親子の「さんぽ鑑賞」と「からだ鑑賞」の実験2
横浜で行った、親子向けの鑑賞プログラム実践ログです。
前回のログはこちら
参加者は、親子2組+大人2人の6人。
前回は最初から最後まで「牛乳を注ぐ女」しか扱わなかったのですが、
今回はもう少し導入を入れました。
なんとなく初対面な雰囲気だったので、ウォーミングアップに、
あるルールでドローイングを描いてもらって、
お互いのがどれなのかを当てあいっこしました。
自分の親のはどれ?子供のはどれなんだろう?と想像して、意見を聞きつつ、
表現を見て対話する雰囲気を作ります。
なんとなく話しやすい雰囲気ができたら、
親子でペアになり「糸電話(今回も糸なし糸電話)」で、
簡易な対話型鑑賞を行なってもらいます。
今回の鑑賞作品はこちら
「牛乳・・」よりも、もう少し抽象度の高い作品の方が最初は話しやすいかな?
と前回の反省を踏まえ、こちらの作品を選びましたが、良い選択だったようです。
一応、5分を対話時間の目安にしていましたが、大人も子供も、
それでは話し足りないくらい、たくさんお話しをしていました。
対話のルールは以下
・親は自分の意見は言わない。子供の話をよく聞くこと。
・次のような質問をすると子供の話が広がるかも。
「何が描いてある?」「どうしてそう思ったの?」「他に発見したことはある?」
*他にも子供が答えやすいようなオリジナルな質問も可
5分の鑑賞を終えて集合し、それぞれどんな話をしたのか教えてもらうと、
それぞれがいろんな設定や、お話の断片なようなものを想像してくれていました。
実は先週もある親子と、この絵を同じように鑑賞したのですが、
「画面上部は、夜(左)と朝(右)が混ざっている」など、
その子が発言していた事と、共通する感覚を再び聞いたのが、印象に残りました。
「中央の青や曲線が入り混じった部分は、『船』や『貝』に見える」とか、
「中央下のギザギサの中心に『魚』がいる」など、
水辺に関する連想をする人が多かったのも、前回と共通していました。
作品を見て、互いにいろいろ口を出すのに抵抗がなくなってきたので、
メインディッシュの「牛乳・・」を取り出し、
同じように鑑賞してもらいます。
5分くらい話しながら、見てもらった後、
「絵の中に入って、もっとよく見てみよう!」ということで、
シートを広げて絵の中に入って鑑賞してみます。
これはなんだろう、あれはこれかも・・
この人はこんな気持ち・・この部屋はこんな感じ・・と、
気になったところの感想をシェアしました。
ここで軽く休憩を入れて、後半の「体で鑑賞する」に向かいます。
前回同様、まずはいろんな物になれる体つくりをします。
うさぎー小さいうさぎー大きいうさぎ・・
ゴリラー赤ちゃんゴリラーおじいちゃんゴリラ・・
と、具体的で抽象的な動物の真似をしていきます。
お母さんと合体しての「大きなうさぎ」!
体を動かすと、それだけで楽しくなります。
(でも「ゴリラ」は恥ずかしいらしくて、子供達はやってくれませんでした・・
場に大人ゴリラのみが徘徊する画は面白かったです・・)
次に形のないものの表現に挑戦。
「火」と「雨」をチームに分かれてやって、
弱火ー強火ー大火事、小雨ー本降りー土砂降りと、強さの調整も行います。
で、「火」の方に「雨」が向かっていって、両者は合体し、
「煙」ー「雲」ー「雷」ー「再び雨」ー「海」ー「海の中」と、
状態変化していきます。
さらに海の中に何がいるか?をそれぞれが自由に表現して、
全体で「海の中」を表し・・・
↑上図は海底のチョウチンアンコウ。
ここで絵を体で表すワークに突入します。
海は海でも、「この海」を全員で表して!」と指示を出します。
戸惑いながら、波の形になろうとする大人たちと、
いきなりその場でぴょんぴょん飛び始める男子。
なんのジャンプだろう?と思ったら、
「水しぶき」らしい。なるほど。
女の子もつられて跳ね始めました。
前回は自然に「静止画」での絵の表現になっていきましたが、
今回は彼らが終始ずっ〜と飛び続けているので、
「動画」としての絵の表現という、共通認識ができていった気がします。
飛び跳ねる子供達の後ろを、ざあっと流れてゆく、3人の大人波。
とても楽しく、とても良い感じですね。おもしろい。
全員のカロリー消費が高い中、
ただ一人、全く動かない「富士山役」を発見して「ずるい〜」と大笑い。
確かにちょっと楽そうですが、唯一動かない富士山があることで、
画面に緩急が出る役割を担っている、大事な役どころだなと思いました。
*あとで気づきましたが、この絵は「神奈川沖」ということで、
現場近くの海(本牧あたりらしい)から見た富士山の絵でした。
そして最後は「牛乳・・」も体で鑑賞してみることにします。
完全にスイッチの入った子供達は、画面の全てのものをトレースする勢いで、
次から次へと変身して行きました。
注がれる牛乳↑
机にかかった布↑
パン籠↑
壁にかかっている籠↑
地面に落ちている棒↑
窓↑
この前の窓↑と、また違う表現法だったのが興味深かったです。
こちらは仰向け。(右は壁の「時計」を表しています。)
そろそろオーバーヒート気味だったので、今回の体鑑賞はここまで。
整理体操として、フェルメールの絵についてのお話や絵探しを少しして、
約80分、休憩ほぼ無しのプログラムを終えました。
導入のドローイングは、抽象画を最初の鑑賞にすればいらなかったかも。
と思えるくらい、対話の部分はすんなり始まって盛り上がり、
後半の体鑑賞も、子供達は最初は羞恥心もありつつ、
最後はノリノリで楽しんでくれました。
大人も大笑いしながら取り組んでいたのが、
呼び水となるというか、恥ずかしさがどうでもよくなる
雰囲気をうまく作ってくれたんだと思います。
やっぱり体を動かすと自然に笑えてくるのがいいですね。
あとは、「何にでもなれる身体」になって、
いろいろな絵をトレースしていく感覚を、
さらに開いてゆくか、もしくは収束してまとめてゆくか・・・
そのあたりのデザインが今後の課題かなと思いました。
ある程度のパッケージになったので、
いろんなところ、メンバーでできると思います。
親子に限らず、単独の大人と親子、単独子供が、
入り混じった構成が結構良さそうな気がしています。
実施の要望あればこちらから連絡ください。
それでは。
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