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一生甘口だと思っていたのに
カレーの話です。
わたしは辛いものに本当に弱いらしく、CoCo壱番屋では甘口を頼みますし、母親が好んで作ってくれるジャワカレーを敵対視していました。
(大人の辛さを謳うジャワカレーは、他のルーよりちょっと辛さが鋭い気がします)
中華料理店で麻婆豆腐が食べたい時は、辛さ抑えめにできるか打診します。
おいしそう…と思ってお菓子を手に取っても、「ピリ辛!」なんて表記があると諦めてしまいます。舌を守るために。
辛党も多い世の中です。
辛さが苦手だと、その手の食べ物の選択肢が極端に減ってしまうんですね。
なんか、楽しみの幅が狭まっているような…
舌がお子ちゃまね、なんてよくからかわれます。
とは言っても、わたしが食べられないのはあくまで「ピリ辛」だけ。
唐辛子系の刺すような辛さですね。
わさび、からし、山椒、胡椒などなど大好きで、料理にはマシマシで使いますし、
むしろ香辛料は得意な方なんじゃないでしょうか?
決して子ども舌じゃないんですよ!
これらの香辛料は、いい香りがするので「おいしい」と感じるんです。
ですが鷹の爪なんかは、食べても味はおろか香りをも感じ取れません。
ただただ痛い!
好奇心で注文したイカ墨パスタに、鷹の爪が入っていると知らず、涙目になりながら完食した思い出がよみがえります。
実家では、辛口派の家族と辛口ムリ派のわたしの折衷案で、カレーはいつも中辛でした。
それでも辛い。
実家を出て、甘口ルーのカレーを作って食べた時は、甘すぎて感動しましたね。
そんなこんなで、もうわたしは一生甘口カレーを食べて生きるんだ…と諦念に至っていたんです。
ところが、あるカレーとの出会いが、わたしに希望を抱かせてくれました。
なにげなく手に取ったスマートフォンに、なんの気なしに表示されたページをなんとなくタップしました。
その日は休日で、一度も立っていないんじゃないかと思うほどごろごろだらだらしているときのことです。
カレーが人気のお店を紹介するページだったのですが、まあその色がすごくて。
度肝を抜くほど黒い。
100時間煮込むという、手の込んだルーは甘くて辛いらしい。
記事を読み終えるや否や、一日寝ていたとは思えないほどの俊敏さで、わたしは寝床を後にしました。
よく覚えていませんが、すごい美味しい、みたいなことが書かれていました。
辛いのがダメなくせに、無性に食べたくなる時があるんですよね。
豆乳スープの担々麺とか、おいしいです。
毎回すすりながら咽せる。
♢
空いている時間帯だったので、すぐに席に着くことができ、早速注文。
メニューには「甘さと辛さの時間差」の文言。
あ、やばいかも。
あと引く辛さは、わたしが最も苦手とする分野なんですね。
辛いことは承知の上ですので、頼みの綱の甘いチャイも、抜かりなく。
これが予想より甘さ控えめだったもので、さらに雲行きが怪しくなってきました。
が、心の準備もできないうちにその時はやってきました。
ものの数分で運ばれてきたまっ黒なカレーを、ひとくち食べてみます。
これは…甘い…!
酸味も効いていて、あとからくるピリピリも嫌な辛味ではなく、
とにもかくにも濃厚で、初体験のお味でした。
すべてが溶け込んだ、どろどろ系ですね。
どろどろ系大好き。
このまっ黒カレー、わたしのマブダチ、甘口ボンカレーとは比にならないほどの辛さなんですよ。
でもおいしかった…
食べ進める途中で気づいたことがあります。
ごはんがどんどん熱くなっている。
もちろんそんなはずはないです。
わたしの口内が刺激にやられているんですね。
この熱さ×辛さの魔の組み合わせは、わたしにとって難攻不落の要塞だったわけです。
なのに、どういうわけか手が止まりません。
ペースダウンなしで完走しました。
なにより嬉しいのは、辛い料理の「辛さ」が心の底から美味しいと感じられたことです。
わたしは辛味を楽しめる人間だったんですね。よかった。
カレー一皿食べるのに、水を一杯しか飲まないなんて、はじめてのことです。
またひとつ、人生経験を積みました。
きれいにルーをすくい、食べ終えた帰り道は満足感でいっぱいでした。
腹の心地良い熱さに浮かされ、足取り軽く歩きました。
ありがとう、美味しいカレー屋さん。
とはいえ、辛さに弱いのは変わらないので、警戒体制を解いたわけではないですよ。
調べてみたところ、辛さには種類があるらしいです。
たとえば、麻辣ってよく聞きますよね?
麻(マー)と辣(ラー)では辛さが違うそうですよ。
麻はシビシビ、辣はピリピリ。
なるほど、このへんを意識していけば、辛い食べ物も楽しめそうです。
それでは。
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