見出し画像

なぜそんなことするの!?「いきすぎた指導」が生まれる背景とは

「消しゴムを忘れた児童を3時間立たせた」

なんとも信じがたいニュースが飛び込んできた。

「こんなひどい事があってはならない!」誰もがそう思ったことだろう。

もちろんボクも同じだ。

しかし、小学校教員として働いていたボクは、「この先生ひどい!」の一言で片付ける事ができなかった。

なぜなら、今回の「いきすぎた指導」から様々な学校現場の問題点がありありと想像できてしまったから・・・。

そう、今後、正していくべきことは「この先生一人の問題だけではない!」と言いたいのだ。

今回は、そのことについて綴っていきたい。


ボクも加害者になっていたかも

この指導をしてしまった25歳の先生がどのような人物なのかは知らないし、ニュースで見ただけなので今回の件について具体的に語ることはできない。

しかし、学校文化全般として、今回のような極端な指導に至らないまでも、似たような匂いがする指導が生まれやすい背景があるのは事実だ。

正直、もう10年以上前になるが、若手教員だった頃の自分も、一歩間違えれば、「彼のような過ちを犯してもおかしくない・・・」と思える程に追い込まれていた経験がある。

自分が思っていた何十倍も学校現場は過酷だった・・・。

ボクの場合は、子どもたちに恵まれたこともあり、「いきすぎた指導」という過ちを犯さずにすんだが、もし、子どもの助けがなかったら・・・と思うとゾッとする・・・。それ故、今回の件が全くもって他人事とは思えない節がある。


ボクの苦悩や子どもたちとの関わりについてはこちらをどうぞ↓


「もうこれ以上苦しむ子どもが出ないでほしい!」「過ちを犯す先生が出ないでほしい!」そう思って今回の記事を書くことに決めた。


では、なぜ先生たちはこのような非常識な指導をしてしまうのだろうか?(もちろん全ての先生ではないが)

その人の人間性うんぬんは抜きにして、様々な理由があるとは思うが、以下の3つに集約されるとボクは考える↓

①知識・経験不足
・大学卒業したての先生がいきなり担任を任される
・授業力の研究ばかりで、子ども理解の研究が少ない
②管理主義的な学校文化
・クラスを管理・統制できる先生が評価される文化がある
・学級崩壊を起こすことダメ教員のレッテルが貼られる
③人のキャパを考えていない学校システム
・30人から40人の子どもを一人の先生に任せる学級担任制
・残業が当たり前な労働環境


では、一つひとつみていこう。


①知識・経験不足

まず、ここで声を最大ボリュームにして言いたい(叫びたい!)のは、大学を卒業したばかりの人間に、いきなり担任というステージに放り込むのは無謀だ!ということだ。

まだ教科書でクロールのやり方を習っただけの人間を、太平洋のど真ん中に放り込んで「ほれ陸まで泳げ」と言っているようなものなのだ。

「少しずつ泳げる距離を伸ばしていこう」なんていう優しいシステムは学校にはない・・・。

「いやいや、みんなそうやって辛い経験して立派な先生になるのです」という方もいる。

「おいおいよく見てよ、初任の先生が辞職率を!」と逆に言いたい。もっと丁寧に育ててあげれば、きっと立派な先生になれたのにもったいなさすぎる。

これでは、金の卵を全力で床に叩きつけて割っているようなものだ・・・。

こう、思っているのはボクだけではないようで、以下のようにツイートしたところ、多くの反響をいただいた↓


その上、「授業力向上」「学力向上」ばかりが叫ばれ、本来学ぶべきであろう、発達心理学や脳科学など子どもを理解するために必要な研修は少ない。

これでは、市場調査もさせずに「物を売ってこい」と言っているようなもので、ましてや経験の少ない新人が物を売ることなんてできないのだ。

つまり、子どもたちの特性を教えずに、「子どもが喜ぶ授業をしろ」と言っても、もちろん子どもたちを惹きつけることなんてできない。

結果、手っ取り早く先生の言うことを聞かせようと「ムチ(罰)」を振りかざすしかなくなるのだ。


②管理主義的な学校文化

次は、学校に根強く蔓延る管理主義的な学校文化だ。これも大きな問題だといえる。

学校には

・子どもを厳しく管理できる先生
・子どもを統率できる先生
・チョーク&トークでグイグイ授業をひっぱれる先生

が評価される文化がある。

今は令和ですよ!!とツッコミたくなるのだがこれは事実だ。

ここ10年でだいぶマシにはなってきてはいるが、長い年月をかけて醸成されてきたこの文化は校舎の隅々まで根を張りめぐらせている。

それ故に、クラスを統率できず、学級崩壊を起こしてしまった先生は、「ダメ教員」のレッテルが貼られる事になる。

特に若い先生は、この学級崩壊を恐れている。今後の長い教員生活に傷がつくのは誰しもが嫌なことであり共感できるだろう。

それ故、なんとかクラスをまとめなきゃ!という思いが強くなりパワープレーに走ることになるのだ。(先ほど説明した知識不足もあいまって)


③人のキャパを考えていない学校システム

そこに追い討ちをかけるのが、30人から40人の子どもを一人の先生に任せる学級担任制度だろう。

これは、非常に残酷なシステムだ!個性豊かな子どもたちを一人で3、40人に任せるなんて、「教育」という言葉を国はどう考えているのだろうかと神経を疑いたくなる。

学校をライン工場か何かと勘違いしているのではないだろうか。

今では、「少人数学級を実現する!」と動き出してはいるが、いっても35人学級・・・本当の意味での少人数学級への道のりはまだまだ遠い・・・。

これでは、管理!統率!といった言葉が根強く残っているのも仕方のないことといえる。

この元凶ともいえるシステムをぶち壊すことから始めないと、いきすぎた指導がまた生まれてしまうのではないかと心配になる。


また、それに拍車をかけるのが、残業が当たり前な労働環境だ!

6時間授業を想定して考えてみると、8時から3時20分まで子どもが学校にいることになる。

先生は給食指導があり、昼休憩がとれないため、その後45分の休憩がある。(もちろん誰も休んではいないが・・・さらに言えば、会議が入ることさえある)

まぁ現実あってないような休憩時間をとったとして、定時まで残された時間はわずか35分・・・。

この35分で何ができるというのだろうか?

その日の6時間分の子どものノートや成果物をチェックし、次の日の6時間分の授業を構想し、事務仕事や会議も山のようにある・・・。中学校だったら部活動だってある。

つまり、残業が当たり前の時間設定なのだ!


具体的に先生の1日が知りたい方はこちらから↓


特に若い頃は仕事を上手に回す事ができずに、睡眠時間を削りながら日々働いていた。

1日平均3、4時間だった時期もあった・・・。


これでは、生産性も判断力も下がるし、ストレスだって半端ではない!

このストレスが「いきすぎた指導」を生み出す温床になることは言うまでもない・・・。


まとめ

「いきすぎた指導から見えてきた学校の問題点」について綴ってきたがいかがだっただろうか。

もちろん、全ての学校に当てはまるわけではないが、少なくともそのような学校が存在しているのは事実だ。

まずは、上述してきたような学校の問題点をフルパワーで改善していかなければ、また次の「いきすぎた指導」を生み出してしまうことになる。

時は風の時代!

子どもにも、先生にも優しい学校に変わっていくことを願っている!


以上、ガクせんでした。

最後までお読みいただきありがとうございました。

良い一日を!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?