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『僕と私の殺人日記』 その6

※ホラー系です。
※欝・死などの表現が含まれます。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
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いつの間にか眠っていたらしい。お空が赤くなっていた。
わたしは飛び起きる。早く家に帰ることにした。帰りが遅いとおかあさんに怒られる。

置いていたナイフを手に取る。 急いで階段へ向かったその時、動物の鳴き声がした。振り向くと白い子猫がわたしに近寄ってきた。この神社に棲みついている野良猫のミーちゃんだ。 ミーちゃんはわたしの靴に頭を擦りつけて、ちょこんと座った。

餌をねだっているようだ。ときどき、わたしは給食の残り物をミーちゃんにあげていた。おいしそうに食べている姿が可愛いのだ。 しゃがんで、頭を撫でるとうれしそうに目を細めた。

突如、頭の豆電球が光る。わたしはいいことを思いついた。今度は喉を掻いてやる。目を閉じて気持ちよさそうにしていた。 その瞬間、わたしはミーちゃんの喉をサバイバルナイフで掻っ捌いた。喉から血が滴り 落ちて、白くて小さな身体は横に崩れた。目は閉じたままだった。 わたしはしゃがんだまま、それを見た。

言葉では表せられないほどの快感だった。刃が肉を切り裂いた時の感触が忘れられない。花や草とは全然ちがう。 動かないものでは実感がなかった。でも、動いて可愛らしい声を上げる生物が動かなくなるのを見ると、わたしは確かに殺したのだとわかった。

そんなことは関係ないように日は傾いていた。早く帰らなければならない。死んだミーちゃんを森の中に隠して、地面に垂れた血は土をかぶせて殺害現場を隠滅した。 階段を急いで降りていると、わたしは泣いていた。ミーちゃんが死んで悲しかったのだ。 もう会えないと思うと胸が張り裂けそうだった。自分で殺しておいて虫のいい話だ。でも、 悲しいことに変わりない。

わたしは涙をぬぐった。すると赤いものが手にべったりついていた。それは喉を割いた時に飛び散ったミーちゃんの血だった。ミーちゃんの死が衝撃的で顔に血がついているこ とに気がつかなかったのだ。 大変なことになった。すぐに血を落とさないとミーちゃんを殺したのがばれてしまう。

どうしようかひどく悩んだ。 山を下りて、家の方に向かう。昔、砂利道で転んだ時みたいにけがをしたことにしよう。 そう決める。だけど、手当ての時にばれる可能性があった。 わざと顔にけがをつくろうか考えていると、田んぼが目に映った。お空と同じように水面が赤く染まり、夕日が映し出されている。

わたしは思い出した。 昼間にここを通った時、水が流れていた。田植えをするためだ。あれからすっかり時間が経って、どの田んぼも水が張っている。ラッキーだ。 すぐにわたしは近くの田んぼに駆け寄った。両手で水をすくい、顔を洗う。泥がついても関係ない。何度も何度も肌が破けるくらい顔を擦った。口に田んぼの水が入ったのか、 泥の味がする。だけど、どうでもいいことだった。 自分の感情がよくわからなかった。死んだら悲しいのに、殺すとうれしい。 そんな自分が嫌になった。

すると、わたしは暗闇の奥に引っ張られる感覚がした。まるで心の奥底に閉じ込められた感じだった。頭が真っ白になった。身体が固まる。 なのに、身体が動いていた。必死に顔についた血を洗い流している。泣きながら顔に泥を塗っている。 違和感がした。

「何で殺すの? 何であんなひどいことするの?」

勝手に口が開いた。わたしはびっくりした。そんな事、考えていない。だけど、口は止まらない。

「ミーちゃんのこと好きじゃなかったの? ぼくは好きだったよ・・・」

ぼく? わたしじゃなくて? 何、言ってるの、わたし。
それよりナイフも洗わないと血が固まってしまう。早く水につけて・・・何で身体が動かないの!

「ひどい、ひどいよぉ・・・」

その後わたしはバシャバシャと手を洗いまくった後、ナイフを田んぼに向かって投げ捨てた。


続く…


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