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【短編小説1】チャーシュー

好きな人とラーメンを食べに行った。
12月の雨の日に。
彼が見つけた家の近くのラーメン屋さん。

家から近いというので土砂降りの中歩いていくことにした。
一人ずつ傘を差しているのに、手を繋いでいるのでその部分だけ濡れている。

食べたラーメンはチャーシューが2種類乗っていた。
お互いに美味しいねと言い合った方のチャーシューを、彼が一枚くれた。

これは私の持論だが、自分が食べて美味しいと思うものを渡す行為は愛だと思う。
ここがおいしいと父からもらった魚の頬の部分。
母が自分の分を分けてくれた熟した桃。
大人になって感じる愛。

嫌なことに目をつぶり、こんなところに愛を感じる自分は、愛に酔っていて気持ち悪い。

私たち、初めて寝てからもう1年経つのに。
チャーシューはくれるのに、付き合ってくれない。
私の好きな人は、そういう人。

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