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彷徨う琵琶湖のルーツはどこだ?:西部平坦~中山間地域【都道府県シリーズvol.21三重県part1】

三重県は地形的特徴から11の地域に区分されます(※私個人の見解です)。
今回は「西部平坦~中山間地域」の地形と地質のお話です。

場所の確認

まずは場所の確認です
西部平坦~中山間地域は下図のの地域です。

地形区分_番号

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

西部中山間地域_市町村01

なお地域は上図のように、伊賀市名張市の一部地域です。


地形を見る

では地形を見てみましょう。

画像3

イビツな三角形のようなかたちで低まった土地が広がっています。ここが上野盆地と呼ばれています。
そして東北東ー西南西方向や北東ー南西方向の崖が多いですよね。

崖

こんな感じです。


大地の歴史

この地域の大地はどのような経過をたどって現在に至るのか?
地質図から読み取っていきましょう。

地質図02

先ほど話した「崖」は、やはり断層でした。地質図に描いた黒線です。
しかもこれらの大部分は活断層の様です。
もちろん断層の動きもこの地域の形成に関わっています。
その歴史は大きく分けて3段階。見ていきましょう!

①:中生代後期白亜紀(約8400万年~6600万年前)
日本がまだ大陸の一部だった頃。地上では恐竜が生きていました。
この時にマグマが貫入して地下でゆっくり冷えて花崗岩や閃緑岩になりました。

地質図04

赤で囲ったピンク、濃いピンク、紫です。あちこちに点在していますね。
そしてこれらのマグマが貫入する前からあった泥岩が焼かれて変成し、泥質片麻岩になっています。青で囲った茶色の地質です。

②:新生代第三紀中新世後期(約330万年前)
時代はポ~ンと飛んで約330万年前。日本は大陸から離れてほぼほぼ今の位置に落ち着いています。
この時に泥や砂、礫が溜まります。

地質図05

赤で囲った薄めのベージュや薄茶色がそれらの堆積物です。
けっこう広範囲に広がっていますよね。これらがどういう環境で堆積したか?地層の名前を言えばピーンと来ると思います。
ズバリ、古琵琶湖層群と呼ばれているんです。
そう!どうも琵琶湖はだいぶ昔からあり、今よりも南にあったと考えられています。その最南端がここ、上野盆地らしいです。

古琵琶湖層群の古地理図_川辺

古琵琶湖層群の古地理図(川辺1990より)
左が約330万年前(上野盆地北東部付近に湖があった)、右が約300万年前

ちなみに最初にお話しした断層は、古琵琶湖層群堆積している時期に何度も動いたようです。
つまり断層運動が原因で盆地ができて、そこに水がたまって湖になったようです。また断層は1つだけではないですし、盆地をつくるだけでなく、隆起(地面が盛り上がる)も引き起こすので、時代とともに「最もへこんでいる場所」が徐々に北へ移動したのでしょう。

②:新生代第四紀後期~現在(約70万年前~現在)
古琵琶湖はなくなり、河川による堆積物がメインになり、現在に至ります。

地質図06

緑色が更新世後期段丘堆積物で、水色が約1万年前~現在河川堆積物です。盆地で低まっているからか、広く分布していますね。


今回は以上となります。
お読みいただき、ありがとうございました。


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参考文献

吉川周作・山崎博史(1996)古琵琶湖の変遷と琵琶湖の形成.アーバンクボタ 37,p2-11.

川辺孝幸(1990)古琵琶湖層群-上野盆地を中心に-.アーバンクボタ 29,p30-47.

里口保文(2017)古琵琶湖堆積盆周辺の古水系変化の検討.Journal of Fossil Research,Vol.50(2),p60-70.

川辺孝幸・高橋裕平・小村良之・田口雄作(1996) 上野地域の地質.地域地質研究報告( 5 万分の1地質図幅),地質調査所,99p.

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