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Yuck / Yuck

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昨日はとても嫌なことがあった。時々自分が何のために生きているのか分からなくなり、自暴自棄になりそうだった。まあ、そのせいで昨日は記事が書けなかったのだが、今日は少しだけ力を振り絞って書く。

これもTaiko Super Kicksを教えてくれた友人が私に教えてくれたバンドだ。たしか大学1年生の頃だっただろうか。
シューゲイザーにカテゴライズされることも多いイギリス出身バンドで、ノイジーな楽曲が多い。音質が良くない曲もちらほら見受けられる。
My Bloody ValentineやRIDEほどシューゲイザー感のある曲は少ないのだが、それでも本作の中にもそのような楽曲はある。度々My Bloody Valentineと比較されることがあるが、音の趣向性だけ見るとSwervedriverの『Raise』の方が近いと思ってしまう。あとグランジに近い。ローファイと例えられることもしばしばあるが、それは最近の音楽シーンで用いられる意味合いと少し異なったものであるような気がする。



1曲目の"Get Away"は、ゴリゴリの轟音オルタナティブロックだ。Sonic Youthよりはポップだが音の質感はまさに90年代初期のオルタナの雰囲気を感じさせる。

アルバムで聴くと分かるのだが、トラック毎の音量がバラバラだ。"Get Away"から次の曲の"The Wall"に移る時に、一気に音量が上がる。本作にはそんなめちゃくちゃなところがあるのだが、聴いているとそれが普通に感じてきてしまう…。

"The Wall"は本作の中でも粗野的だがポップ感のあるロックナンバー。
音圧で攻めてくる感じが物凄く好きだ。私の好きな感じのギタートーンで、めちゃくちゃ好きだ。
フロントマンのDaniel Blumbergのシャウトを聴くと思わず何もかも捨てて走り出したくなる。これを聴く時は必ず爆音で聴いてしまう癖がある、やはり私はロックから離れられないと思わされる。


全てを壊してくれそうなYuckのロック曲はまだまだある。"Holing Out""Operation"も最高の楽曲だ。

"Holing Out"は歪んだギターの音がかなり前面に出ている曲だが、もうめちゃくちゃ。アウトロ部分のギターが一番めちゃくちゃなのだが、こういうのを求めてたんだよ!と思わず手を挙げたくなってしまう音が鳴っている。

"Operation"はギターリフが目立つ。昔はロックと言えばギターリフと言うほどにギターリフが重視されていたが、少しずつそういう楽曲は70年代のハードロックが猛威を奮っていた頃に比べると減ったなという印象を個人的に持っている。
メガホンから発されたかのようなDaniel Blumbergの音質の悪い声も私を熱くさせてくれる。



私は普段ベースをメインに弾いているが、もしかするとギターの方が好きなのではないかと自分の中で思うようになることが増えた。ギターのトーンの話や歪みの音に関して敏感になりつつある。

私はギターの歪みの音を例える時に、物体の質感を基に考えることが多い。
例をあげるとするならば、フュージョンやメタルコアと言ったジャンルで用いられている音は研ぎ澄まされた切れ味の鋭い金属のような音だと勝手に感じている。いわゆるピロピロ系ギターの音など、純度の高さが際立った音だ。分かりやすく例えるならば「金の音」がする。

それに対してYuckの音は、ほとんど加工されていない「原石」のような歪みだ。洗練されてはいないがそれが逆に私を惹きつける。いわゆる楽曲においての趣向性やベクトルの話ではあるのだが、それでも無意識に惹かれるものはそういうものが多い。

ハイエンド系の歪んだギターの音や、ブルースやソウルの一部の曲のように枯れた音、全てを埋め尽くすかのようなザラザラした音、どういう音を用いるかを決定するだけで曲の雰囲気はガラッと変わる。  



本作の話に戻すが、本作に収録されているのは歪んだギターが目立った楽曲ばかりではない。
"Suicide Policeman""Suck""Stutter"などの落ち着いたトラックもある。
"Suck""Stutter"は前後曲であり、キーが同じである。これは意図的なものなのだろうか?

その他にも"Shook Down""Sunday"も甘く感傷的なメロディを聴かせてくれる楽曲だ。この2曲は個人的にすごく好きだ。


Yuckがシューゲイザーという位置付けで呼ばれることがあるのは、恐らく"Rubber"が入っているからではないだろうか。ノイズの洪水のような轟音が終始鳴り響いている。
トロトロしたリズム隊とノイズ塗れのリズムギターが続く中、リードギターのハウリングが私達を音の海に引き釣りこもうとする。
この曲は『Yuck』の中でも傑作の一つであると個人的には思っており、やはりこの曲を聴かなければ始まらないなという心持ちで聴いてしまう。


今までメンバーについてあまり触れてこなかったが、このバンドのベースは日本人だ。
マリコ・ドイさんという方がYuckのベースを担当しているが、彼女がボーカルを取った楽曲が収録されている。それは、かの有名なはっぴいえんどの"夏なんです"のカバーだ。
演奏に関しては恐らく本作の音源の方が洗練されている。2本のギターの絡みでの音のズラし方やベースのハイポジションなど、今まで轟音で荒々しい楽曲が多かった中でもこのカバーは綺麗にまとまっている。
是非本家と聴き比べてみてほしい、これはこれでアリだと私は思う。


B面に収録されている"Coconut Bible"はシンプルなギターリフが鳴っているオルタナティブロックだ。このシンプルさ故に、後半戦でこれを持ってこられるのは個人的にはグッと来てしまう。
この曲はかなり好きだ。



Yuckはイギリス出身のバンドではあるが、どちらかというとUSオルタナティブのようなバンドの曲が多い。
一応USもUKも両方色々なものを聴いてきたのだが、USの方が好きになるものが多かった。私がYuckを好きになれたのもそういうことなのだろうか。
大学1〜2年生の頃はかなり聴き込んだアルバムではあったのだが、今になってから聴き直すとまた違う見え方がある。本作でフロントマンを務めたDaniel Blumbergはもう脱退してしまったので、このメンバーでの新譜を期待できないのが残念だ。

『Yuck』は爆音で聴くからこそ良いと思える部分がある。そういう意味では万人にオススメできないのだが、嫌なことがあった時にはこのアルバムを爆音で聴くとスッキリすることがあるかもしれない。

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