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「詩 その他」から分離して、詩のテクスト情報を掲載します。
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#散文詩

春の嵐

春の嵐

君の弱虫がただのワガママだったらいいのに。
甘い蜜に誘われて、小鳥の番が叫んでいる、夜が来ると呼んでいる。
狡猾な打算と雨音の裏付けで上手に思考停止して、
話を逸らして、煙に巻いて、甘い声を吐き出す事には長けて来た。
そして、どうしてだろう?時に寂しげだ。
弾丸の音がして、耳鳴りが響いている。どれだけ真剣に語っても戯けてしまう道化師が踊っている。
寂しさなんてその程度の装飾品なのか?
春の嵐が来て

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氷姿の歌

氷姿の歌

長い夢と膨張する疲労の夜
躁状態の幽霊を追いかける。
春より悪い季節はないさ
鼓動も不要な音鳴らす。

痛みに何の理由があるか?
君には何もわからない。
下らない労働と賃金
摩耗しているのを思い出す。

船をゆっくり漕いでくれ
それからそっと止めてくれ
浅い水面に写る影が
現実で沈んでしまわぬように…

ミルクティーを飲みながら

ミルクティーを飲みながら

地雷を踏んだ女が空から落ちて来る、幾つもの雨を食べ、もうお腹いっぱいだと嘆きながら。ヒヤシンスが咲いている。女はゲームを続けている。広がる空き地、瓦礫の山。アルコール消毒にご協力下さい。青の可能性と不毛な席。日々の終わりの続き。
×
君の夢が儚く散ればいい。思い描いた何もかも、望み欲したあらゆる事から見放され、疲れ果てた姿で砂浜に落ちればいい。怒りを駆り立てる言葉を吐いて、ピアノを弾いて祈ればいい

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魂の在処に付いて

水平線に追い付けない思考が、波間で溺れて息を絶つ。泡は過去と未来からなり、幾千もの可能性の痕跡として忘れられる。懐かしさは一陣の感傷に過ぎない。おやすみ、魂の在処よ。幽霊よ、悲しみは何色だ?境界線をまたいで転がり落ちて行く感覚、人間性が失われて、私は肉体に依存して懐かしんでいるのだろうか?若さは死にたくなる。老いると生きる事がどうでも良くなる。そして、生きる確証を失い、枯れた魂を不死にしようとする

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耳鳴り色

耳鳴り色

梅雨の間の青い空、耳鳴り色が降ってくる。沢山の三角形を落として、僕の言葉は埋め立てられる。詩を落としたんだ、でも、見つからない。どの寂しさが僕のもので、どの孤独が君のものなのか、もう分からなくなった、どの水溜りに涙が溶けたのか忘れたのと同じように。誰かが赤い無駄口を叩き、誰かが黄色い説明をする。或いは嘘で塗り潰し、真っ青な吐物を吐き出す。僕は灰色のスランプだ。もう、どれが自分の思考なのか分からない

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氷姿のスケッチ

氷姿のスケッチ

日々を詠うと血は枯れて、四肢は草木と地に帰る。凍て付いたものを温めるのにどれだけの対価を求められるのか、知っていたら、若者も花を語ろうとはしないだろう。書く事は枯れる事とだ、たとえ幾度咲こうとも。冷たい霊廟の並ぶ一角に、氷姿は皇女の如く咲き、幻像の夕焼けに染められながら素顔を溶かす仮象と化す。緑萌たち桃色が残酷に引き裂くまで、後何時の夜が嘆かれるのか?

椿

椿

君は私に椿を吐く、
右と左に左と右に、
赤と白とそのまだら模様に、真っ赤な椿が、
むず痒そうに溢れて行く。

その複雑な、幻想の様な躍動で、
何を絞り出そうと云うのだろう。
ああ、赤くなり、白くなり、腫れて色褪せて黒くなる、緊張は
死とも生とも云い難い振動に思える。

私たちは閉じ込められているのか?
開け放たれているのか?
裸なのか?或いは、幾重にも重なるベールなのか?
ひとひら、ひとひら色褪せ

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赤

赤い物体を飲み、赤い物体を出し、赤い物体になる。赤は閉じられた内なる景色。それが風景にぶちまけられると一瞬ザワザワと鳥が囀り、鳥は淡くなり、散らすだろう。挑発し、刺激し自壊する赤。それでも口紅を塗る。赤い物体を飲み、赤い物体を内に秘めて、空っぽになるために。ほら、燃え盛る炎にその身を投げ出したい肉体が、辛くなりながら見詰めている。火は水を求めて拒絶し、消費されながら冷えて行く。ああ、生贄は赤く、新

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