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【短編小説5】お嫁
高校の時の同級生に「佐竹しおり」さんという女の子がいた。
同じクラスで出席番号は私の次。
バレー部でいわゆる陽キャ。彼女がいるだけでパッと場が明るくなり、周りのみんなが笑顔だった。
友達でもないので特に話をしたことはないけど、出席番号が次なのでクラスでの班分けは大体一緒だった。
家庭科実習の日に、みんなで作って最後は食べる時間があった。
私と佐竹さんは同じ班で、みんなと同じく「大変だったね」とか「家庭科実習楽しいからずっとしてたいね」とか話をしているときにふと佐竹さんは私の手を見た。
「お箸、上の方で持つんだね」
私のお箸は上側を持っている。
一方佐竹さんのお箸は下側を持っていた。
「お箸を上の方で持つと、家から遠いところにお嫁に行くんだって!しおりは下の方だから家から近いところなんだ」
そういって笑う彼女が眩しかった。
まだ結婚なんて考えたことなかった。24歳で結婚して26歳で子供ができるかなとぼんやり考えていた子供だったのに。
なんだか佐竹さんがとても大人に感じた。
佐竹さんとの思い出は他には思い出せないのに、この前急に思い出した。
彼からプロポーズを受けているときだ。
高校時代の私のライフイベントによると、26歳で子供ができているはずだったのにもう32歳になってしまった。
こんなに幸せでいいのかしら。
佐竹さん、私結婚するよ。
実家から670kmも離れている東京で。
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