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記事一覧
モノローグ台本『穴』
『穴』本文作:渋谷悠
わたしは、穴を見つけた。
わたしは、ある日、穴を見つけた。
その穴は、わたしの服にあったかも知れないし、
わたしの身体の、どこかにあったかも知れないし、
わたしの魂に、あったかも知れない。
穴があっては、困る。
場所によっては、更に困る。
服にあったのならば、その下が見えてしまう。
身体にあったのならば、血が流れてしまう。
魂にあったのならば、汚れた空気が入ってしまう。
道
モノローグ台本『透明人間ナルシスト』
『透明人間ナルシスト』作:渋谷悠 原案:京サリ
あるナルシストが透明人間になった。
全人類に愛されるためには、陰りのない純真無垢な存在でなくてはならない。
理想の自分を追求していたら、陰りがなくなり過ぎて、
純真無垢を通り越して透明になっていた。
死んだ時は自分のことを記憶から消してほしいと格好をつけていたら、
まだ生きているうちに視界から消えてしまった。
ひっそりいなくなりたいと吹聴していた
モノローグ台本『バイバイの光』
『バイバイの光』作:渋谷悠 原案:月見里りた
(このモノローグは歌詞として書きましたが、朗読しても演じても、また一部、あるいは全部にオリジナルの曲をつけてもOKです。)
⒈
殴られたりしたわけじゃない 我慢できる範囲だった
他のいじめより酷くない 我慢できる範囲だった
布団に入ると聞こえてくる 黒いやつらの止まない声
目を瞑っても 耳を塞いでも わたしを責め続ける
やめちゃえば? 死んじゃ
モノローグ台本『Close!』
『Close!』作:渋谷悠 原案:小駒ゆか
制限時間は1分、砂時計で測ります。
子供たちはカードを持っているチームと、それを当てるチームに分かれます。カードには何かに分類できるような絵が描いてあって、動物とか食べ物とか、乗り物、建物、文房具。授業中に単語として教えているものが殆どですね。片方のチームが It is food. It is round. みたいなヒントを出して、もう片方が Is
モノローグ台本『秤』
『秤』本文作:渋谷悠 原案:寺嶋裕希
あなたが正しさに溢れ、迷うことを忘れてしまった時「そこ」に導かれる。
昔から知っているのに、詳しくは思い出せないような建物、の裏。
天気がよくてもジメジメしていて、どこに辿り着くか分からない階段、の先。
捨てられた生き物たちの魂が吸い込まれる敷地、の中。
そこであなたは「それ」と対峙する。
「それ」は人のようで人ではない。影、鏡、獣、煙、はてな。
「それ
モノローグ台本『それはまるで、蛾の標本』
『それはまるで、蛾の標本』作:渋谷悠 原案:紗南
(経理スタッフ、電卓を叩いている)
「これ、経費で落ちないんで再提出してください」
って言ったんですね上司に、スマートに無駄なく電卓を叩きながら。
すると上司が私を見てこう言ったんです。
「鈴木さんって、スマートで無駄がないよね」
不思議なものです。スマートになりたくて無駄を省く努力を重ねてきたのに、いざ言われるようになると…あれ?
「鈴木
モノローグ台本『死に方ブームが来る!』
『死に方ブームが来る!』本文作:渋谷悠 原案:九反月海
え、あたし目逸らされました?
あー。あー。あーこりゃ死にたくなりますね。こりゃ来ちゃいますね、宮藤さんのせいで。来ちゃいますよ、あの死に方ブームが。
言ったじゃないですか、あたしクソネガティブなんですって。人からどう思われるかばっかり考えてるし、会話とか予防線張りまくるし、静かな部屋にいると頭ん中で「どうせ、どうせ」とか聞こえてくるし、
モノローグ台本『小出ちゃんの嘘泣き』
『小出ちゃんの嘘泣き』本文作:渋谷悠 原案:松井花音
(女、職場の後輩といる)
アインシュタインが言ってもいないのにアインシュタインの名言として広まってる言葉があるの、知ってる?
「狂気とは即ち、同じことを繰り返し行い、違う結果を期待すること」
どお小出ちゃん、今回のクライアント、あの畳屋さんにも当てはまらない?
伝統的な業界は「この素材を使ってるから耐久性に優れてるんです」とか「この畳は
モノローグ台本『感謝の虫』
『感謝の虫』本文作:渋谷悠 原案:harlequin moon
こんな商売を長く続けていると、やはり好みというものが生まれます。
まず「誰でも良かった」なんてのは論外です。捕まることで注目されたい。ちっぽけな承認欲求を、偉く原始的な方法で満たそうとしたに過ぎません。私の出る幕ではない。
衝動的なものは痕跡が残りやすく、謎があまり長持ちしません。
ありんこを追えば、すぐに巣に辿り着く、ぐらいの
モノローグ台本『イタい女コンテスト』
『イタい女コンテスト』本文作:渋谷悠 原案:田島きよ乃
エントリーナンバー7番、藤堂ゆかり、ラッキーなのは番号だけ!
アラフォーが他人事ではなくなり、子供が欲しい男性からするとデッドラインギリギリ。今日もじわじわ市場価値下降中でーす!
趣味は婚活、もはや生き甲斐。出会い系アプリで「いいね」は来るけど幸せは来ない。終電逃せば大体やれちゃう。そんな私が、とっておきの話を引っさげて、このイタい女コン
モノローグ台本『かまってちゃん殺し』
『かまってちゃん殺し』作:渋谷悠 原案:左京ふうか
ねえねえ、めちゃくちゃ殺したい人がいるんだけど、一緒にシミュレーションしてくんない?
中学ん時やったじゃん。どうやったら先輩殺せるかってさ。睡眠薬飲ませて、ちっさい穴を空けた浮き輪に乗せて、海に流して、足に重りを括りつけといて、空気の抜けた頃、沈んでいくっていう完全犯罪。
みんなで真剣に考えてたら下校時間になってたよね!
採用になったあたしの
モノローグ台本『魔法少女先生』
『魔法少女先生』本文作:渋谷悠 原案:須澤真織
(魔法少女の格好をした女が現れる)
ぺぺリポペロップ~こんにちは!
みんな、魔法を信じてる?うんうんうん。
今日は「本当の魔法少女!」のセミナーに来てくれてありがとう。魔法少女のペロンだよ、よろしくね。
この子は使い魔のビビ、人見知りなとこあるけど雷を操る凄い子なんだ。
…ペロンは今、感じてるよ。みんな、ペロンとビビと仲良くなりたいんだね。
(
モノローグ台本『どちらとも言えない』
『どちらとも言えない』本文作:渋谷悠 原案:原田達也
世界は、基本的に、
A:優しさに満ち溢れている。
B:どこをどう切り取っても残酷である。
C:どちらとも言えない。
男女の友情は存在しますか?
A:存在する。
B:そんなものは人面犬と同じく都市伝説だ。
C:どちらとも言えない。
男は、アンケートに答えるのが好きだった。
とりわけ、難しいアンケート、答えに詰まるようなものが好きだった。