見出し画像

内定をもらうため、演じないとダメですか?

今の職場環境が辛い人は、「今すぐにでも会社を辞めて、転職したい!」と思う気持ちは、痛いほど、苦しいほど、よくわかる。毎日手を抜かず働き、合間を縫って転職情報をチェックし、応募書類を作り、面接の日程調整をするのは、”大変”どころの言葉では足りない。転職活動は、”セルフプロデュースの一大プロジェクト”を一人で回していると言っても過言ではない。

そうした中で、不合格の通知をもらったりすると、夢や希望が崩れる。日々の仕事も忙しく、心身ともに疲労困憊する。判断力も低下してくる。そんな時に限って、とりあえず応募した会社の採用が進んだり、気の進まない内定をもらってしまったりすることもある。「今の会社ではもう続けられないのは分かっている。かといって、ここの会社に転職することは正解なのだろうか?」と悩む。誰にも相談できない。でも、これも何かの縁?せっかくのチャンスだし、自分のことを認めてくれた企業だから、きっといい会社かもと、前向きに希望を見い出す。

私は常々思う、”転職”と”結婚”はよく似ている。例えば、自分が結婚したくても、相手がその気になってくれないことはしばしばある。その逆もしかり。たくさんの人にプロポーズされても、結婚できる人は一人だけ。場合により、全く興味のない人にプロポーズされることもある。更に、縁と運とタイミングと言う、自分ではコントロール不能な、やかいな要素も絡む。

やりたいこと、行きたい会社があっても、自分が採用されるとは限らない。内定をたくさんもらっても、入社できるのは1社だけ。行きたいと思えない会社から内定をもらってしまうこともある。”転職における相思相愛”というのは、自分自身の経験でもあまりないし、企業の採用業務をしていても、めったにお目にかかれることでもない。人生とは実に無情だ。

私は独身だが、結婚がゴールではないことは知っている。結婚すれば、他人と暮らしていくことで、色々な軋轢が生じるだろうし、次は子供、二人目、家を買う、PTA、子供の反抗期、親の介護などなど。。。問題は山積み、楽しいことばかりではない。むしろ、独身の方が、親の介護以外の問題に直面しなくていい。だが、その代わりではないが、喜びや哀しみは一人で消化しなくてはならないし、具合が悪くなったら一人で病院に行かねばならないなど、別の問題もある。つまり、理想の条件の人と結婚しても、人生は決して安泰ではない。

「内定をもらう」ことは、”転職活動におけるゴール”ではあるが、人生の”通過地点”に過ぎない。働き、生きていくことは、ずっとずっと続く。転職活動期間より、入社してからの方が、長くて、色々あるだろう。また、通勤時間や仕事や職場の人間関係を考える時間なども含めると、心身ともに関わる時間は長い。だからこそ、自分らしさを損なわず、働いて、認められて、それに見合うためのお金をもらいたいと思うことは贅沢なことでしょうか。

だが、現実は、色々なことを我慢し、やり過ごし、だんだんと心が、体が、蝕まれていく。ブラック企業、ハラスメント、サービス残業。こうしたネガティブのスタート地点は、”採用”なのだ。企業が都合のいい悪いことを隠し、いいことだけを強調する。そして、いい人、優秀な人と、理想の社員像を押し付け、応募者に過度な期待を抱く。応募者は、仕事を得るため、その期待に応えようと、必死になる。

企業が望むような人物を”演じ”なければ内定がもらえない今の採用のしくみ、私は本気でなくしたい。

追記:ほのかさんのイラストを使わせていただきました。ありがとうございました。


ここから先は

0字
日系、外資、大手、ベンチャー、様々な企業の採用の携わってきました。そして私も自信も、応募をして何度も不合格、不採用をもらいました。採用する側、採用される側、両方の視点から、「それって変じゃない?」と思えることをお話しすることで、仕事探し、キャリアの悩む方の心が少しでも軽くなることを願っています。

応募書類を出しても通らない、面接を受けても合格しない。何がいけなかったんだろう?どこがダメなんだろう?と悩む方。それはあなたのせいばかりで…

「人生経験の引き出し」がいっぱいあります。何か悩み解決のヒントになる話が提供できるかもしれません。