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不登校19万人時代に、元不登校が思うこと② ─ 本当に困っていることは何か

元不登校が、不登校自身が本当に困っていることをゼロベースで言語化してみると、どうなるのか? という記事を前回書きました。

不登校の困りごととして、よく言われるのは、①学校への不安、②働くことへの不安、③居場所への不安、です。でも、これらは表層的な心配で、実はその全てに通底している本当の困りごとがあります。

結論から言えば、不登校状態では、一人で生きていくことができないから困る、ということに尽きます。具体的に言うと、社会関係資本と人的資本が不足しており、自立が難しいというのが困りごとなのです。

もう少し解説をします。社会関係資本(Social Capital)とは、簡単に言えば、他者との結びつきの頻度・強度のことであり、良好な人間関係のことでもあります。金銭的なメリットに結びつくとコネとも呼ばれます。

一方で、人的資本(Human Capital)とは、お金を稼ぐ能力のことであり、学歴・職歴・資格などとイコールで使われることも多いですが、プログラミングのスキルのように、市場経済で需要のある能力のこともさします。

不登校やひきこもり状態だと、どんなに本人がポテンシャルがあったとしても、社会関係資本がほぼゼロなので、そのポテンシャルを発揮することができず、結果として人的資本もほぼゼロに張り付いてしまい、自立が難しいのです。

そうすると、いかに、社会関係資本をゼロの状態からイチに持っていくかが重要になります。その最初の一歩を、本人が主体的に踏み出せるような、そんなきっかけが必要です。そうした最低限のソーシャル・ネットワーク(他者との人間関係)があれば、そこを起点にして、自己肯定感を確保しつつ、次のステップへと歩んでいくことは比較的容易です。

例えば、親がいくら説教をしても逆効果な場合でも、同じ境遇の友人が「やっぱり大学に行きたいから勉強しようかな」とか「そろそろバイトでも始めようと思っている」とポロっとつぶやくと、「じゃあ自分も……」となりやすいです。

哲学者のラカンが言うように、人間は他者が欲しがっているものを欲しがる(他者の欲望の対象に欲望する)存在なので、そうした欲望の感染が発生するチャンス(他者との接点)は、意外と貴重なのです。

そう考えてみると、同世代の他者とごく自然に社会的な接点が生まれる「学校」という空間は、最終的な自立のための道具として、コストパフォーマンスはよいと言えます。行けるもんなら、行っておいた方が効率的です。

なお、学校以外のルートも、茨の道ではありますが自立へとつながっていないわけではありません。また、逆説的ですが、学校に行くことがすべてではないという自由があってはじめて、学校に行く余裕も湧いてくる、というパターンもあります。

とはいえ、とりあえず他者との接点さえ無理やり作れば、あとは当事者のモチベーションが回復して万事うまくいく、なんてことは全くありません。そもそも、他者と出会うのが億劫だったり恐怖だったりするから学校に行っていないわけです。

そうすると、いかに他者との接点を安心・安全な場で実現するか、ということが重要です。これは本質的にかなり難しい問題です。他者というのは、自分と異なる存在なわけで、共感されたら嬉しいですけど、批判されたら当然傷つきます。また、親心で「よかれと思って」アドバイスすると逆効果になり、当事者からは「自分のことをまったく理解せずに、正論ばかり押し付けてくる」と恨まれたりもします。

他者との接点においては、本質的に侵襲性がつきものなのです。その侵襲性を和らげるには、相当の工夫と知恵が必要になります。

そこでYURUMIでは、安心・安全な形で他者とフラットに対話できる、オープンダイアローグというメンタルケアの技法を採用しております。オープンダイアローグがなぜ不登校状態に効果的なのかは、また別の記事で詳しく書きたいと思います。

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家庭教師のYURUMI

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