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世界は一つしかないはずなのに。

世界は一つしかないはずなのに、線を引いたり分割しようとするのはなぜだろう。

「私とあなたはいる世界が違うので」
「こっちの世界で生きていきたいなら」

グラビアアイドルという活動を始めてからというもの私の活動できる仕事の幅は格段に減った。

否、正しく書くとすれば「減った」ではなくて「変わった」だ。

具体的に言うと真面目なメディアからの執筆依頼は減り、撮影会や司会・タレント系の出演依頼が増えたのだ。どうやら「自治体関係の仕事」と「無名のグラビアアイドル」の相性はとても悪いみたいだ。※ここで「無名」と書いたのは「ある程度名前が売れて知名度のあるグラドルは例外である」という意味を表してます。

つい先日、「秋田の企業を取材してほしい」というとても嬉しいお仕事の依頼があった。生まれた土地で働く人の生の声を聞けることも、その企業を世の中の人に発信できることもとても光栄なことだ。私は二つ返事で承諾した。報酬だって期間だって何も決まってはいなかったけれど、兎に角秋田の力になれることが嬉しくてそんなことは二の次に思っていた。

早速依頼してくださったメディアの方々と方向性や取材企業の打ち合わせをした。秋田の現状や、企業を取材するにあたっての注意点、そして実際に動くときの計画など事前の準備が徐々に整って行く。私はいつその取材が決まってもいいように、なるべく執筆依頼をたくさん入れないようにした。

その日から秋田の面白い企業や、伝統的な企業などを調べ「ホームページのつくりはどうか」「その企業の理念はなんなのか」「企業の将来性や魅力」などを調べてその時を待った。「いざ始動!」というところまできた矢先、この仕事の話は白紙となってしまった。

突然の契約白紙。

理由は「エッチなDVDに出ているから」ということが自治体と連携するにあたって弊害になってしまうからだった。

正直、とても悔しかった。DVDを出したことを悔やんでるんじゃない。私にとって「立派な仕事」だと思って作った作品を遠回しに「ダメなもの」と侮辱され軽蔑された気分になったからだ。私はグラビアアイドルもAV女優もプロとして尊敬している。風俗嬢も、キャバ嬢もホストもホステスも水商売と言われる仕事をしている人たちもみんな立派な社会人だ。

世の中に価値を提供して、それに対する対価をもらってるんだから十分に社会貢献している。偏見を持っている人たちに問いたい。


世の中からそれらの仕事がなくなったらって考えたことあるだろうか?

欲求不満な人は、性欲を発散する場所がなくて性犯罪が増える。
孤独な人は、寂しさを埋められる場所がなくて自殺が増える。

むしろちゃんと評価され、感謝されるべき仕事だ。

それなのに「エッチなDVD」が原因で人格自体を否定され、発揮できる能力を使えないなんて。なんてもどかしいことだろうか。動揺する気持ちをこらえ、「かしこまりました。またご縁があればよろしくおねがいいたします、」という当たり障りのない文章を送った。文字を打っている途中、画面が歪んできて気付けばキーボードが濡れていた。

相手方から返ってきたメールはとても長く謝罪や心配の意を込めて綴られていたが、全くと言っていいほど心には響いてこなかった。冷めた目でその文章を横目で流す。

「私とあなたはいる世界が違うので」

文章の中に紛れ込んでいた突き放すような言葉に深く傷ついた。

同じ場所に生まれて、こうやって繋がって、連絡もとりあえて、会って話して「一緒に秋田を盛り上げよう」と嘘でも誓いあった私たちの生きる世界が違う?そんなバカな話があるのか。「グラドル」と「地方自治」が別世界と言うのなら自治体のおじさんたち全員心の底から「エッチなDVDを今まで一回も見たことない」と言えるのか。私の前で目をまっすぐ見て言ってみろ。

ビール業界だってそうだ。私がグラビアアイドルをしているけどビールを作りたいと言うと決まって聞かれる。

『お前は「グラビア」がやりたいのか「ビールを作りたいのか」どっちだ?』

答えは『両方やりたい』に決まっている。欲張りだと言われても構わない。自分がしたいことなんだから勝ってにさせてくれ。人の人生に口出すな、出すなら最後まで付き合え。

「こっちの世界で生きていきたいならグラビアはやめたほうがいいんじゃない?」

こっちの世界ってなんですか。ビールに世界なんてあるんですか。法律で決められた枠組みがあるんですか。グラビアアイドルだってビールは飲むし、ブリュワーさんだって「エッチなDVD」見る人だっているでしょう。何が世界だ。何が業界だ。

そんなもの、糞食らえ。

私はやると決めたら両方やる。飽きるまでやる。自分がもうやりたくない、こりごりだと思うまでは誰にも止められたくない。止めても無駄だ。だって自分を最後の最後まで幸せにできるのは自分しかいないんだから。

世界がどうとか、業界がどうとか関係ない。私は私のやりたいことをやって生きるの。
私以外私じゃないのって、何処かの誰かも謳っていた。

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