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内定はゴールではない

自分のこの先のキャリアに悩み、転職活動をしていた30代後半、カナダに留学する前のことだ。とある会社の面接前、人材紹介会社の男性担当者に、「メガネはしないで面接に行ってください。その方が女性らしさです。それと、英語を勉強していることはアピールしないでください。外資系を希望していると思われます」と言われた。

人材紹介会社のプロとして、候補者に面接合格のアドバイスをしたのだろう。だが、私はこの担当者に猛烈な嫌悪感を持った。確かに私の要旨は、決して可愛らしいとか、女性らしいとは言い難い。きちっとしているとか、真面目とか、固い。それは自分でもわかっている。だが、きちんとした印象が私。英語はもともと興味があって、英語を使って仕事ができたらかっこいいだろうなと思って、英会話学校に行き始めた私。それの何がいけないのか。女性らしい、英語なんかに興味のない人が欲しいなら、私の何故その会社を紹介したのか?

それは10年以上の時が流れ、企業の採用の仕事をしている。この経験から、結局私は、

「面接官はどんな人ですか?」

「これまで書類が通った人/面接が合格だったのはどんな人ですか?」

この手の質問に積極的に答えないようにしている。何故なら、その面接官の人柄、傾向を候補者に知ったら、その”正解”を求め、応募者自身の個性を隠して、偽り、「内定をもらう」ことが目的になってしまう。「内定」はあくまでも働く上での”通過地点”だ。入社してから1日8時間以上いる場所で、自分は、ずっと、書類で、面接で偽った自分をずっと演じ続けなければならない。だって、面接官は、その偽った自分を気に入って採用を決めたのだから。

「とりあえず、内定を獲得しなければ何も始まらない。あとは入社後、何とかなる」という考えもあるだろう。採用した側は、「面接のときは印象が良かったのに、働き始めたら全然違う」「なかなか成果が出ない、期待してたのに」と、ため息をつく。入社した側は「面接の時と話が違う」「所詮、会社なんて、入ってみないとわからない」。そんな言葉を残して会社を去っていく。

採用に携わる者は、人の人生を左右する立場にある。言い換るなら、「人の人生」を預かっている。人のスキルや経験だけを切り取ってみることなどできない。

追記:ovestedesignさんの画像を使わせていただきました。ありがとうございました。

「人生経験の引き出し」がいっぱいあります。何か悩み解決のヒントになる話が提供できるかもしれません。