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行き場のない怒りと 、赦しの物語 ー「スリービルボード」

怒りの行く先はどこなのか。3つの看板をめぐった人間ドラマ 

舞台は、アメリカ中西部・ミズーリ州。
娘を何者かに殺されてしまった母親が、犯人をみつけるために世間と果敢に闘う姿を描いた物語です。
娘を失ったことから、怒り、悲しみ、憂い、後悔… さまざまな感情が、母・ミルドレッドの中で渦巻きます。

後ろに見える、真っ赤な看板 (billbord)。ミルドレッドは、自腹でこの広告を掲出します。

どうして? ウィロビー署長。( HOW COME, CHIEF WILLOUGHBY? )
それで、逮捕はまだ? ( AND STILL NO ARRESTS? )

娘が死んでしまったこと、犯人がみつからないこと、なぜみつけられないのか?という警察への怒りを、広告を通して世の中にぶつけます。

「憎しみの連鎖」はどんな国でも場所でも起こりえますが、特にアメリカとは切っても切れないテーマだと思います。白人による黒人への虐待はその代表です。

4年前に起こったマイケル・ブラウンさんの射殺事件は記憶に新しいですが、それもこの映画の舞台と同じミズーリ州で起こりました。南北戦争のころから、白人と黒人の間にある「憎しみ」は、未だ絶ち切られていません。

命を落とした人ひとりひとりに、悲しむ親族や友人がいる。ということは、ミルドレッドのような感情にとらわれ苦しんだ人は、いったい今までにどれだけ存在するのでしょうか。

「怒りは怒りを来す」怒りの連鎖を断ち切れるか

ある日、ミルドレッドを揺さぶる出来事が起こります。それは、彼女が恨んでいた街の警察署長・ウィロビーの死。
彼は亡くなる直前に、ミルドレッド宛に自分の気持ちを綴った手紙を送っていました。

私の死は、君とは全く無関係だ。犯人がみつからないことを、とても残念に思っている。間違っても、殺されるなよ。

犯人が見つからないことの責任を、ウィロビーに押し付けていたミルドレッド。しかし、娘の死は、犯人以外の誰のせいでもありません。

自分がしていることは、八つ当たり以外のなんでもないということに、ミルドレッド自身が改めて気づくこととなります。

誰のせいでもないなら、もう復讐は辞めるのか?もちろん、ミルドレッドの答えはNoです。彼女の怒りはどこに行き着くのでしょうか。

「そこまでやるの?」とツッコミたくなる要素もありつつ、それと同時に大切なメッセージはちゃんと伝わってくる新しいジャンルの映画だったように思います。

個性豊かな登場人物たちが繰り広げる会話劇も、この映画の大きな魅力。言葉の裏側にあるメッセージを読み取りながら、鑑賞してみてください。


こちらの記事は、映画メディア「OLIVE」にも掲載しています。
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