彼女焦がれて、恋を焦がしたパンケーキが焦る。
違和感がのあるタイトル。
名詞を正しく入れ替えて
あげると、どうでしょう?
恋焦がれて、パンケーキを焦がした彼女が焦る。
日本語って不思議ですよね。
同じ漢字なのに読み方が変わるだけで意味合いが全く変わってきちゃうんです。
そこが日本語の美しさであり面白さなのかもしれません。
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日曜日の昼下がり。
寝不足の眼を擦り、だらだらと出かける準備をする。お気に入りのワンピースに着替え、大好きなアップルローズティーで少しずつ目を覚ましてあげる。
「唯々、海月をぼーっと眺めたい」
その気持ちだけで私は、初めての江ノ島水族館に向かおうとしてる。
まさか22年生きてきて1人で水族館に向かう電車に、それも片道1時間半もかけて乗るなんて考えもしなかった。
いつもより遠くにむかう電車に揺られながら、ふと気になった「焦」という字について調べていた。
「今月で1番焦りました。」
きっかけは、とある人からの一通の返信。
(「焦」って図体が大きくて、足が短い飼い主が甘やかして餌を与えすぎた小太りのダックスフンドみたい...)
「焦」という字に対する第一印象はそれだけ。それにも関わらず、たった30分という時間の中で私は「焦」という漢字に恋焦がれてしまったのだ。
知れば知るほどぐいぐい魅了されてしまうこの「焦」という字の魅力を、心の中にいつまでも焼き付けて置きたいと思いnoteを開いて無我夢中で書き留めた。
「焦」
画数:(12)
部首:れっか、れんが
音 ショウ
訓 こげる・こがす・こがれる・あせる・やく・じらす・じれる
意味
①こげる。こがす。やく。「焦点」「焦土」 ②あせる。いらいらする。じれる。「焦燥」「焦慮」 ③こがれる。恋いしたう。
グーグル先生に尋ねてみると、思いの外読み方の多いことに気づく。
(へえ、こげる・あせる・こがれるかあ...)
今月1番焦ったと言っていたその人に、脈略の無いまま感じたことをそのまま送る。
「焦らすと焦るって、する側とされる側両者に使えるから面白い言葉ですよね」
送った直後に、さすがに唐突すぎたかなと後悔したがその気持ちも束の間、
「らすの方はじらすとも読むじゃないですか?
つまりその理論使うともう一方はじると読むわけです」
「つまり僕は今月で1番じりました。」
と、何食わぬ顔で返してきたその人。
こうなったらもう、止まらない2人の「焦」トーク。
「あ、じらすの方の意味で送ってました(笑)じるってあんまり綺麗じゃない響きですね(笑)焦がれるとも読むし焦という字なんか好きです」
「不思議ですよね。他動詞だと響き悪くないのに自動詞だと響き悪くなるから言わない。たしかに!その読み方ありました!忘れてた!こがれるって乙だよなあ」
「日本語って意味だけじゃなくて響きも大切にしてるからそこが魅力でもありますよね!焦がすになると意味が変わってきますね」
「日本はほんとに美しいです。英語は音の繋がりを大切にしてるんですよね。話す言葉の特性で国民性の違いが分かるというのもまた面白い。焦がすかあ〜。焦がれると焦がすって同じ使い方?ですよねきっと...物か気持ちかってこと?ん?」
「たしかに。英語の曲って1音に二文字とか
つめちゃいますもんね。日本の曲はほとんどが1音に一文字だから謙虚さがにじみ出てます!パンケーキが焦がれる、心を焦がす、って逆に使うのも好きかもしれない。」
「それはそれでおもしろいですよね(笑)なかなか乙なことを言う(笑)パンケーキも焦がれるのか…パンケーキに愛着が…(笑)」
そこで電車は目的地である片瀬江ノ島駅に到着し、私は焦れったい気持ちでホームに降り立った。
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