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「詩 その他」から分離して、詩のテクスト情報を掲載します。
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#fetishism31

陰翳〈fetishism13の為に〉〈18,翳〉

 日が翳り花の御影も雨に浮き、未知も老い散る泡幾ばくか?

 追いすがる視線のあれこれが作った影に、
 手も足も密集して、一周して、急流して、立ち止まる。
 強い光の盲点になる目眩の中央の渦の中、
 鉄の味、舌が緊張して、乾いた不快感と蜜を飲み込む。

 ザラザラの砂を飲み干して、
 小さな虫の様にうづくまる。
 〈ああ、点線で混沌を分け隔てたい幻影…〉
 雀が対になって追いかけてくる。
 
 夜

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眼〈fetishism31の為に〉〈4,眼〉

一方の眼は突き刺し
一方の眼は受け取る、
その激しい葛藤の為に、
桃色の鏡は裸になる。

流される煙の幾つかを、
御前は呼吸して巡回させ、
タバコで恍惚とする天井が
逆様になるのを待っている。

真っ黒な点滴で満たされる水槽に銀色の帯が泳いでいる。神経の様な筋繊維の様な伸縮と緊張、丸で一滴の毒で軟体動物になってしまった自我である様に、魂は液体と化して水中を泳ぐ。どれだけ舐められれば満たされ、どれだ

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足〈fetishism31の為に〉〈3,脚〉

たくましく足は踏み出し、
血液を上半身に運ぶ。
大地は柔らかい足枷、
来世はサラサラに砕ける。

砂は即ち意味をなし、
この脚の力能を奪い、
水は自ら意義を呑み、
それによって足は自らを満たす。

両足は不均一に組まれ、
悩ましく虚脱して、
愛と対となり曖昧さから逃げて
珍しい回転になろうとしている。

限りなく静止しながら…

手〈fetishism31の為に〉〈2,手〉

春風〈しゅんぷう〉を手が泳ぎ、花束は残酷になる。

彩豊かな微睡の幾つかを、

甘く官能的に編んで行く指は、

触れた途端に痺れて固くなる。

何を思い出しているのだろう?この手は?

怒りでも安らぎでも恍惚でもなく、

それは明瞭に形状を目指して

何かをそっと掴もうとしている。

しかし、それが何かを捉えるより先に

ナニカは淡く溶け出していて、

手は虚しそうに春風を泳いだのだった、

生ぬ

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まぼろしは寂しくない

まぼろしは寂しくない

 だるい肉体が十月の雨にくたびれて
 血液が重たい塩分で満たされている様な疲れだ。
 雨は衣類に纏わり付き、汗がベタベタとして、
 思考はムズムズとした痛み。
 欺瞞なき正義と振りかざす事が出来るか?

 他人を通して自分を傷付けてゴソゴソと咳をする、
 イライラとした詩人が、
 「御前は間違っている」と云われた時にやっと言葉を掴み、
 雨は憔悴した意志を溶かしてしまう。
 「私は何者であり、何処

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