ブラジルで警察に連行されたお話
日本でも警察に連行されたことないのにブラジルに来て1週間と少しで警察に連行されてしまいました...。
言葉もわからないし連れて行かれている途中は本当に怖くて「ダッシュで逃げたろうかな」とか「終わった〜」とかずっと思ってました...
ただ、この出来事があったことでブラジルのカルチャーやアイデンティティに深く触れることになりましたし、今回と同じようなことは今後自分でもやらないように注意しようと思いました。
これから同じような局面にでくわす方に気をつけて!という啓蒙の意味と、日本とは全く違う世界があることを伝えたく今回は僕のミスの一部始終を書いていきます。
<何してたの?>
ブラジルに来たらプロのサッカーの試合を絶対観戦しようと思っていました。僕は小さい頃から南米の選手の華麗なテクニックが大好きでした。
2002年の日韓W杯でのカナリア軍団の姿を見てサッカーがどんどん好きになりましたし、ロナウジーニョ・ネイマールを見ていつもワクワクしていました。
ブラジルではこれまでオフシーズンだったようですが1月の後半からシーズンが開幕するということで早速開幕戦を観にスタジアムに直行しました。
今回のお話はそんなサッカー観戦中に起きた出来事です。
<ブラジルのサッカーとは>
今回僕が観戦したのはチームとして新シーズン開幕の重要な一戦ではありますがリーグ戦ではなく日本でいうところの「天皇杯」にあたるものの予選だということでした。
ちなみにブラジルのプロサッカーは世界で最も過密なスケジュールで運営されているうちの一つだと言われています。
主要な大会が複数あり、多い時で週に3試合ほど行われたりもするようです。もちろん主力選手が全て出場するわけではなく試合によっては若手選手の活躍の機会にもなります。
僕が現在滞在しているサンパウロ州には4つほどビッグクラブがあります。
■SCコリンチャンス
■サンパウロFC
■パルメイラス
■サントス
今回僕は比較的サンパウロの中心部からアクセスしやすい場所で開催されるパルメイラスのホームゲームに足を運んでみることにしました。
<スタジアムに入場>
僕が今回観戦した対戦カードはこちらです。
パルメイラス×ポンチプレッタ
いずれもサンパウロ州にホームタウンを構えるチームですが今回はパルメイラスのホームスタジアムであるAllianz Parque(アリアンツパルケ)で開催されるゲームです。
スタジアムまでは自分が滞在している場所からは地下鉄で30分ほどでした。
ただ、サンパウロは夕立がすごくてその日も夕方からとんでもない量の雨が降ってきて僕はスタジアム近くに着いたものの2時間近く最寄りの商業施設で雨宿りをしていました。
ちなみに試合開始時刻は21:30!!!!
日本のJリーグだったら絶対ありえないですよね。だいたい14:00とか19:00とか開始なのに。。。ちなみに0:00キックオフとかもあるらしくてどうなっているんだブラジル。。。
雨が止み始めた20:30ごろにようやくスタジアムに向かいました。向かっている途中に新鮮な光景を目にしました。
スタジアム近隣の飲食店は全てパルメイラスを応援するユニフォームを着た人で覆い尽くされていて試合前から皆さんビールを飲みまくっていました。
※ちなみにブラジルのビール消費量は世界3位らしいです。確かにみんな昼間からビール飲んでます(仕事は...)
「こんな光景見たことない。。。」とにかくみんなが試合前のパーティをあちらこちらでやりまくってるのです。
Allianz Parque(アリアンツパルケ)は街中にたたずむスタジアムです。住宅や商業施設、幹線道路が入り混じる中に突如として現れます。僕はパルメイラスの応援スタンド側の席だったので最寄りのゲートから入ることにしました。
現在はコロナウイルスの影響もあって入場にはチケットだけでなくワクチンの接種証明など各種チェックがありますので一度各チームのHPを見てから行った方が無難かと思いました。
スタジアムに入ったはいいものの少し早く着きすぎたのか結構ガラガラな状態でした。
このままスタンドに向かっていいものなのか、どこに座るべきなのかとかもあんまり理解していなくてしばらく僕は周辺をうろうろしていました。
そんなことをしていると1人スタンドに向かっていきそうなサポーターと思わしきお兄さんを見つけました。「彼についていけば問題ないだろう」と思い、彼の後ろを歩いていくことにしました。
ここからが事件の始まりでした ...。
<現地サポーターとの出会い>
サポーターと思わしきお兄さんの後ろについてスタンドに向かっていたその時です。突然お兄さんが歩くのを辞めくるりと振り向き僕の方を見てきました。
そしていきなり僕の胸を小突いてきて「お前パルメイラスファンか?」と睨むような目つきで聞いてきました。
「ひえっっ...焦」
僕は話しかけられる準備もしていなかったし、
しかもいきなりのそんな質問ある?と動揺してしまい、「違う」と言える雰囲気でもなくすぐに「そうだよ」と答えました。
すると「じゃあついてこいよ」とお兄さんに案内され始めました。歩きながら「ポルトガル語話せんのか?」「お前何人だ?」などと質問されました。
覚えたてのポルトガル語で「ポルトガル語は話せない」「日本人だよ」と答えながら歩きました。なんとか席につくことはできそうかなと希望が見えてきました。
話の中で僕のTシャツを引っ張りながらお兄さんが自分のTシャツ指差し、何かを言っていました。たぶん「ファンならお前もユニフォーム着ろよ」みたいな感じでしょうか?僕は私服でその方はもちろんパルメイラスのユニフォームを着ていました。
僕はサッカーの試合見に行く時にユニフォームを着るほど応援しているチームはないし、ましてやユニフォームを買ったことないからすごいなぁと思いました。
ようやく観客席に着くとあたりの席を満遍なく指さされたのでこの辺一体は座ってもいいのだと理解しました。お兄さんは初めは目つきが怖かったのですが最後は優しい雰囲気で「じゃあな」と去っていきました。
そして1人になった時に顔をあげた時に待ち受けていたのがこのスタジアムです!!
「ついに南米の生のサッカーが見れる!」僕はめちゃくちゃ興奮しました!Allianz Parque(アリアンツパルケ)とにかくめちゃくちゃ広い。。。
試合まで時間があったので僕は適当に席についてSNSでも見ようかと携帯を手にしました。どうやらこのスタジアムWi-Fiが入るようです。
しかも動画もサクサク見れるほどの通信速度でめちゃくちゃしっかりとしたWi-Fiが入ります。海外はどこでもWi-Fiがあるイメージですがこんなところまで整備されているのかと感激しました。
Wi-Fiも繋がったしキックオフまでも時間があるので僕はしばらく携帯を眺めていました。
<ついに警察に連行>
「トントン」
携帯を眺めていると誰かが僕の肩を叩いてきました。携帯を見ていたので下ばかり見ていたのですが、なんだろうと思って顔を上げてみるとそこには警察官が3人いて既に僕は取り囲まれている状態になっていました。
「え、何、こわいこわい...焦」
相手がポルトガル語で僕に質問してきますが全くわかりません。僕はGoogle翻訳を手にして「ここに話してほしいと」ジェスチャーしましたが「ダメだ」と断られて「ちょっと来い」とついに連行されてしまいました。
無線で応援を呼んでいて歩き出した時には前3人後2人の合計5人の警察官に囲まれて歩くことになりました。
ブラジルの警察官はとにかく筋骨隆々で屈強な体つきです。それはもうランボーなのです。
僕は5ランボーと一緒にどこかに連れて行かれることになりました。
途中で席まで案内してくれたお兄さんがこちらを見ていました。「アミーゴー!」って言いながらgoodサインをしていました。「じゃあ助けてくれ」僕はそう思いました。
連れて行かれている最中はいろんな人に見られる恥ずかしさとこれどうなるんだろうという不安で「終わった...」と思いました。
でも連行される理由に思い当たる節がないのです。しいて言うなら座ってた席が違った的な?いやそれで5ランボーは来ないだろ...そんなことばかり考えていました。
僕はそのままスタジアムの奥に連れて行かれました。警察の控室です。到着すると中にはこれまたランボーが5人いました。僕はサンパウロのサッカースタジアムで10ランボーに囲まれることになりました。
初めに「Can you speak English?」と聞かれました。僕は「No」と即答し「日本語を話します」と憶えたてのポルトガル語で返しました。
するとランボーたちは英語もポルトガル語も話せない謎の日本人の対応を露骨に嫌がり始めました。ここでランボー同士の僕の押し付け合いが始まります笑
これはなんかすごい申し訳ない笑
心の中でごめんねと思いました。。。
警察はこの国でも縦社会なのでしょうか?ようやく押し付け合いが終了し入口付近にいた若めのランボーに対応されることになりました。
ここからGoogle翻訳を使いながら僕は若ランボーと会話を始めます。先ずは「何者なんだ?」的なことを聞かれました。
何者もなにも試合見にきただけなんだけどな。。。なんて言えばいいんだ。。。困っていると「パスポートあるか?」と聞かれたのでパスポートを渡しました。諸々必要な情報が記録され時間だけが流れていきます。
中々進捗がない時間が続きましたがついに若ランボーはこの連行の核心に迫る決定的な発言をするのです。グーグル翻訳にはこう記載されていました。
「あなたが着ているウェアではあなたの安全を守る保障ができないので別のセクターにこれから移します。」と書かれていました。
「なるほど!!!!」若ランボーのその発言だけで僕はすぐに全てを理解しました。僕が連行された理由はこうです。
<僕が連行された理由>
サッカーには基本的にホームチームとアウェイチームが座る席が分けられています。基本的に風潮として応援しているチームのコアなサポーターは自分のチームのゴール裏に座り、どちらのサポーターでもなく単純にサッカー見たいよという人たちはメインやバックスタンドに座ります。
ただしアウェイ側に座ってはいけないや、どこに座らなければいけないという厳格なルールはありません。まあ共に応援している仲間がいるところで見た方がシンプルに楽しいですしね。
僕はその当時せっかくなのでホーム側(パルメイラス)のゴール裏のサポーター席に座っていました。これがこの国においてはまずかったわけです。なぜいけなかったのか?
その日の対戦カードを改めて振り返ります。
パルメイラス×ポンチプレッタ
ホームのパルメイラスは「緑と白」がチームカラーです。
一方で対戦相手のポンチ・プレッタは「白と黒」がチームカラーです。
そしてその当時の僕の服装というのが黒いユニクロのTシャツを着ていたのです!!!
つまりはこういうことです。
パルメイラスサポーター(緑と白)しかいないスタンドで黒のTシャツを着ている人=敵チームのサポータで暴動起こす危険人物と捉えられていたわけなのです。
そんなセンシティブなものか?という気もしますがブラジルでは度々サポーター同士の争いで死傷者が出てしまうくらいです。
↓昨年の映像です(こんなことがおこる世界みたいです。)
そして僕が相手チームのサポーターでないと分かってからはTシャツのカラー的にそこにいるべきではないし、安全の保証ができず危ないよということでランボー達が僕のことを守ってくれていたのでした。ありがとうランボー。
そして僕はここで一つの伏線回収をしました。スタンドに案内してくれたお兄さんは単純に話しかけてきたのではなくて僕のウェアを見て自分たちのテリトリーに相手のサポーターと思わしき人物が入ってくるからそれを阻止しようとしていたのだと。※あそこでパルメイラスのファンじゃないとか言ってたらやばかったのかな...
移動する前に若ランボーは僕に「パルメイラスのユニフォームに着替えられるか?」と聞いてきました。しかし「持っていないよ」と言うと「わかった、じゃあ席に案内するからついてきて」といい安全な席にランボー達が送ってくれることになりました。
部屋を出る時に奥からランボーたちが「アリガトー」「バンザーイ」って言ってました笑
カラーバス効果ではないのですがそこから会場を見渡すと7.8割くらいは緑か白のパルメイラスのユニフォームを皆着ていることに気がつきました。
そしてまた僕はランボーたちに囲まれて厳戒態勢の中観客席に戻りました。
めちゃくちゃラッキーだったのが案内された席がメインスタンドの中央付近で通常サッカー観戦する時は「S席」や「SS席」と呼ばれるような一番高価な席で試合を見ることができました笑
席に送り届けてもらってからもまだ僕は混乱していて「え?何これ大丈夫なん?ほんとに...」とソワソワしてたのですがしばらく近くにいたランボーが「大丈夫!大丈夫!」ってgoodサインしてくれたのはめちゃくちゃ安心しました。泣
無事解放されたのですがなんだかんだやっていたので試合開始前になりました。もうスタンドはかなり埋められていました(といっても今は入場者数に制限あります)
試合はというともう会場全体が盛り上がっていて僕も最高に興奮しました。やはり南米の選手は特徴的なプレーをしますね!この詳細についてはまた別のnoteにでも書いていこうと思います。
<最後に>
今回ブラジルの警察官によって助けてもらい、ことなきを得たのですが、カルチャーって本当にすごいなと思いました。Tシャツのカラーひとつでこんなにも大ごとになるものかと。
そしてサッカーがチームが好きすぎて大暴れしちゃうサポーターってどういう気持ちなんだろうなと。
でもこれがこの国の普通なんだと思います。
「郷に入っては郷に従え」今回すごく勉強になりました。
でももうひとつ感じた感情があって「物事を知らないことはすごく罪な反面、知らないからこそ飛び抜けた行動ができる」のだなと感じました。
今回の件があって同じような行動は怖くて怖くてやりたくてもできません。。。でも当初の僕は「サッカー楽しみー^ ^」「いえーい^ ^」としか思っていなかったわけです。
知らぬが仏という言葉もありますがもしかしたら世の中知らない方がいいこともあるのかもしれません。
そして子供の時は色々なものに挑戦できるけれども、大人になったら挑戦を尻込みするのは経験が邪魔をしているのかなと思いました。
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