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定型文を言いたくないの

「どうして人生で1番知りたいことを誰も教えてくれないんだろう」と誰かが言った。 「自分で気づくため」と声が太いおじさんが言った。 「ねえ〜ほんとそうだよね大切なことは教えて欲しいよね なんで一から考えないといけないんだろうね〜」とか細い声の語尾がやけに長く伸びるおばあさんが言った。 人は育った環境で得た価値観を自分のものとし、人に与える。それを誰かは愛と呼ぶらしい。と呟いた。 愛なんて後づけだって人間なんて所詮みんな自分が1番かわいいんだから、己の欲望より多く満たして

    • 愛を求めて赤を刺す

      「初めまして」 アイヴィさんにそう言われた時、綺麗で吸い込まれそうだった。いや吸い込まれた。 私はその時たった一言で好きになってしまった。 なにがあってもこの人の味方でいる、この人について行くととさえも初めましての一言で私はそう誓った。 こころの奥の真っ黒な黒い箱の中で。 それから3年が経っていつものようにアイヴィさんを起こしに行った。アイヴィさんは朝が弱い。あんなにキリッとしているのに、朝が弱いなんてなんて愛おしいのだろう。私は毎朝必ず彼女のおでこにキスを落としてから、

      • おいしさのなかには

        数時間前までイノシシに襲われて死んでしまったら周りはどんな反応をするのだろうと考えていた私は今、家に着き、泣くのを我慢しながら、ミニトマトを口いっぱいに含んでいた。ミニトマトが沢山のられている皿の横には、肉じゃががあった。 「今日は肉じゃがにしてみた」 と言われ愛を感じた。 「味見してみて」と言われ、大きいじゃがいもをお箸で半分に割り、食べてみる。 じゃがいもの甘さが私の全てを受け入れてくれる感じがした。 じゃがいものとなりの鶏肉は甘く、皮のテロテロ具合が下に優しく溶け込んだ

        • 逃げて、また逃げて

          悪意と善意が絡まり合う中に私たちはいる。 その中からはきっと一生抜け出せないのだろう。その方法を見つけようとしても、どこに答えがあるの分からない。きっとそれには答えなんかない。 それでも来ない人を待っているのと同じように私たちは答えを探しづつける。 答えを探し出せば、私たちはなぜ生きてるのなんて世界一難しい課題に追われたりする。 そんなこと考えても無駄なのに。 だから私たちは愛に逃げる。男に逃げる。 いつ捨てられていつトキメクかもわからないくせにその日常に一生トキメイている

        定型文を言いたくないの

          毒きのこの髪型問題

          「右目の前髪だけ長いね」と笑う君の髪はしっかり切りそろえられていた。笑う君の顔が悔しかったので、 「君の髪型はフクロツルタケみたいだよ」 と煽ってみると、 「それって毒きのこだよね、俺毒きのこにはなりたくないなあ」と怒る素振りもなく笑った。そう口にした君こそが毒きのこだ。と言いたかったけれど、自分が悔しくなるのが嫌だったので言うのはやめにした。 「まって、俺きのこみたいってこと?」と少し焦ったように言ったので、お、やっと怒ったかなと思ったら、 「俺、そろそろ髪切るんだよね〜。

          毒きのこの髪型問題

          大嫌い

          これほどまでに私は深く追い詰められたことはない。 それも夏になってしまった。夏がもっと嫌いになった。嫌いになりたくはないのに。そんなはずじゃないのに。それがたまたま夏だったていうだけで。夏は全部がむき出しになる。今日食べたトマトみたいでそれが頭にこびりついて離れない。酸っぱいからといってミニトマトより少し大きいトマトを一口ずつ口に入れる。すると真っ赤に染まっていた皮が一部欠け、ぐちゃっと甘酸っぱいものが露わになる。それを見てこわくなる。 やらなきゃいけないことなのに、明日

          「花はすぐ枯らしちゃうから私、花は嫌い」 そんなの花の方がお断りだな。そう思った昼下がり。

          「花はすぐ枯らしちゃうから私、花は嫌い」 そんなの花の方がお断りだな。そう思った昼下がり。

          サザエさん症候群回避の日曜日は嗅覚が敏感になる

          温泉に来た。 駐車場に入ればお風呂の匂いがする。この匂いがたまらなく好きだ。 ロッカーの鍵を受付で渡され、女湯の暖簾をくくれば、さっき駐車場で嗅いだ匂いよりさらに強く温泉の匂いがする。 鍵に書いてある番号を探す。これがいつも難しくて時間がかかってしまう。2069、2069、2069。この数字を頭で何度も繰り返しながら探す。何度も繰り返して見つけ出したのは、2169。おしい。ちょっと違う。   待ちに待った温泉だ。扉を開ければ、全裸の人がたくさんいて、私はそこを裸族街と呼

          サザエさん症候群回避の日曜日は嗅覚が敏感になる

          なんでもない日が怖くなる時

          蓋をあけると大根の匂い。 湿ったティッシュをめくるとそぼろにつかうであろう卵。 ぼそぼそのパン、なのにおいしい。 手についた砂糖を一粒も落とさずに水道まで行けるのか。 外を見れば青い空なのに、暗い。 16時20分 よく考えればどっちも4になる。 仲が良いのか悪いのか。 出窓に座ることを禁じられる女の子。 いらない。と言って嫌な顔をされる女の子。 真夜中に目が覚める女の子。 幽霊に驚かされる女の子。幽霊ってかまってちゃんなのかなと思う女の子。 私がやってるすべてのことは間違っ

          なんでもない日が怖くなる時

          プリンのカラメルをおいしいと感じた時、大人になりたくないと思った。

          プリンのカラメルをおいしいと感じた時、大人になりたくないと思った。

          財布の行方とピザ屋さん

          ピザが食べたくて、一時間程車を走らせた。 やった。着いた。 名前を書いてお待ちくださいのボードの上には見慣れているあの苗字が連なった表ではなく、受付は終了しました。という文字。店員さんに聞いてみたところ、受付は17:00からだと言う。現在の時刻は15:00ちょっと過ぎ。 2時間という時間を潰さなければならない。 幸い、ここがショッピングモールだったので、2時間は割と余裕だ。 2時間という時間の中で、フードコートで座って少し休憩をした。歩き疲れたのだ。 トイレに行くたくなった

          財布の行方とピザ屋さん