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斜めだからこそ??:"地すべり地形"で頭の体操~その1-2~:埼玉県中西部平坦~中山間地域【災害から身を守るvol.34-2】

埼玉県秩父市の丘陵地には、明瞭な地すべり地形が多く見られます。
前回は、その北東の地すべり地形の断面を想定するところまでお話ししました。

ナゼこんな断面を考えたのか?

前回お見せした想定断面図をもう1度見てみましょう。

北東地すべりの断面図:スーパー地形アプリの機能で作成した断面図に筆者加筆

ここで引いた赤線は、もちろん正解かどうかは分かりません。
でも「えい!」と当てずっぽうに引いたわけではなく、それなりの地形・地質的な根拠があって描いています。

すべり面背面部

まず急角度(45度くらい)の面から説明しましょう。

北東地すべりの断面図:スーパー地形アプリの機能で作成した断面図に筆者加筆

上図の青丸で囲ったあたりの斜面の角度がポイントです。
ここは地すべりが動いて生じた頭部滑落崖(とうぶかつらくがい)です。
つまり地すべりが動き始めるときの亀裂跡であり、この亀裂に沿って地すべりが動いた後の「取り残された側」になります。
そう考えると、この斜面の角度をそのまま地中に延長すれば、すべり面の背面(急角度の面)と想定することができます。

すべり面主部

次に、すべり面の底面(緩やかな角度・・10度前後程度)の方は何を根拠にしたのか?

秩父市周辺の地質図:5万分の1地質図幅「寄居」より

あちこちに描かれている黒い線は地層(層理面)の傾斜の方向を表した記号です。これを見ると、平均的には南南東方向に10~20度傾斜しています。

地すべりの「すべり面」は一般的に、上で底面(緩やかな角度の面)と表現した部分がメインで「すべり面主部」と呼ばれたりします。
多くの地すべりのすべり面主部は、層理面を起源にしています。

この北東の地すべりのすべり面主部も層理面を起源としていると想定し、以下のように考えます。

北東の地すべり想定図:スーパー地形画像に筆者加筆

もう1度、北東の地すべりの平面図を見てみます。
地形から想定される移動方向は南東方向で、断面図はその方向でつくりました。でも層理面の傾斜方向は南南東なので20度ほどズレています。

角度は「最大傾斜方向」の断面が一番急角度で、その方向からズレた方向の断面では少し緩やかな角度になります。

そこで5度以上10度未満の範囲内で、すべり面背面(約45度の面)や地形などとのバランスを考え、このような「すべり面」を想定するに至りました。

北東地すべりの断面図:スーパー地形アプリの機能で作成した断面図に筆者加筆

公共事業で地すべりを調査する際は、このような机上の地形・地質データに加え、現地調査で得た情報を総合して上図のような想定断面図を描き、調査ボーリングの位置や深度を計画しています。

なぜ斜めなのか?

でも少し疑問に思ったのではないでしょうか?
なぜ層理面の傾斜方向ではなく、約20度ズレた方向に動いているのか?

実は地すべりの調査をしてみると、このようなパターンは多いです。

北東の地すべり想定図:スーパー地形画像に筆者加筆

もう一度平面図を見てみましょう。
南南東ですと、地面がありますよね。これがストッパーになり、南南東へは動けなかったのです。南東であれば河川(荒川)の侵食で地面が低くなったため、動くことができた。
逆説的に言えば、本当は南南東に動きたかったのですが、そこは地面が邪魔している。そのため低い南東方向に動かざるを得なかったと言えます。

斜めだから地すべりになった?

きちんとした学説ではありませんが、私の経験からそう思っています。
おそらく土砂災害に関わっている技術者で同様に考えている人は多いのではないかと思います。
どういうことかと言いますと・・

層理面の傾斜方向へ動けるような地形条件の場合、すべり面が比較的急角度になるため、あっという間に動いてしまい、現在まで残らない
斜めに動かざるを得ない地形条件だからこそ、すべり面が低角度な分、ジワジワと動くこととなり、長い年月の間に地すべりとして存在し続けている。

筆者の仮説

今回は以上です。お読みいただき、ありがとうございました。

次回予告!

引き続き、地すべり地形を分析していきます。次回のお題を出しておきますので、自分なりに事前にアレコレと考えておくと楽しいかも?



参考文献

牧本 博・竹内圭史(1992) 寄居地域の地質.地域地質研究報告( 5 万分の 1 地質図幅),地質調査所,136p.

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