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『僕と私の殺人日記』 その35

※ホラー系です。
※欝・死などの表現が含まれます。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
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「では、どうするのですか? 殺人鬼は赤子ですら殺してしまう、非情な人間です。もう わかっているだけで七人の犠牲者が出ているのですよ?」

「そうよ、東郷さん。このまま警察を待っていたら、みんな殺されてしまいます。子供たちに何かあったら・・・」

不安でいっぱいな骨山夫婦は、溢れ出る不満を漏らした。それが伝染したのか、みんな暗い顔になる。

「これだから若いもんは。解決方法ならあるわい。それをすれば仕舞いじゃ」

「本当か! ゴルじい!」

まさかの言葉に権太くんのおとうさんが乗り出した。みんなも目を見開く。

「当然じゃ。山の猟師をなめるなよ」

「それで解決方法ってなんなんだ?」

「至極明快。この猟銃で犯人を撃てばいい」

ゴルじいは抱いていた猟銃をポンポン叩く。心なしか銃が「任せろ」と言っているように感じた。

「あのねえ、それはやり過ぎでしょう。今度はゴルじいが殺人犯になりますよ」

あきれたようにみんな、ため息をついた。

「安心せい。致命傷は避ける。それくらいの腕はあるわい」

誇らしそうにゴルじいは言う。こんなもので撃たれたらひとたまりもない。わたしは息を飲んだ。大人たちの話はさらに白熱する。

「大体、犯人もわからないのに、撃つも何もありませんよ。ちゃんと考えてください」

「そうじゃ、そうじゃ」

「そうよ、そうよ」

権太くんのおかあさんの言葉にお年寄りたちも賛同する。だけど、ゴルじいは余裕たっぷりに口を開いた。

「だから言っておろうが。解決方法ならあると。すでに犯人はわかっておる」

「ええ!」

みんながその言葉に驚いた。もちろん、わたしとユイカちゃんも。

「一体、誰なんだ!」

「どこにいるの!」

「何で早く言わないんだ!」

口々に大人たちが叫ぶ。

「まあ、落ち着け皆の衆。一つずつ話そう」

もったいぶった口調でゴルじいは言う。犯人が気になってしかたない大人たちは静か耳を傾けた。わたしの注意を向ける。

「まず、儂は毎朝、神社に参りに行くんじゃが、やしろ近くの地面に血の痕があった。消そうとした跡もな。それは草むらの方に続いていた。気になって茂みの中に入ると、一匹の猫が死んでおった。刃物で首を切られてのぉ」

わたしは冷や汗が止まらなかった。ミーちゃんの死骸を見つけられていたのだ。こんなことなら埋めて置くべきだった。

「その後じゃ、殺人事件が起こったのは。この感じ、五年前にもあったのぉ。どこぞのバカがペットの犬を殺してから、人を殺すようになったあの事件と似ておらんか? しかも、 すべて刃物を使っているところまで同じじゃ」

ゴルじいはなぜかユイカちゃんを見た。その鋭い眼光をものともせずにユイカちゃんは睨み返す。

「ちょっと! ユイカちゃんが犯人だというんですか! いくら父親が殺人鬼だからと言 って、決めつけるのはひどすぎます」

庇うように権太くんのおかあさんが、反論する。

「別にそやつが犯人とは言っておらん。恐らく協力者じゃろう。そして、村人を殺した犯人はその横にいるお前じゃ。のぉ、小娘?」

そう言ってゴルじいは猟銃を構える。銃口の先は、わたしに向けられていた。大人たち は一斉にわたしを見て、目と耳を疑っていた。

「わ、わたし?」

「そうじゃ、お前さんからかすかに血の臭いがする。動物の血の臭いではない。間違いなく人間の血の臭いじゃ。やってくれたな、よそ者め!」

怒号と同時にゴルじいは引き金を引いた。


続く…


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