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エンパナーダとシロナガスクジラ

22 Jan 2021 マーケットで買い物をした後そのまま歩いて友達の家へ向かう。明日から公共の場で指定される医療用マスクを既につけている人が目立った。お使いを頼まれていた卵とお土産のぶどうとチョコレートを片手にぶら下げて、ベルを鳴らし扉を開けて階段を5階分登る。

ドイツの集合住宅には部屋番号がなく階段をぐるっと登るたび二つのドアが現れる。どれも全く同じ見た目で、自分の家のドアでさえ時々見過ごして登りすぎたり、一階下の部屋に鍵を刺そうとしてしまい、小指の先ほどの小さいネームプレートを見て違う!と気付く事が何回かあった。場所によっては道に面した入り口を抜けた後、左右、さらに中庭の正面左右など、一つの住所にいくつも建物があり、一度訪れた家でも何回かは迷う。今は頻繁には行けないが、色んな家に遊びに行き建物の違いを見るのはけっこー楽しい。

階段を登りながら既にミートソースのいい匂いが漂ってきた。半分開いて待つドアから中に入ると、左のキッチンからより温かみを帯びた香りがする。フライパンいっぱいに煮込まれたトマトとひき肉のソース、今日はピザを作ると思っていたがスぺイン発祥の餃子のようなミートパイのようなものを作ると聞き、4歳の子が得意げに料理名を教えてくれた。

黄色い生地を伸ばし型抜きし、また伸ばした生地にミートソースとピザ用チーズを乗せ、包んで端をフォークで潰す、または生地が薄い場合は指でくるくるとつなぎ目を作り、溶いた卵を刷毛で塗りオーブンで焼く。餃子の一回り大きいくらい、もしくは大きい餃子くらいのサイズ。

様々な餃子論が存在するように、これを食べる国にもオーブンか揚げか、生地にラードやオリーブオイルなど何を練り込ませるかなど派閥があるらしい。

第一弾目が焼き上がり、お皿にたっぷり盛りつけてみんな席に着く。半分に割ると湯気がたった。鉄は熱いうちに打てと一口かじったら熱々のひき肉にしみたトマトソースとチーズで天井の一部がやられた。

それでも少しずつ食べるとサクサクとしっとりの中間のような生地とソースとチーズがとても美味しい。子供はアチーっと大げさに言い笑いながら少しづつ齧ってはたまにチーズが伸びて、それを楽しそうに食べる。小さい子が持つとクリームパンくらい大きく見える。前に同じ量のチョコレート(2カケ)を一緒に食べた時も、直後に明らかなシュガーハイで踊っている姿を見て、たった2カケでも4歳の子供の体には影響するんだ、子供は小さいんだ…と改めて驚いたのを思い出す。それと同時に前日に寝れずに見ていた記事で〝100トンのシロナガスクジラは一日に4トンの食事を続け八ヶ月間は蓄えた脂肪だけで生活する〟という一文も思い出し、何事もバランスなんだな、と思った。

といいつつ第二弾の焼き上がり具合も美味しくてついもう一個と手が伸びてしまう。胃袋のバランス点を優に超えるほど食べた。食後のお茶をもらいながら会話をして、食べすぎたから歩いて帰った。次はポップコーンを種から弾けさせようと思う。