サザエさん症候群回避の日曜日は嗅覚が敏感になる

温泉に来た。

駐車場に入ればお風呂の匂いがする。この匂いがたまらなく好きだ。

ロッカーの鍵を受付で渡され、女湯の暖簾をくくれば、さっき駐車場で嗅いだ匂いよりさらに強く温泉の匂いがする。

鍵に書いてある番号を探す。これがいつも難しくて時間がかかってしまう。2069、2069、2069。この数字を頭で何度も繰り返しながら探す。何度も繰り返して見つけ出したのは、2169。おしい。ちょっと違う。
　
待ちに待った温泉だ。扉を開ければ、全裸の人がたくさんいて、私はそこを裸族街と呼ぶことにした。さっきまで遠かった匂いが今、私の鼻先のすぐそこにいると考えるとなんだかくすぐったかった。

お風呂にはテレビがついていて、サザエさんがやっていた。内容は父の日について。おっちょこちょいの磯野　波平が愛おしかった。

7:45　10分から15分つかれば、体に良いという文字を目で追った。ちょうどサザエさんが終わる時間だ。ふふラッキー。なにがラッキーなのかわかんないけどなんか嬉しかった。7:00手前サザエさんは終わりを迎える。次回予告を始める。サザエさん症候群になりそうだね。と自分に話しかける。そうだね。とすこし微笑む自分の返事が返ってくる。

そして最後の恒例行事じゃんけんの時間。この時間が好きだ。じゃんけんに勝ったときは嬉しいし、負けた時も嬉しい。私はチョキをだすと決めていた。なんだか勝てる気がした。

お決まりのセリフを口にしたサザエさんは、チョキをだした。あいこだ。「ああ〜」それしか言えなかった。せっかく勝てると思ったじゃんけんも勝てなくて、すこしくやしかった。サザエさんの最後の笑い声が私を煽った。

お風呂からあがって、本日3つ目のアイスを食べる。チョコミント味だ。よく考えてみれば、1つ目はチョコ味のアイス。2つ目はチョコ味のカップアイス。チョコづくしだ。

ビンゴ！サザエさんにそう言われたような気がして、首を横にふる。私はサザエさんに取り憑かれてしまったのかもしれないなんて思いながら、明日もがんばろうとサザエさんに誓う。