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写真は古い方が愛おしい

自分と地続きだけれども、既に遠すぎて直接触れることはできないもの達。そういった写真を眺めるのが好きだ。

父が若い頃に行った場所、自分が生まれる前の祖父の姿、記憶にない程に幼い頃の様子、若い頃に友人と旅した場所、ゼミ室の風景…

他人が見たら、なんてことない写真だろう。
でもそれはたしかに自分に続いている道で、良し悪しではなく胸を揺さぶってくる。自分に近しい気配がそこにはあって、だけれどももう決して手は届かない。既にハッキリとした手触りはなくしてしまったけれど、ぼんやりとした憧憬がある。
 

人は歩み続けるしかない、時の流れには逆らえない。だから自分の撮った写真ですら5年10年と時間が過ぎていくと、いつしか意識せぬままに多くがその箱に入っている。

既にリアルな細かい記憶は失われている。だけれども写真を眺めれば仄かにその頃の感情が呼び覚まされて、それを呼び水に忘れていた何かがふわりと蘇ってきたりもする。

側にいた人、その時の浮かれた気持ち、帰り道に寄ったコンビニ、冬の夜道で手にする飲み物の温かさ…

まるで小さなタイムマシンのようだ。
 

しかし過去の自分はわたしであっても、既にわたしではない者だ。だって何かを知ってしまえば、知る前と同じではいられない。あの頃の自分からは、絶え間なくアップデートされ続けて。同じであって同じではない。

だからこそ写真に残る眼差しは、これまで歩いてきた道に残した道標だ。
時折写真を眺め、今の自分をそっと重ねて。その距離を思う。

距離が増せば増すほどに、ノスタルジーは一層掻き立てられて。
かつて立っていた場所、今はもう二度と立てない場所に。
写真を通してリンクすると、何とも言えない気持ちが湧いてきて。

ほら、やっぱり写真は古い方が愛おしい。そんな風に思う。




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広島で、大人から子供まで人物の出張撮影をしています。自然な情景を、その時間を…切り取って残したスナップ写真は、お客様だけでなく自分にとっても宝物。何かありましたら、ぜひどうぞ!

ユルリラム
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