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まぼろしは寂しくない

 だるい肉体が十月の雨にくたびれて
 血液が重たい塩分で満たされている様な疲れだ。
 雨は衣類に纏わり付き、汗がベタベタとして、
 思考はムズムズとした痛み。
 欺瞞なき正義と振りかざす事が出来るか?

 他人を通して自分を傷付けてゴソゴソと咳をする、
 イライラとした詩人が、
 「御前は間違っている」と云われた時にやっと言葉を掴み、
 雨は憔悴した意志を溶かしてしまう。
 「私は何者であり、何処にいるのか?」と問いながら、
 折り続ける木の枝が数多あり、
 「野蛮な所業の意味をどうか尋ねないで欲しい」と云う。
 心臓は反抗しているのだ。

 離別して、出会い
 絶縁して、すがり付き、
 何の為のゴメンなさい、だったのか?
 水溜りを掌が泳ぐ。
 理由なき決別。イライラとした詩人。

 何処からが演劇で、何処からが現実か?
 消えてしまいたい君が、嘘をつき、
 万引きを続けて手首を切る。
 気持ちいい世界の終わりで、物語は踏み潰された。

 本当は、幻も寂しくないのか?
 酔い潰れる現実の目覚めに突き落とされるとして。

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