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なぜゴルゴ13は人を殺すのか

昨日の記事では、どんなあそびにもゲームのルールというものがあり「自分なりのゲームのルールをつくって遊べるのが趣味のおもしろいところ」だということを書いた。

あそびのルールは自分で勝手に変えられるところがおもしろいんだけど、仕事には隠れたルール、暗黙のルールが存在し、それに気づくのにけっこう時間がかかることが多い。

ぼくはフリーランスになるにあたって簿記学校へ行った。なぜ行ったのかとというと、自分でもよくわからないのである。尊敬していた人が会社を辞めて起業するにあたり、まず簿記学校に行ったという話を聞いていたのでマネをしただけである。彼がなんで簿記学校に行ったのかは教えてくれなかったんだけど、行ってみればわかるだろうと思っていったのだったが卒業するまで結局わからなかった。

簿記学校では、なんのために簿記を勉強するのかは教えてくれない。なぜならわかりきったことだからだ。みな経理の仕事に就いてカネを稼ぐために簿記を習っているのである。つまり「簿記=金を稼ぐこと」というのがゲームのルールだった。

しかし、ぼくはフリーランスになってから簿記学校にいったので就職する気はそもそもない。つまり「簿記=カネを稼ぐこと」というルールでやっていなかった。では、ぼくは一体何のために簿記を習っているのだろう?

なんのためかがはっきりわかったのはフリーランスとして確定申告をはじめてやった年だった。

簿記はカネを稼ぐためにやるのではない。税金を払うためにやるのである。簿記とは税金の計算方法を勉強しているだけだ。お上に年貢を納めるために、わざわざカネを払って税金の計算方法を勉強しているのである。これが簿記の真のゲームのルールである。

しかし、会社の経理担当者も税理士も、みな他人のカネの税金を計算してお金をもらっているから、まるで簿記=お金をかせぐスキルみたいにおもわれがちだが、ほんとうは税金の払い方を勉強しているだけなのだ。

ムダに払わないで済む方法もわかるようになるのでまんざらカネにならないわけじゃないけど、簿記そのものはあくまで年貢の納め方を習っているだけでしかない。簿記がカネを稼ぐためのスキルになるのは、あくまで他人のカネの計算をしているからである。

これは、簿記だけだはなく、ぼくが現在やっている翻訳というしごとにもあてはまる。翻訳はカネを稼ぐ手段のように思われがちだけど、そもそもは海外の情報を国内の情報に変換するためのものだ。それを他人のためにやったら金にかわるというだけである。

他人のためにやったらカネに変わるのは、簿記や翻訳だけではなく、クルマの運転でもエッチでも他人のためにやったらカネに変わる。前者はタクシーとよばれ、後者はパパ活とよばれる。ようするになんであろうと赤の他人のためにやったらカネに変わる。

しかし、クルマを運転する本当の理由は長距離を移動するためであり、エッチをするのは気持ちよくなるためである。翻訳をするのは外国の情報を仕入れるためであり、簿記は税金を払うためである。ちなみに料理をするのはめしを食うためであり、カネに変わるのは赤の他人のめしをつくった場合にかぎられる。他人のために人を殺すのがゴルゴ13なわけだが、人が人を殺すほんとうの理由は憎くて邪魔だからである。

「簿記とは税金の払い方の勉強です」と最初に教えてくれればこんなに回り道をしなくて済んだのだが、自分で気づくのにはずいぶん時間がかかった。なんのためにやっているのかと聞かれて「カネのため」とだけ考えているとそれは「他人のため」と言っているのと同じことで、そこで思考が停止してしまっていたら人生の主役になれない。

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