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六波羅蜜寺の行く途中にある、青い屋根のパン屋さん(後編)


六波羅蜜寺は、京阪の清水五条駅が最寄駅になる。阪急河原町駅からだと結構歩くので、バスを使ったほうがいい。それでも歩かなければならない。わたしはJR京都駅からこのあたりまでバスで来ていたので、住宅地を通って、歩いて六波羅蜜寺に向かう。



突然ですが。気になって中もチラチラのぞいてしまうけれど、通り過ぎてしまうお店ってないだろうか。六波羅蜜寺に行く途中には、そんなお店がある。


住宅地のなかにポッとあらわれる、青い屋根のお洒落なお店。


外観が一見目をひくのだけれど、きっと誰かの暮らしのなかになじんでいるんだろうな、という雰囲気のお店で、気になるけれど入れなかったのは、自分が通りすがりの者、だったからなのかもしれない。


銅の看板には、Nitta bakeryと書かれている。


…初めて、入ってみることにした。


行った時間が夕方で、そろそろ店じまいかなというときだったからか、店内には誰もいなかった。


こじんまりとしたお店のなかに並べられたパンは、きっとピークの時間のときにはもっとあったのだと思う。


地元のお客さんが、晴れた天気のなか、トングとトレーを持って楽しそうに店内でパンを選んでいるのを想像すると、それだけでなんだかいい。青い空と、青い屋根と、パン。なんて最高な組み合わせだろう。


わたしもトングとトレーを持って、全粒粉のメープルクルミスコーンと、塩バターロールを購入。


袋を下げて、六波羅蜜寺へ向かった。



「ご自身の痛いところや、辛いところを心のなかで撫でてください」

六波羅蜜寺のなで牛は、本来なら実際にさわって撫でることができるのだけど、今は新型コロナウイルス対策で、そういったことができなくなっている。

もう色々なところが痛かったので、心の中で撫でていると、なんだか涙がボロボロ出てきて、さすがにババアが何やってんだと思って恥ずかしくなってきたので、ささっと出てしまった。


阪急河原町まで行く帰りのバスの中に、制服を着た学生がずらずら乗ってきた。多分高校生だろうか。言葉が標準語だったので、修学旅行とかだろうか。次どこ行こうとか、あれしたいこれしたいとか、色々話している。

彼らがとてもキラキラしていて、羨ましかった。羨ましいと思ってしまう自分が嫌だった。あの子たちが微笑ましいと思えたとき、自分のなかで、ひとつ何かを乗り越えられるのだろうか。それならすぐに乗り越えたい、と思ってしまう。





家に帰って、買った全粒粉のメープルクルミスコーンと、塩バターロールをガサガサあける。


まずは全粒粉のメープルクルミスコーンをいただく。

口の中でざくざく、ごろ、という不揃いな音が鳴る。スコーンとクルミの音だ。心づけに残る香ばしい匂いは、ちょっとしたお土産のようなもの。焼きたてであれば、「焼けましたよ」と声をかけてくれそうな、お店の人のエプロン姿を思い浮かべてしまう。そして、そこに少しだけ混ざる、メープルの甘い匂いがもう、ね。あぁ良き。


次は塩バターロール。

こういうシンプルなパンこそ、パン屋さんの特徴がはっきり出るような気がするので、最近パン屋さんに行ったら、シンプルなパンを1つは買うようにしている。

塩バターロールって、色んなパン屋さんで見るけれど、初めて食べた。なんかしょっぱいのかな、と思って今まで避けていたのだけど、全然しょっぱくない。こんがりと焼けたパンに、アクセントになる塩の味。これだけでも充分美味しいのだけど、中が空洞になっていてなんか埋めたかったので、残り物のカット野菜と豆腐をソースで炒めて、中に詰めて一緒に食べてみると、また違う味で楽しめた。ソースと塩の感じがちょうど合って、うん、美味しい。


結局パンの雑誌に出ているパン屋さんには行けなかったなあ、と思いながら、雑誌をパラパラめくる。けれど、新しいパン屋さんに出会えてよかったなあ、と思った。


いつも新しいお店のドアを開けるとき、とても緊張する。けれど入ってみると、その緊張ほど緊張することはない、ということを知る。

知らないことは、怖い。知れば、怖くない。

それはお店や店員さんの器の大きさや、あたたかくてやさしい雰囲気もすごく関係しているのだけど、新しいことを始めるときってドラマチックなものではなく、川が海へと流れるように、意外とゆるやかなものなのかもしれない。
知らないから、精一杯恐がって、精一杯の準備をする。それでも、考えても考えても、どれだけ完璧に準備していても、抜け落ちるときは抜け落ちる。それは仕方のないことで、だってわからないのだから。



今日の自分は恐れすぎたな、と反省する。知ろうとするのではなく、恐れただけで終わってしまった。人に対して、自分からまた壁を作ってしまった。



ちょっと頑張れば行ける範囲で、「パンの旅」に出るのもいいな、と思う。たくさんのドアを、開いてみたい。考えたらワクワクしてきた。またnoteにも書きたい。実は結構パンのことを書いている下書きがたまっていたりする。それを少しずつまとめてみようかな。


腫れた目は、きっと明日には元通りになっているだろう。




おまけのあとがき

今回文字だらけになってしまった、読みにくくてすみません。写真撮るの忘れていたこともあり、意図的に撮らなかった、ということもあるけれど、やっぱり撮っておけばよかった。

代わりにNitta BakeryさんのInstagramをのぞいてみてください。「日常にある小さなパン屋」という言葉がピッタリなパン屋さん。


調べてみると、Nitta Bakeryさん、過去に『セブンルール』という番組にもとりあげられていたそうです。

六波羅蜜寺のことが全然書けなかったので、こちらもどうぞ。空也上人像は教科書にも載っていたような。


そして忘れていたけれど、過去にも六波羅蜜寺のこと、書いていました。生活が見える、このあたりの雰囲気が好きです。


…ほんまの完。


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