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黒瀬盆地はため池だらけ:広島県中央南部中山間地域【地元再発見の小旅行vol.31-6】

広島県中央南部の中山間地域に西条盆地があります。
全てを1つの盆地として呼ぶ場合は西条盆地と呼ばれているようですが、独立した5つの盆地として、それぞれに名前が付けられています。
今回はラストです。南東部の黒瀬盆地を見てみましょう。

場所は?

再確認しましょう。

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト)※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

中央南部中山間地域は上図の着色された地域です。

黒瀬盆地は図の④です。

地形を見る

では行ってみましょう。

北東から南西へハッキリと流路が見えますよね。
これは黒瀬川西条盆地から流れています。5つの盆地群を流れる河川の中で、2つの盆地を流れているのは黒瀬川だけです。
盆地の北部にはいくつもの扇状地が見え、一段高い台地をつくっています。
黒瀬川が主に南部を流れているため、侵食から免れたのでしょう。

黒瀬川の流路

黒瀬川は、盆地に入るところと出るところで流路が狭く、渓谷になっています。どんな状況か?拡大してみます。

こうやって見ると、西条盆地から流れ込んできているのは黒瀬川だけではありません。東の谷を流れているのは松坂川です。しかもこっちの方が谷幅は広く、黒瀬川は山の間を無理やり流れているように見えます。

これは私の仮説ですが、以前の黒瀬川は東の谷を流れていましたが、堰き止めが原因で現在の流路に変わったのではないでしょうか?

「国土地盤情報検索サイトKunijiban」より

「国土地盤情報検索サイトKunijiban」に上図の箇所のボーリングデータがありました。
数字は土砂の深さです。松坂川周辺の方が深いですよね。どうやら仮説には信ぴょう性がありそうです。

今度は下流です。なかなかダイナミックな地形ですよね!

拡大しました。落差100m以上の深い谷で、二級峡と呼ばれています。
深くて狭い峡谷ですよね。

スーパー地形アプリの機能を用いてシームレス地質図V2(産業技術総合研究所)を表示

峡谷は花崗岩(濃いピンク)ですが、その下流部に溶結凝灰岩(薄いピンク)が分布しています。
地質図から読み取る限りでは、花崗岩の上に溶結凝灰岩が載っているように見えます。つまり大昔の二級峡の場所は溶結凝灰岩が分布しており、現在は侵食によってなくなり、下位の花崗岩が顔を出した状態になったと考えられます。
やはり盆地下流のボトルネックには溶結凝灰岩が関わっているようです。

ため池が多い!

これまでに紹介した他の盆地の地形図を見て、既に感じていた方もいらっしゃるかも知れません。

これは黒瀬盆地内の地形図です。かなりため池が多いですよね?

もっと縮小して広範囲を見ましょう。さきほどの図はこの図の南西部です。
かなり、ため池が多いですよね。

以前記事にした三重県の上野盆地では花崗岩がダムのような役割をして盆地内に水が溜まりやすくなっているという説を紹介しました。

でも西条盆地の場合は違うようです。
平坦地が多いので昔から稲作が行われてはいましたが、水が少なくて困っていたようです。現存するため池の多くは、中世以降につくられたものとのことです。
熊原(2017)によれば、1800年代に広島藩の役人が計画を立てて、ある土地にため池をつくって新田開発をし、16人が移住したという記録が残っているようです。

水が少ない理由は流域面積です。
この地域の盆地は盆地外からの水の流入はなく、盆地内の水が河川に集まり、盆地外に流出しています。
黒瀬盆地は西条盆地と河川がつながっているとは言え、2つの盆地の分しか水は集まりません。
上の図は黒瀬盆地の概ねの流域を図示しましたが、周囲の山地はあまり山深くなく、盆地の面積と大差ありません。
確かに、水は少なそうなイメージですよね。

今回は以上です。お読みいただき、ありがとうございました。


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参考文献

熊原康博(2017)扇状地性段丘地形における新田開発の水利の特徴─広島県西条盆地南部,柏原地区を事例に─.広島大学大学院教育学研究科紀要,第二部,第66号,2017,p59-66.

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