川がつながってるようで、つながっていない?:大阪府南部山間地域【流域を考える旅vol.8】
大阪府南部山間地域は白亜紀の海の地層や花崗岩類などでできています。そして東北東-西南西方向に伸びる断層、中央構造線(※詳しくはコチラ)。
和泉山脈も、その断層に沿うように伸びていますが、東北東-西南西方向は果たして山脈だけでしょうか?詳しく見ていきましょう。
地形の再確認
では早速、大阪府南部の山地を見てみましょう!
コチラの⑦が対象地域です。
この縮尺でも分かりますね。
山脈だけではなく、中を流れる川で東北東-西南西方向のものが見えます。
少しアップにしました。見えるでしょうか?
赤点線でなぞってみました。
多少波打っていたりもしますが、だいたい東北東ー西南西方向ですよね。
この中でも特に北東の谷地形が目立ちます。
アップにしてみました。
やはり東北東ー西南西方向に谷地形が伸びているように見えます。
今回はこの谷地形を詳しく見ていきたいと思います!
この谷地形は泉佐野市、熊取町、貝塚市、岸和田市の南部です。
まっすぐな谷地形に見えるけど??
そうなんですよ。
アップにしてみたら、「アレ?」となりました。
見てみましょう!
どうも、1本の河川ではないようです。
さらに拡大!
ビックリです。東北東ー西南西に流れているのは、いくつかの河川の一部、または支流のようです。
それらの集合を遠目に見ると、まるで1本の谷のように見えるということなのでしょう。不思議ですね。
川をなぞってみたら、何とこんなんでした!!!
濃い青線が南北方向の川で本流がメインです。
そして水色は支流。なんと、東北東ー西南西方向の谷地形は全て支流!!
まさか、支流の集合体だったとは・・。
これは意外でした。
かなり分かりやすい真っすぐな地形でしたので断層でもあるのかな?と予想してたのですが、断層は地質的に弱いので川が流れ始めれば一定以上の距離を断層沿いに流れるハズ。
この谷地形にはどんな地質的なヒミツがあるのでしょう??
地質図を見てみよう!
では地質図を見てみましょう。
スーパー地形アプリ上でシームレス地質図V2をかぶせました。
例の谷地形の場所をお示しします。
なるほど!地層境界が地形に影響していたようです!!
谷地形の南北とも中生代白亜紀後期(約7200万~6600万年前)の「和泉層群」とよばれる海の地層です。
時代は同じですので、あとは岩石の種類や性質の違いで硬さが変わります。
谷地形の南の青色は泥岩、北のオレンジ色は礫岩です。礫岩は石ころ(川原の石のような石)の集合体ですから、泥が固まった泥岩よりも硬いです。
この硬さの違い(削れやすさの違い)で谷地形ができたのでしょう。
谷地形ができるまで
では地質の違いで谷地形ができるまでを考察してみましょう。
分かりやすくするため、単純なモデルを考えます。
このように、真っ平な地形があったとします。
でも微妙に手前に傾いてるため、水は全面を一様に手前側に流れると仮定します。この時、正面から見た断面は下図のようになります。
地質は同じなので、一様に低くなっていきますよね。
では地質が違ったら?
地質図によれば、このあたりの和泉層群は南~南東へ傾いているようです。
上の断面図を参考にしました。左が北で礫岩(オレンジ)、右が南で泥岩(青)です。
礫岩の方が硬いので、こうなりますよね。
でも実際には、泥岩の南にさらに緑(砂岩泥岩互層)や黄色(砂岩)が分布しています。
砂岩泥岩互層は砂岩と泥岩が交互に重なった地層です。砂岩の方が泥岩よりも硬いため、砂岩が混ざっている分、泥岩よりも硬いです。
ということで、このように南に砂岩(黄色)を追加してみましょう。
こうなりますよね。
そして・・同じ地層が分布する方向は概ね東西なので、硬さの違いによる地面の高さの違いは南北方向で差が付きやすくなりますよね。
そのため水は南北方向へ流れやすくなり、結果として東西方向は本流ではなく、支流になったのでしょう。
泥岩の方が低くなったので水が流れやすく、各河川の支流がこの場所にできやすかったということなのでしょう。
地形図をあらためて見直すと、確かに谷地形の南側(泥岩)の山の方が低くてノペッとしています。これを専門用語で差別浸食(さべつしんしょく)と言います。
今回は以上となります。お読みいただき、ありがとうございました。
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参考文献
市原 実・市川浩一郎・山田直利(1986)5万分の1地質図幅「岸和田」、地質調査所.
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