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太古の温暖化でできた石炭層?:南部平坦~中山間地域【都道府県シリーズvol.17長崎県part1】

長崎県のプロローグでは島しょ地域も含め、9つの地域に区分しました(※筆者独自の見解です)。
ここでは「南部平坦~中山間地域」の地形・地質を見ていきます。

場所の確認

長崎県は大きな島が多い県です。

長崎本土地形区分_02

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

島しょ地域が⑦~⑨の3地域で、九州本土の県内は6地域になります。

長崎本土地形区分

この中の⑤地域が「南部平坦~中山間地域」です。

位置図_市町村

長崎市東部、諫早市南部が該当します。


どんな地形?

ではでは行ってみましょうか~♪

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地域範囲

だいたい赤点線で囲った範囲です。
西端では南北方向に谷が入っていて、南北の海それぞれに川が流れているようです。でもパット見では源流が分かりません。
是非、詳しく見て源流を探ってみたいですね。

全体としては西に高めの山地が多く、東は丘陵地帯といった印象です。


地質は??

またしても地質アルアル発動です(笑)
こんな小さな地域なのに、20万分の1地質図の境界になっており、真っ二つです(;^_^A
さすがに見づらいので、今回はスーパー地形アプリでのシームレス地質図V2(※元データは産業総合研究所)を使ってお話しします。

画像6

この地域の地質は3つの時代に大きく分かれます。

①:新生代古第三紀始新世(約4800万年~3400万年前)
始新世(ししんせい)とは、恐竜が絶滅した後の時代の新生代古第三紀(しんせいだいこだいさんき)の2番目の時代です。
この地域の地層の中では一番古く、この地層を土台にして新しい地層が上に載っている状態です。

地質図_古第三系

ちょっと大ざっぱに囲みましたが、赤点線内の薄い黄色です。
これらは砂岩・泥岩・礫岩などの堆積岩で、汽水~浅海域の地層です。
また石炭層もあり、長崎周辺で採掘された石炭この地層の石炭だそうです。つまりここだけではなく周囲に広く分布しているのですね!

ちなみにこの時代は恐竜絶滅の原因となった隕石衝突後のしばらく寒冷化した後に、初めて温暖化した時代です。しかも急激に温暖化が進んだとか。
そのため植物が大量に生い茂り、それが石炭になったのでしょう。

②:新生代第三紀中新世後期~鮮新世(約720万年~258万年前)
①の地層を土台として火山が噴火しています。
マグマの成分は玄武岩~安山岩で、溶岩類が噴出しています。

地質図_新第三系

赤点線の範囲です。この地域の中の高い山地はこの玄武岩・安山岩溶岩類の地層が硬いため、浸食から残った山だったのですね。

③:新生代第四紀更新世~完新世(約258万年~現在)
有喜(うき)火山岩類と呼ばれる火山噴出物でできた地層です。

地質図_第四系

赤点線で囲った範囲です。
大きく分けて茶色と白があり、茶色は安山岩の溶岩類、白は火砕流泥流堆積物の地層です。
火山活動は約77万年前までには終わり、今は浸食が進んでいるようです。

また赤丸で囲った範囲は同じ時代の長崎火山岩類と呼ばれる地層です。
この地層のメインは西の⑥地域ですので、またの機会にお話しします。

いかがでしたか?
過去の温暖化によってできた石炭を人類が資源として利用し、再び温暖化になってきていると言うのは何とも皮肉な話ですよね。

以上となります。お読みいただき、ありがとうございました。

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参考文献

星住英夫・尾崎正紀・宮崎一博・松浦浩久・利光誠一・宇都浩三・内海 茂・駒澤正夫・広島俊男・須藤定久(2004) 20万分の1地質図幅「熊本」、産業総合研究所.

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