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HAZUKI結ぶ恋『33通の手紙』<プロローグ>せつないプレゼント


<自立した恋愛を楽しみたいすべての女子へ>

恋愛依存症って一体何なのでしょうか?”症”なんてつくから、あまりよくないことなのでしょう。しかし、病名として治療方法が確立されているわけですし、これといって明確な定義があるわけでもありません。

そして、現代人に完璧主義が増えていると言われるように、自覚しないままに”恋愛依存症”傾向にある人が実は多いと聞きます。

主人公のはずきちゃんは、恋愛依存症です。大人の恋愛へと成長していくはずきちゃんを見守ってあげてくださ~い。

また、より実りをもたらす恋愛について考える機会になれば幸いです。

<あらすじ>主人公のはずきちゃんは、恋愛依存体質ですが、本人は自覚がありません。ある日、大好きな彼に婚約指輪の代わりに3冊の本を渡され、彼はというとドイツへと留学に行ってしまいました。取り残されたはずきは、自らの恋愛を振り返りつつ、大人の恋愛へと変容しようと強く心に誓いました。

「お互いが最高境地を超えるぐらいのパートナーシップを」

著者のぼやき(あ、純文学タッチなので、あかなんかな^^;ネットは、純文学あかんやて。noteで、その壁超えるかな。)

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<プロローグ>

『せつないプレゼント』

「君は、恋愛依存傾向が高い。僕は、それでも好きだよ。言い換えたら、繊細さがあること、それから僕のことを好きでいてくれてるってことだと思う。
ただ、そのままでは自滅してしまうんじゃないかって思うんだ。僕は君と大人の恋愛に発展させたい。
これ、プレゼント、この本を読んでみて。」

わたしたちは、いつもとは違う少しランク上のレストランで待ち合わせをした。彼の好みは、オードリーヘップバーンのような清純正統派なコーディネート、もしくは、モードを意識したスタイリッシュかつハイソで洗練されたスタイル。『清純』もしくは、『気品・上品さ』。

どっちにしようと1週間前から悩んだ。なにせ、優柔不断と言われるわたしである。そこで、こういうときは折衷案を出す。つまり今回の場合は、両方を組み合わせたようなスタイル。

腕を見せるけれど、デコルテは首元まで隠す。でも後ろはV字になっていて、セクシーさを出す。

結婚を前提としてお付き合いしていた彼に、
わたしは、優美な曲線を描くワイングラスの横から、3冊の本を渡された。指輪ではなく、それははだかのままの本だった。

1冊目『心理療法ACT入門 ラス・ハリス』
2冊目『セルフコンパッション』

3冊目『影響力の武器』

「この本を読むだけじゃなくて、実践してみてね、はずき。強いメンタルを身に着けて。こればかりは、僕にはどうしようもない。はずき、君が自分でしかできないことだから。僕は、君に食事に連れて行ってあげれるし、ほしがっていたあの本をあげることができる。究極の和菓子屋さん探しにも付き合える。僕が知ってることを伝えることもできる。
だけどね、僕は君の呼吸をコントロールできないんだ。

僕は明後日からドイツに行く、暫く連絡はしないつもりでいるんだ。」

わたしの心臓はドクンと大きくひとつなり、途端息苦しくなった。
銃にでもうたれたような様子を見たからか、彼は声を少し和らげて話をつづけたようだ。ようだ、というのは、見えなくなったからだ。目の前が、真っ白になった。辺りはただ淡い雪化粧の景色となった。

「なぜかって、それは・・・。」

あぁ、何か言っている。ドップラー効果か何かか、声が湾曲して、わたしの耳の横をすり抜けてただ流れたのか、ただわぁわぁとしか入らなかった。
 靄がかっていた視覚情報が、今度は次第に暗色となり灰色から闇に変わってあらゆる感覚が遠のいた。

気絶だった。

何日経ったのかもわからない。
目が覚めると、わたしは病院の一室にいた。真新しい病院ということが、経年劣化が見られないカーテン越しに見える向かいの別棟からわかった。こちらが旧棟ということも考えられたが、床に目を移したときにその考えは消えた。床は、ワックスがかけられたやわらかい色調の木目フローリングだった。ドラマや近所の病院で見るようなグレー系の無機質な床ではない。

「やわらかい色。なんだか和らいだ気持ちになる。木の力ってすごい。」

はずきは、素直にそう思った。 

脇にあるテーブルの上に、花が活けてある。ピンク色のカーネーションとカスミ草、これらはわたしが好きな花。カーネーションが好きなんて、古典的でしょう?それでも一番好きな花に挙げる人はもしかしたら少ないかもしれない。彼が、おいてくれたのだろうか。

ズキンズキン

あたまとそれから心臓が痛んだ。

それにしてもまるで、長い間夢を見ていたようだ。
人生は夢、だからまたわたしは夢に戻ってきたのだろう。

現実という夢に。

何があったのか、思い出すのに時間はかからなかった。心臓の痛みがわたしを現実へと連れ戻したのだろう。

「そうだ、3冊の本だ。わたしあ、3冊の本を渡された。」

痛い、心臓が痛い、それに呼吸が、呼吸が辛い・・・。息ができない。

ブ、ブザー。

わたしは、コードレスブザーを手にとった。
医師と看護婦がやってきたのは、おそらく数分のことなのだろうが、10分は裕に経っていたように感じられた。
「三浦さん、苦しいですね。大丈夫ですよ。すぐにおさまりますから。すぐ楽になりますよ。」

医師は、

「ゆっくりとゆっくりと呼吸してください。ゆっくりと。」

などと言いながら、看護師と協力しながら酸素ボンベのような装置を取りつけた。

呼吸、呼吸、ゆっくりと、ゆっくりと、するんだよね、


呼吸、
あぁ、そうだ。呼吸は、わたししかコントロールできない・・・。
あぁ、そうだ。わたしは、指輪の代わりに本を貰ったんだ。

3冊の本。

⇒続く

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