嫌いな夏と私の闘い
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風に揺れるカーテンと、響き渡る蝉の声。遠くの方から聞こえる優しい風鈴の音(ね)。火傷しそうなほど照りつける太陽は、私の心をひたすら抉る。
夏が嫌いだ。
暑い。太陽から目を守るように、日傘で前身を覆う。邪魔そうに避ける通行人。心がズキズキと傷む音がする。
夏が嫌いだ。
8月、いつもこの時期は心が奥深い底へと沈んでいく。私の相棒は双極性障害。人生の3分の1を、彼と過ごしてきた。恋人よりも深い関係。だけど苦しい。
アスファルトに浮かび上がった私の影が、まるで心の中に忍び寄ってくるかのようだ。朝はいつも憂鬱で、でも蝉は元気で。空も、雲がどこかへ消えてしまった。外の世界はこんなに明るいのに、心の中はどこまでも暗い。カーテンを閉め切った部屋の中で、ただ一人、泣きわめく。
夏は本当に辛い。
浴衣を着た女の子が、恋人の元へと急ぐ。打ち上がる花火の音。ドッカーン。心の中の何かが弾ける音によく似てる。立て続けに聞こえるこの音が、憂鬱で。心の中の重たい石が、いっそう重くなる感覚を味わう。
冷房の効いた部屋に閉じこもり、ただ時計の針が進むのを待つばかり。毎日天気は晴れなのに、”明日は晴れるかな”と神に願う。
もうすぐ夏が終わる。
夜風が涼しくなる頃、裸足のまま玄関を飛び出す。心地よい風が顔に当たる。やっと楽になれる。明日は晴れだ。
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