【画数の少ないところに嫁ぐな】

昭和一桁生まれの父は、私が物心つくか、つかない頃から、私に呪文のように言ったいたことがある

苗字の画数の少ないところに嫁に行くな

私の苗字はあまり一般的ではなく、正しく読んでもらえないことが多い。画数自体は、20を超え、特別多いわけではないが、少ないわけでない。要するに、覚えにくい苗字だ。それ自体は仕方がないが、まだ小学生で、結婚はおろか、恋愛だって、初恋だってよく分からない子供の時分から、父は私や姉に言い聞かせていた。

父曰く、「女性は、苗字の画数のところに嫁ぐと、幸せになれない」。この理論で行くと、画数の多い苗字に生まれた女の子は、例えば、苗字が30画あったら、それ以上の画数の多い苗字を持った男性の中から、相手を選ばなくてはならず、結婚して幸せになれる確率が、少ない苗字の人に比べて低くなる。もちろん、そんな話は心から信じることはなく、「はーい、わかりました」と答えてその場を乗り切っていた。

大人になり、結婚を意識することもあった。だが、たいていの相手の苗字は、私の苗字より画数が少なかった。だからと言って、結婚に躊躇したことはなかったが、画数を確認する自分もいたのも事実だ。そして思う、母の苗字より、画数の多かった父の家に嫁ぎ、幸せになったのだろうか。

追伸:mrfruitsさんのイラストを使わせていただきました。ありがとうございました。

「人生経験の引き出し」がいっぱいあります。何か悩み解決のヒントになる話が提供できるかもしれません。