさ。という面が掘り起こされて、丸木美術館への敬服であり、『原爆の図』の補完にもなっていてとても面白い試みだと思った。

会場:原爆の図 丸木美術館
期間:2019年2月2日~3月24日
入館料:900円

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