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【短編小説】ありふれた休日こそ愛せよ

今年の夏は、特別に暑い。

35度越えの猛暑日が連日私たちの体力を奪っていった。

夏野菜を食べて、紫蘇ジュースを作ってみたりして、適度に運動をしても、夏バテにならないはずがない。

夕方には、昔は『夕立』って言われていた通り雨をはるかに超えるほどの雨が、帰宅途中の私に襲いかかることも多い。

家に着く頃にはズボンの裾はびしょ濡れで、いつから日本はこんなにも住みにくくなってしまったのだろうと、どうしようもない事に頭を悩ませる。

それでも、明日は休日だと言うことが、そのモヤモヤを吹き飛ばしてくれる。


平凡な毎日を過ごし、平凡に働き続ける。

特別これといった趣味もなく、熱中できることもない31歳。

1つだけ自慢できる事をあげるとしたら
『休日をこよなく愛している』と言うこと。


誰よりも休日を楽しめる自信がある。


前回の休みには、美容DAYを満喫した。
朝早く起きて地下鉄に乗り、脱毛に行って、休む間もなく美容院に行き、髪サラサラのウキウキ気分のまま買い物に行った。

予約時間カツカツで、結局、美容院には小走りで向かった。
家に着いた頃には15時を回っていたけれど、満足感が私を満たしてくれる。



明日は、どんな休日にしようかな。

そう考えながら撮り溜めておいたドラマを見たり、録画した金曜ロードショーを見たり、気になっていたアニメを一気見するのが、休日前夜の楽しみだ。


休日の朝は、特別に早く目が覚める。

目覚まし時計がなくたって、遠足の日の朝は早く目が覚めてしまうように、体が動きたがっている。

カーテンを一つにまとめ窓を開けると、連日の猛暑を忘れさせるくらい涼しい風が部屋に流れ込んだ。

ベランダを見ると、一面が水浸し。

どうやら昨夜降った雨のおかげで、今朝は気温が下がっているらしい。


布団のシーツとパジャマを抱えて洗濯機に向かう途中、朝ごはん用のお湯を沸かす。

洗濯機のスタートボタンを押すと、ピッと音が鳴り仕事を始める。

お気に入りの洋服に着替えて顔を洗い、化粧水を丁寧に染み込ませる。

朝ごはんは、昨日仕事終わりに買っておいたパン屋さんのカレーパン。
ちょっと贅沢に、ビーフカレーパンを選んだのは、私へのご褒美。

沸いたお湯でコーヒーを淹れる。
最近は暑くて飲めなかったホットコーヒーを、今日はいただくことにしよう。

豆をゴリゴリと挽きながら、次のお給料が出たら新しいミル買おうかな、なんて考える。

挽き終わったコーヒー粉をフィルターにサラサラと流し込む。
そういえば最近、ミルのお手入れをサボっていたから、朝食を食べ終わったらお手入れをしてあげよう。

お湯をポトポトと丁寧に注ぐと、コーヒーが一気に香りたつ。

いつものコーヒーマグと、いつもの食器にカレーパンが1つ。

おしゃれのかけらもないけど、この光景が私にとっては輝いて見える。


カレーパンを食べてみると、中に牛肉がゴロっと入っていて、パンの中からこぼれ落ちそうになる。

ほろほろになっている牛肉の旨味がルーにも染み込んでいて、その旨味をパンが包み込んで閉じ込めている。

油がついた指を避けつつマグカップに手を伸ばし、コーヒーを口に運ぶ。


そうこうしていると、ピーピーと機械音が響く。
どうやら洗濯機が一仕事終えたようだ。

洗濯物を持ってベランダに出ると、爽やかな空気に秋を感じる。

このまま涼しくなってくれたらいいのに。

そう思いながら洗濯を干していると、直射日光が私の足元をジリジリと攻撃し、すぐに足先は熱を帯び始めた。

どうやら秋がやってくるのはもう少し先みたい。

急いで洗濯を干し終えて部屋に戻る。

キッチン前やお風呂場のマットをかき集め、洗濯機に第2陣の洗濯物を放り込む。

もう一仕事、頼むよ。

スタートボタンを押すが、反応がない。
もう一度。次は少し強めに押してみる。

…ピッと音を鳴らし、仕方なさげにゴウンゴウンと回り始めた。


部屋に戻り、隅々まで掃除機をかける。

カーペットの上は、コロコロを使って納得がいくまで髪の毛や埃を絡めとる。

床がきれいになるだけで、部屋が明るくなるような気がした。


ゴロンと寝転んでみると、床がひんやりしている。

さっき熱を帯びた足をフルーリングの上に置くと、足先から冷えていくのがわかる。

このまま寝てしまうのも、また休日の贅沢かな。


洗濯が終わったら洗濯物を干して、お化粧して、買い物して、昨日の夜に見始めたアニメの続きをみながら家計簿をつけておやつにして、それから、それから…



頬を撫でるように吹き込む風に、目が覚める。

遠くからピーピーと終了の合図が聞こえた。

知らぬ間に眠っていたみたい。

時計に目を向けると、時刻はまだ8時43分。

飲みかけのコーヒーは少し苦くなってしまったけど、少し本でも読んでから買い物に行くことにしよう。




こんにちは、移常 柚里です。

夏の夜は窓を開けたまま寝る派なのですが、今朝はお布団をかぶってちょうどいいくらいの気温で、最高に気持ちのいい目覚めでした。
(昨日が雷雨と窓に叩きつけられる雨音に起こされたので、そのギャップもすごくありましたね)


こんな日に運動会があったらちょうどいいくらい、気持ちのいい朝です。


昨日までのモクモクと積み上がった重みのある雲は1つもなくて、サラサラとした軽めの雲が流れていました。

朝ご飯を食べて再び空を見ると、今度は羊雲になりそうな雲がちょこちょこと群れをなしてやってきています。

9月が近づいてきているんだな。
これくらいの気温が体にも心にも優しいのにな。
なんて考えていました。


明日からお休みの方は、どうか今日の夜を思う存分、お楽しみください。

では、素敵な休日を。

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