ナゾの苗代盆地を追え!!:広島県中央南部中山間地域【ふるさと探訪vol.15】
広島県中央南部の盆地群西部に位置する熊野盆地は、さらに細分すると南西部は焼山盆地、南東部は苗代盆地に分けられます。
(※熊野盆地の記事はコチラ↓)
今回は苗代盆地を見に行ってみましょう♬
場所は?
下図の赤で囲った範囲が熊野盆地です。
そして苗代盆地のだいたいの位置は上図の赤丸です。
詳細はナゾ
焼山盆地もそうなのですが、苗代盆地は実のところ詳細はナゾです。
そもそも私がなぜ知ったかというと、この文献を読んだから。
PDFしか出てこないので詳細は分かりませんが、URLから推測すると、おそらく「熊野町史・通史」という本で、熊野町のホームページのどこかにあるのだと思います。
そして、この文献には以下の一節があります。
これまでも日本各地の様々な地域について記事にしてきましたが、平野や盆地、小さい河川等の情報は、ネット上では見つからないことが多いです。
焼山盆地も苗代盆地も地名に残っているので分かりましたが、検索しても出てきませんでした。
もしかしたら、一部の研究者や地元の人たちが呼んでいるローカルなものなのかもしれません。
苗代盆地の地形・地質
では苗代盆地を見てみましょう。
画面の上の方に苗代町と書いてありますよね。この一帯の平坦地が苗代盆地だと考えられます。
盆地内を流れている河川(名称不明:以下では仮に苗代川と呼びます)は北へ流れています。
川も見えるように縮小しました。
上流へ行けば行くほど谷幅は狭まっていますよね。一般的な河川のイメージで見れば、最上流部が北で、南が下流に見えますが、実際は逆です。
地質図です。
盆地内の薄いベージュや灰色は約13万年前から現在にかけての河川堆積物や崖錐(がいすい)堆積物です。崖錐堆積物とは、がけ崩れ等で堆積した岩石の欠片や土砂のことです。
そして盆地の周辺の濃いピンクは花崗岩です。下流の谷が狭い箇所も含めて花崗岩一色です。大局的には同じ地質だとしても、風化の程度にはムラがあります。狭い谷のあたりは風化が弱くて硬いのでしょう。
やっぱり逆流した?
おそらく。その可能性はあると思います。盆地の南部を見ましょう。
盆地の南西に、割と谷幅が広くてゆるやかな谷地形が見えます(図の赤点線)。これは苗代盆地の外で、西へ流れる谷ですが地形が緩やかで分水界がはっきりしません。
拡大しました。画像中央のあたりです。
谷が緩やかで苗代盆地内の平坦地と標高が同レベルで、連続しているかのように見えます。
おそらくこの谷は昔の苗代川(仮称)の下流域で、苗代川は今とは逆に北から南へ・・そしてこの谷地形のあたりで西へ流れる流路だったのではないか?と思われます。
これは私の仮説ですが、そう思う地形・地質的な根拠をお話しします。
灰ヶ峰の崩壊と土砂流出
苗代盆地の南には灰ヶ峰(はいがみね)という標高737mの山があります。
この山の北向き斜面には複数の「崩壊跡」と思われる地形があり、その下にはその時に流出した土砂が溜まったことを示唆する地形があります。
赤点線は崩壊跡と思われる地形を図示したものですが、これは主なもので、他にも似た地形が散見されます。
そして青点線で囲った範囲が崩壊土砂が溜まってできたと考えられる地域です。なだらかな丘といったイメージの地形ですよね。
ここは地質図でも崖錐堆積物(崖から落ちた岩塊の堆積物)とされていますし、崩壊土砂の可能性は高いと思います。
つまり古苗代川がこれらに堰き止められ、それをきっかけにして現在の流れに変わったのではないか?と考えられます。
今回は以上です。
お読みいただき、ありがとうございました。
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