こぎつねコン と こだぬきポン(後編)


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こわい ながい よが あけました。
 あらしが あったとは おもえない、
しずかな あかるい あさです。
 こだぬきの ポンは、のっぽすぎに
のぼって、あたりを みまわしました。
 ポン「うわぁ、ひっどいっ!」
 木が いっぱい たおれて、ずっと
むこうの がけっぷちまで みとおせます。
 ポン「あれっ⁉」
 がけっぷちの すぎの木が 一ぽん
たおれて、つばき山に とどいています。
 ポンは、のっぽすぎを すべりおりて、
がけっぷちへ かけつけました。
 ツツツツツ………と、ポンが、

※1/2までゆっくりぬきながら

たおれた すぎの木を わたって いくと、
むこうから、コンが あらわれました。

※のこりを、さっとぬく

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 ポン「ぼく、ポン!」
 コン「あたし、コン!」
 ポン「きみ、うた うまいねぇ。」
 コン「あなただって。」
 ポン「きみ、ぼくの ともだちに なる?」
 コン「ええ、なるわ。 あなた、あたしの
    ともだちに なる?」
 ポン「なっるさぁ!」
(間)
ポン「きみ、ばけられる?」
 コン「ええ。おまんじゅうに だって、
    ちょうちんに だって、たぬきに だって
    ばけられるわ。いっしょうけんめい
    れんしゅう したもの!」
 ポン「ぼくだって、いしに だって、さかなに
    だって、きつねに だって、
    ばけられるよ。いっしょうけんめい
    れんしゅう したもん!
    そうだ!ばけっこ しようよ。
    きみ、たぬきに ばけてごらんよ。
    ぼくは、きつね、つまり、きみに
    ばけるからさ!」
 コン「ええ、いいわ!」
※さっと、ぬきながら
 コン・ポン「えいっ、やっ!」

3ページ


 ポン「ああっ!きみ、まるで ぼく そっくり!」
 コン「まあー!あなた、まるで あたし そっくり!」
コンは、コンにばけたポンをみて、ポンは、ポンに ばけた コンを みて、
かんしん しました。
と、そのとき、
 コンのかあさん「コ~~~ン!コ~~~~~ン!」
 コン「どうしよう、かあさんだわ。ばけっこ したなんて わかったら、
あたし、うんと しかられる………。」
 ポン「もう、もとに もどってる ひま ないよ。
このまま、ぼく、きみの かあさんとこへ いく。きみは、そのまま、
ぼくの うちへ いって。ぼくの あしあとに ついて いくんだ。
すぎの木、すべらないように きを つけて、わたって!」
いいながら、ポンは、かあさんきつねの こえの ほうへ、
はしりだしました。

ーぬくー

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 コンのかあさん「まあ、コン!こんなとこに いたの?
ずっと さがしてたんですよ。たいへんなの。
とうさんが あしを おったの。
あらしで やねが こわれたから、なおしていて、すべって おちたの。
おいしゃさんを よびに いって くるから、おまえ、すぐ うちへ かえって、
そばに いておくれ。」
 コンにばけたポン「ぼく…じゃない、あたしが よんでくる。」
 コンのかあさん「おまえが?山を ふたつも こえるんだよ。
むりだよ、とても。」
 コンにばけたポン「いける!みちを おしえて!」
コンに ばけた ポンは、もう、あしを うごかしながら、いいました。
 コンのかあさん「一ぽんまつを すぎたら、ひだりへ まがって、
大いわの さきを みぎへ いくの。…ほんとに いける?きをつけてね!」
 コンにばけたポン「うん!」

5ページ

コンに ばけたポンは、はしりだしました。
かけっこには じしんが あります。
ポンは、はしりました。
コンに ばけたまま はしりました。
やぶを つっきり、いわを とびこえ、かぜの ように はしりました。
 コンにばけたポン「はやく おいしゃさんを よんできて あげよう。
はやく いたいのが なおるように。はやく はやく はやく…。」
いっしんに おもいながら、はしりました。
あめで ぬれた 山みちを、すべって ころんで、それでも、
はねおきて、はしりました。
コンにばけたポン「はやく、はやく、はやく…。」

ーゆっくりぬくー

6ページ

こちらは、ポンに ばけた コン。
かあさんたぬきに あかんぼうの おもりを たのまれて、おおよわりです。
おちちを のまそうと しても、だっこ しようと しても,
あかんぼうたちは ないて ばっかり。
 あかんぼうたち「あーん、あーん、あーん!」
 ポンにばけたコン「こまったわ、どうしよう!」
ポンに ばけた コンも、なきたくなりました。
でも、コンは、なかずに、うたを うたいました。
 ポンにばけたコン「かなしいときはかきくけこ
おおきな こえで かきくけこ
ほうら、おくちが わらいだす。
ほうら、なみだが かわいてく。

ー1/2まで抜きながらー

おや おや おや!
あかんぼうたちは、なきやんで、すやすや ねむりはじめました。
みんなが ねむると、コンも、ほっとして、いつのまにか、
いっしょに ねむって しまいました。

ーのこりを、さっとぬきながらー

ところが、


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 ポンのかあさん「きゃあーっ!きつねの しっぽ!」
かえってきた かあさんたぬきが さけびました。
 ポンのとうさん「むむっ。ポンが いっとった 川むこうの だれかさんだ。
ばけっこを して いれかわったんだ。
ぐっすり ねこんで、もとの すがたに もどったな。」
とうさんたぬきが いいました。
 ポンのかあさん「じゃ、うちの ポンは、きつねの うちへ
いってるんですか?まあ、どうしましょう!」
 ポンの父さん「しんぱい するな。このこの とうさん かあさんなら、
ポンに、ひどいことは せんだろう。あんなに いっしょうけんめい うたっておもりを してくれた このこが、わるいやつとは
とても おもえんじゃないか。
おかげで、あらしの あとかたづけも はかどった。」
 ポンのかあさん「そういえば、そうですね。
まあ、よくねむっていること。おもりって ほんとに くたびれるもの
なんですよ。あさまで ねかせて やりましょう。」

ーゆっくりぬくー

8ページ

そのころ、コンのうちでも、
 コンのかあさん「たぬき!たぬきだわ!」
ふとんを なおそうとした かあさんきつねが さけびました。
 コンのとうさん「コンが いってた 川むこうの だれかさんだ。
ばけっこして いれかわって いたんだよ。コンが、あんなに
山みちを はしれる はずが ないと おもった。」
と、とうさんきつねが いいました。
 コンのかあさん「じゃ、うちの コンは どこ?」
 コンのとうさん「このこに ばけて、たぬきの うちに いってるんだ。
だいじょうぶ、わたしの ために、あの 山みちを はしって おいしゃさんを
よんできてくれた このこが、わるい やつの はずが ない。
このこの とうさんも かあさんも、コンに、ひどいこと なんか
しないだろう。とにかく あさまで まとうよ。」
 コンのかあさん「それも そうですね。くたびれて もとの すがたに
もどったのね」

ーゆっくりぬくー

9ページ

つぎのあさ、
 ポン「ぼく、ぼくに もどってたんだ。」
 コン「あたし、あたしに もどってたの。」
ポンと コンが、がけっぷちに かけつけて いそいで いれかわりました。
そこへ とうさんたぬきが ぬっと あらわれて、
 ポンのとうさん「これは、ほんとに うちの ポンかな?」
と、ぐいっと ポンを にらみました。
コンの まえには かあさんきつねが あらわれて、
 コンのかあさん「これは ほんとに うちの コンかしら?」
 ポン「ほんとの ポンだよ。がけっぷちに いって ごめんなさーい!」
 コン「あたしよ。ほんとの コンよ。おしり ぶつ?」

ーちょっと間をとって、ゆっくりぬきながらー

けれども、

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かあさんきつねは わらいながら、おおきな こえで さけびました。
 コンのかあさん「はしを かけましょう!」
とうさんたぬきも わらいながら、おおきな こえで さけびました。
 ポンのとうさん「はしを かけましょう!」
 こだま「はしを かけましょう。はしを かけましょう。
はしを かけましょう。かけましょう しょう しょう しょう…。」
あっちから、こっちから、こだまが さけびました。
 ポン「はしを かけよう!」
ポンも さけびました。
 コン「はしを かけましょう!」
コンも さけびました。
そして、

ーゆっくりぬきながらー

さっそく、はしづくりが はじまりました。

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ギーコ ギーコと、木を きって、サク サク サクと、けずって、よいしょ
よいしょと、ころがして

(ちょっとの間)

 コン「あたし、あかちゃんの おもり するわ。」
 ポン「ぼくは、木を きる!」
コンも、ポンも、はりきって おてつだい。
とうさんたぬきも、かあさんたぬきも、
かあさんきつねも、とうさんきつねも
あさから ばんまで いっしょうけんめい みんな そろって、
えんこらさっさ、えんこらさっさ。

(間)

なんにちも なんにちも いっしょうけんめい はたらいて、

ーゆっくりぬきながらー

やがて、りっぱな はしが できました。

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きょうは、はしが できた おいわいです。ごちそうが いっぱい。
 コン「おいしい!」
 ポン「おいしいなあ!」
 とうさんたぬき・とうさんきつね「これはうまい!」
 かあさんきつね・かあさんたぬき「おいしいわねえ!」
みんな、ぱくぱく。みんな、にこにこ。
 コン「うれしいね!たのしいね!はしが できたよ、うれしいね!
はしを わたって かけといで。まってるよ  まっててね!
あしたも あしたも あそぼうね!」
コンが うたうと、ポンも うたいました。
 ポン「はしが できた、できたよ!きみが くるかい?ぼくが いこうか
あえる あえる いつでも みんな みんな ともだちだよ。」
とうさんたちも かあさんたちも あかんぼうたちも、うたいました。
川のおとも 山のこだまも、いつまでも いつまでも うたっていました。
ともだちだよ ともだちだよ。

<後編・終わり>


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