*泣けるきっかけを探している*
大人になると、仕事が上手くいかなかったり、失恋したりしても思いっきり泣けることが少なくなった。
こんなことで泣くなんて大人なのにみっともないなぁって、心の中でセーブしてしまっている。
本当は悲しいのに、泣きたいのに。
心の中のバケツは涙を貯める容量をとっくに超えているから、心は泣いているのに涙として出てきてくれないんですよね。
*
そう思ったのも、ふと、本を読んでいて涙が止まらなくなったんです。
私、吉本ばななさんが大好きなのですが、
「キッチン」という本の中で、
あまりにも不確かな時間や気持ちの流れの中で、五感にはいろいろな歴史が刻み込まれている。
さして、重要でなかった、かけがえのないことが、ふいにこんなふうに冬の喫茶店でよみがえってくる。
主人公のみかげは、幼くして両親を亡くし、祖母に育てられます。
しかし、最愛の祖母も亡くして、悲しみに暮れていた時に、祖母の知人という同じ大学の雄一に
「一緒に住まないか」と、拾われ、
雄一と、雄一の母(元男で、父でもある)えり子さんとの3人で、
不思議だけど温かい生活が始まります。
しかし、しばらくしてえり子さんの突然の死が訪れます。
残された2人。
孤独に包まれた、雄一と、みかげが喫茶店でお茶をする場面。
えり子さんが淹れてくれたお茶や、その時に交わした会話。
そんな日常が、ふいによみがえってくる。
その場面の一節なのですが、
涙が溢れて止まらなくて。
「あぁ、私にもこんなささやかな日常があるはずなのに、そんな風にきっかけがないと忘れてしまっていることが悲しいのかも」
「今のささやかな日常を、大切だったと気づけるのはそういう時にならないと分からないんだろう」
「五感に歴史が刻み込まれている。その通りだなぁって思う。
だけど、いい記憶も悪い記憶もきっかけさえあればふいに容赦なくよみがえってくるものだろう。
故人との思い出みたいに、苦しくなるほどなつかしい記憶がよみがえってきた時、わたしはその苦しさに耐えることができるのだろうか」
言葉で表しがたい、色々な感情や気持ちが溢れてきた。
そんな風に、本の中で、共鳴したところがあって涙が出てきたのもあると思うけど、
たぶん、ただ泣きたかったのもあるかもなぁって。
これだけ本の力説しといて、泣いた理由本の内容そんなに関係ないのかい?っていう感じなんだけれど…
*
最近、私泣いてないな?って気づいたら、
スマホの電源を切って、テレビも消して。
泣けると聞いて気になっていた映画や、本を、
じっくり読む時間を設けてあげたい。
大人になったら、泣くことってあまりないから意図的にそういう時間を作ってあげることが必要だと思う。
そうやって、自分の心を解放させてあげたら、
泣いた後はなんだかスッキリするし、心の中の何に対してかは分からないようなモヤモヤも洗い流れるような気がする。
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