休校延長や9月入学に伴う影響を考える~自閉症スペクトラム障害の子どもの支援について~
今、ニュースや報道では、緊急事態宣言や休校の延長、9月入学というようなワードが増えてきています。小池都知事も「9月入学は混乱。しかし、今すでに混乱している。こういう時でしか社会は変わらない」との発言がありました。9月入学についてはメリット・デメリットあると思いますが、現実化するとすれば、現場はまた大混乱するでしょう。そして、それを考えるだけで私もドキドキしてきましたが、以前障がい児の療育関係の仕事をしていたこともあり、自閉症スペクトラム障害の子たちは大丈夫かしらと、ふと頭をよぎりました。
自閉症スペクトラム障害とは
アメリカ精神医学会による精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, DSM-5)によると、
コミュニケーションや言語に関する症状があり、常同行動を示すといったさまざまな状態を連続体(スペクトラム)として包含する診断名
中核症状
社会的コミュニケーションや社会的相互作用における持続的な欠陥
興味が限定的、行動が反復的、または活動の様式
周辺症状
言語の発達や使用の障害
攻撃性、自傷行為、かんしゃく
気分と感情の不安定性
感覚刺激に対する反応
多動と不注意 など
アメリカの疾病予防管理センターによれば68人に1人が自閉症スペクトラム障害であると確認されており、決して少ない数ではありません。今回の緊急事態において、本人やご家族のケアを考えていくことは大切であると思います。
どんなことが起きているのか
当たり前の生活が失われ、いろんな変化と向き合わなければならない現状。私たちはみな疲弊していると思います。しかし、自閉症スペクトラム障害を持った子どもたちはどうでしょうか?
常同行動をすることで心の安定を図っていたのにそれができない。
感覚刺激があってマスクができない。
体を動かしていないと気が済まないのに簡単に外へ出てはいけない。
言語表現が苦手なため、不安な気持ちを表現できない。など…
そして、その子を支える家族は、学校や療育、医療などのサポートを受けられず、抱えて孤立している可能性があります。そうなると、家庭内暴力や抑うつなど、2次的な問題も出てきているかもしれません。
支援方法
①見通しをたたせる
いつまで休校になりそうなのか、その間はどう過ごすといいのかなど、わかりやすく説明できるとよいです。視覚的に理解しやすいタイプには、カレンダーやスケジュール表、イラストなどを見せながら教えてあげると安心できると思います。
②家でできる趣味を増やす
多動なタイプの子は外に出られずイライラ、カリカリしている可能性があります。体を動かすことで心の安定を保っているので、家でできる範囲、体に刺激を入れてあげられるとよいです。例えば、ダンス、歌、太鼓やドラム等の楽器演奏は体を使うのでオススメです。
言葉でうまく表現できないタイプの子については、絵や日記を書くなど、言葉を発さなくてもよい表現方法が合っているかもしれません。また、読み聞かせや読書は語彙を増やすことにもつながります。語彙力がアップすると言語表現の幅も広がります。
③感覚過敏の詳細を理解する
マスクをつけなければいけないのに嫌がることがあると思います。それは、マスクの繊維やにおいに対する不快感や、息苦しさ、視界が狭くなることなどの恐怖感があるのかもしれません。どういうものなら安心できるのか、実際に試してみて一緒に考えていけるとよいです。
まとめ
変化に弱い子どもたちとどう向き合うのか。大人たちも疲弊してる中、対応することが難しいこともあるかと思います。とにかく大事なのは安心感です。子どもたちがどうなったら安心できるのかに思いをはせながら、今できることを行っていけるとよいですね。日常が早く戻ることを心から願いますが、日常に戻ることも、彼らにはまた変化。安心できる環境をその都度整えていけるとよいです。支える大人もストレス・セルフケアを大切に。
参考・引用文献
アメリカ精神医学会 精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, DSM-5)
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