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”業界経験者”が、落とし穴になることも

益々採用は難しくなっている。昭和のように、「募集したら応募者がたくさん来てその中から最適な人を選ぶ」そんなプロセスで回せている企業がどれだけいるだろうか。難しくなっている原因は色々あるが、常日頃から採用業務をしていて、「業界経験者」という応募条件がその一つと私は考える。

例えばマーケッターを採用するならば、マーケティングのイロハはもちろんこと、データ分析力、PCスキルは必須だ。そして、多くの企業が、”同じ業界の経験”を応募条件ところが多い。不動産会社なら不動産業界の経験、食品会社なら商品業界の経験と言うように。その最大の理由は、

教育の手間を省くため

だ。必要なスキルに加えて、それぞれ業界の特性、動向や慣習に加え、ライバル会社の内情などに詳しいければ、業務上の戦略が立てやすくなる。だが、業界のことというのは、一般的なスキルと違ってテキストが存在するものではなないし、仮にあってもそのテキスト通りに研修をしてマスターするものではない。日々の業務を通し、”なんとなく”知り得た情報の積み重ねが”業界に関する知識”であることが多い。つまり、業界未経験者にきっちり教える方法が確立されていないし、体系的に教えられる人もいない。”親方の背中を見て盗め”のような、実態のないもの。だから、その手間を省くため、業界経験者を取りたがるのだ。

だが、そこの固執すると、いつまで経っても採用出来ないことも事実だ。

第一、同業他社に転職すると、バレやすい。応募したこと、スカウトされたこと、選考途中で上司や人事に伝わる事がある。そうなれば、今所属している会社にも居づらいし、転職先でも肩身の狭い思いすることもある。また、”業界のことはよく知っている”自身が仇になり、転職先で「前の会社の時はこうでした」と、新しい環境で前の会社の習慣などを引きずり、周りから煙たがられ、孤立することもあるだ。せっかく高いスキルや貴重な業界経験があっても、実力以外の要因で、その能力を発揮できないのは、”中途採用あるある”だ。

ならば、業界経験よりも、物事の飲み込みが早く、再現性や汎用性の高い未経験者の方が、早く即戦力になる場合もある。数枚の経歴書や1時間程度の面接で、理解力や行動力を見極めるのは簡単なことではない。理解力を測るテストをするのも一つだが、その日のコンディションにより、テストの良しあしにばらつきはある。「あなたは理解力が高いですか?」とストレートな質問をして「No」と答える人はいない。理解力の高さがうかがえる過去のエピソードを話してもらうことも出来るが、ホントかウソか、確かめることも難しい。人間はいくらでも嘘をつく。特に面接では自分を”盛る”。

だが、行動はなかなか嘘をつけない。例えば、業界特有の用語を使って説明をした時に、「〇〇とはどう意味ですか?」と質問が出来るか。そして、それを自分の言葉で説明し直し出来るか。それを自分の経験業界などに置き換えて話が出来るか。こうした反応/行動で、理解力の早さ/高さは十分測れる。そのためには、どんな質問をして、どんな反応だったら、合格か、不合格か、事前に十二分に練っておくことは必須だ。

業界経験=即戦力、そんな思い込みを一旦外してみては?

追記:なかそねさんのイラストを使わせていただきました。ありがとうございました。

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