見出し画像

地すべりの動きが自由過ぎる!!のナゾを解く:新潟県北西部平坦~中山間地域【災害から身をまもるvol.24-part2】

前回は佐渡島南東沿岸部の地すべり地形を確認しました。
この地域には非常に地すべりが多く、記事では全てを確認しきれないほどです。なぜそんなにも多いのでしょうか?

地質のせいではあるけども

これまでも地すべりの話をしてきましたが、まず地質が原因なのは間違いありません。
以前紹介した福井県の地すべりは、地層の傾きの方向(西向き)にたくさん地すべりが発生していると話しました。

画像7

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

この地域の地質は、だいたい上図の茶色と黄土色です。
これらは約2800万年~2000万年前に噴火した玄武岩~流紋岩溶岩凝灰岩類です。
溶岩の場合は地面と接触している底面が粉々になっており、風化すると粘土になります。それがすべり面となり、地すべりになるパターンがあります。
また凝灰岩でも粒子が細かいものなら風化して滑りやすくなります。

ですので、地質的には地すべりになってもおかしくない。

ただし傾きの方向が逆のようなのです。
あちこちで茶色と黄土色の境界線から傾き方向を読み取ったのですが、西~北西に傾いている・・。なんです。

地すべり03

この地すべりなんかは、東に傾いている地層の面(層理面)に沿って動いているように見えるのですが・・・。


アチコチに動いている??

このまま悩んでもしょうがないので、別のも見てみます。

地すべり02_00

前回も紹介した、この地域。
実はこれら4つの地すべりは、地形の特徴から動いている方向を分析すると、なんだか凄いことになるんです(;^_^A

地すべり02

凄いですよね。本当なのか?(笑)
①・②は南へ、その斜面上の③・④は東へ動いているようです。

このナゾを解くカギは青点線の範囲です。
ここはおそらく、昔は地すべりだったのですが、今は浸食が進んでほとんど地すべり部分がなくなって上の方に少し残っているだけ(平坦地が少し)。

今は動きにくい地層だけが残り、それが踏ん張っているので動かない。
上の斜面の4つの地すべりはまだまだ東へ動きたいけど、この青点線に邪魔されて動けないんです。

では赤点線と青点線の地域では地質が違う

地すべり02_02

と思ったら、ドンピシャでした。
でも茶色の地質でも、南北隣の地域では地すべりになって動いてます。
なぜか「この地域の茶色は」動きにくいようです。

ここからは完全に私の「想定」です。

画像5

こんな感じで断面を切ってみます。

画像6

こんな断面です。

地すべり断面01

昔は黒線が地面だったとします。
地層境界(青線)は西~北西に傾いているので、このように黄土色の前に茶色が立ちふさがっています。
でも以前のすべり面(赤線)はもっと上で、茶色は先端の少しだったので黄土色の圧力に負け、地すべりとして動きます。

地すべり断面02

今はこんな感じ。
黄土色の地層は地下深くまで風化しているので、引き続き西へすべりたい。
でも茶色が邪魔で動けない!

地すべり02_03

じゃあ南へ動いちゃえ!とばかりに、①が動きます。
西へ流れていた諏訪川の谷が低まっていたので、動けたのでしょう。
その証拠に、川が不自然に南に曲がっていますよね。
①地すべりは何度も諏訪川を堰き止め、それが溢れて土石流を流し、下流に扇状地をつくります。図のオレンジ点線です。

地すべり02

①が動けば、引きずられて②が動きます。
何度も①→②と動けば地面が低くなっていくので、その分、抑えがなくなって③と④が動く。
そうすると、③から圧力を受け、①がまた動く→②→③・④・・・
というループになったと考えられます。


ナゼこんなにも自由なのか??

地すべりが長い年月をかけて何度も動くうちに、地層がグチャグチャになってしまうと、細切れになって色々な方向に動くことはあります。
でももともとの地すべり範囲の大枠があるので、上のような自由過ぎるパターンは珍しいです。
この場合の条件は地層の全体が軟質になっているが考えられます。

地すべり04

これはもう少し南の地域の地すべりです。
大きさもカタチも動いている方向もバラバラ
規則性もへったくれもないですよね(;^_^A

これは恐らく「グリーンタフ」のせいです。
詳細な説明はここでは省きますが、グリーンタフとは熱水(温泉)の作用変質して緑色になった溶岩や凝灰岩のことです。
変質するとボロボロになり、水に触れるとドロドロの粘土になります。
熱水が触れた区域だけがボロボロになるので、もとの地層分布はあまり関係なく、硬い場所と軟らかい場所にムラができます。
広い範囲で変質することもあれば、狭い範囲の場合もある。

自由過ぎる動き、カタチも向きもバラバラ・・。
熱水変質作用が原因だと考えれば納得じゃないですかね?

今回は以上です。
お読みいただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?