「つまらない会議」を変えるためのファシリテーションのあり方
こんにちは、「ゆーの」こと田中優之介です。
僕は普段ワークショップ制作や演劇の実践をしながら、「場とはなにか」「他者と関係するとはどういうことか」ということについて、身体論を切り口に考えています。興味のある方は、ぜひお話ししましょう!ご連絡は僕のTwitterのDMまで👍
この記事では、「つまらないもの」になりがちな“会議”というものを活性化するためにはどうすれば良いか、ということについて10個のポイントと5つの事例を交えながら、会議におけるファシリテーターのあり方を探っていこうと思います。
そもそも、なぜ会議はつまらないのか
なぜ会議はつまらないのだろう、とよく考えます。
色々な要因が考えられるでしょうが、会議がつまらなく思える1番の理由として挙げられると僕が思うのは「私、ここにいなくてもいいんじゃ?」感。
たまに「会議がつまらないのは、積極性に欠けるからだ。」と、その人の自己責任かのような主張を聞きます。では、会議をつまらなく感じさせないために、会議の進行者・企画者たるあなたは本当に出来る限りのことをやったのでしょうか?
そもそも、会議って発言しにくいもの。
しかし、それは決してその人が怠惰なせい、ではありません。
会議の進行者・企画者は、立場上、ほかの人より多く話さなければいけないことがあります。それは仕方のないことだし、ときには必要なことでもあるのですが、一方で、そのように進行者が多く話す状況は、会議参加者の心のなかに「あの人は話を進める側/私は話に付いていく側」という線引きを生みます。
これが、「会議がつまらない」の根本的な原因です。
「モチベの低下のために、発言しなくなる」
のではなく、
「発言できない/しないために、モチベが低下する」
のです。
これからご紹介する10個のポイントと、5つの事例はどれも僕自身が会議ファシリテーションをするなかで「どうすれば会議が発言しやすい場になるだろうか」と試行錯誤した結果生まれてきた実践知です。
「ん?」と首を傾げるところもあるかもしれませんが、ぜひ読み終わったらそういう感想も含めて、Twitterなどで投稿してくださると嬉しいです!👍
それでは、まずは事前準備ですべきことから見ていきましょう。
事前準備編
「会議に事前準備とかいるの?」という声が聞こえてきそうですが、親しき仲にも礼儀あり。進行者がだらだらしてる会議は、いくら普段の仲がよくても参加者はやる気が失せてしまいます。
経験上、冒頭で1分だらだらしてしまうと、それを取り戻すのに15分ほどかかります。時間短縮のためにもしっかり準備をしましょう!
事前準備① 最後10分の景色を超具体化する
事前準備で最も大事なことであり、最初にすることが「ゴール設定」。
ですが、ここに罠があります。
会議のゴールは、“決めた気”になりやすい。
最初からゴールを決めようとすると、耳障りのいい言葉をゴールに設定してしまうことがよくあります。実現可能性や会議後の動き出しなどの想定ができてないまま、「ゴールはできた」気になってしまうのです。
そこで、大事なのは「会議の最後10分の景色を超具体的に想像すること」です。
誰がどういう会話をして、どのように会議を締めるか。そこで話されている会話は、 「これで実行しよう!」なのか「これを元に考えよう!」なのか「任せた!」なのか。
1つ1つのセリフレベルにまで、想像を深めます。ゴール設定はそのあと。もし1人でやるのが難しいならば、誰かと一緒にやるとなおよいでしょう。
事前準備② 「ゴール」と「実際やること」を言葉にする
次にすることが、①で立ち上げた景色から「ゴール」と「実際やること」を言葉として紡ぎ出すことです。
「実際すること」とは、ブレスト、アイデア投票など、会議時間をどのように使うかというプロセスのことです。直前に決めるようにしても大丈夫なのですが、③で使うのでできればそこまで言葉にしておいた方がよりよいでしょう。
「ゴール」は①の景色が深まっていればありきたりなものでも大丈夫です。しかし、言葉にしようとするなかで悩んでしまった場合は少し①に立ち戻ってもう一度考えてみることもオススメします。
事前準備③ 日程調整とともに、詳細を丁寧に伝える
次に、日程調整です。
なぜ①と②のあとに日程調整を行うのか、というと、
日程調整では「なんのための、どういうことをする会議なのか」ということを一緒に伝えなければならないからです。
お気づきかもしれませんが、「なんのための」は「ゴール」で、「どういうことをする」は「実際やること」と、②で考えたものを当てはめればよいようになっています。
特に学生団体では、詳細を共有せず日程調整だけ先に行うことも多いように感じますが、最初に述べたとおり親しき仲にも礼儀あり。“会議をすることはみんなの時間を取ることだ”、という意識が、一人一人を尊重することになり、参加者の「私はこの会議に必要だ」という実感を生むことにつながります。
この『詳細の共有』は、参加必須の会議であればより大切にしなければなりません。「なんで呼ばれたの」と不満を生みやすい参加必須だからこそ、「会議が楽しみだ」と参加者に思わせられるようにしましょう。
事前準備④ アジェンダ兼議事録を作っておく
当日が近くなったら、アジェンダ兼議事録として、同期可能なオンラインドキュメントを作成しておきましょう。
なぜ同期可能性が大事なのか、というと、それは会議参加者の見ているものを統一するためです。「これが」「ここの」という指示語を使えるようになれば話が冗長にならずに済みますし、議事録が共通言語としての役割を果たし意思決定がよりスムーズに行われます。
これは、会議がオンラインである場合は必須ですが、オフラインである場合もなるべくあるとよいでしょう。
事前準備⑤ リマインドをする
当日の朝になったら、リマインドを送っておきます。
(例)
【リマインド】今日の夜18:00から1時間、〇〇と△△と××(参加者)で、◉◉会議室で会議するよー。内容は『〜〜〜〜』で、□□□□□に関しては今日決めちゃいたいです。議事録はこれ(リンク)!じゃ、またよろしくです!
デートの日の朝、起きたら「そっか、ついに今日だったな!」とワクワクするような、そんな気持ちをみんなに届けることを意識して、重苦しくならないよう気を付けます。(もちろん時と場合によりますが)
その際、
・開始時間
・所要時間
・参加者
・場所
・簡単な内容
・必ず決めたいこと
・議事録
を共有します。こうすることで、参加者はどのような態度で会議にのぞめばよいのか、知ることができます。
当日編
さて、ここからは会議時間中に気をつけるべき5つのポイントです。みなさん、最初に僕が書いたことを覚えているでしょうか?
僕が、このnoteで紹介したかったのは「どうすれば会議が発言しやすい場になるだろうか」ということでした。
ここまでは紹介した5つのポイントは、あくまで事前準備に過ぎません。実際の会議をどれだけ発言しやすい場にできるかは、当日のあなたにかかっています。
具体的に何に気をつければ、「発言しやすい会議」になるのか。
それでは、当日編を見ていきましょう!
当日① みんなと会議を作る、という意識
最初に「(参加者が)発言できない/しないために、モチベが低下する」と書きました。だから、一番大事なのはあなたが喋ることではなく、参加者が喋ることです。
「そんなことわかってるけど、気づいたら喋りすぎてるんだ...」という方は、ぜひ、このことを意識してみてください。
参加者全員で、会議を“つくる”。
会議では、ついついそのアウトプットに目が向きがちです。もちろんそれは必要なことですが、それだけを目指して全力疾走してしまうと、会議の参加者を置いてけぼりにしてしまうことになります。
大事なのは、この会議すらもみんなで作るんだ、という意識。
きっと会議中に見える景色が変わってくるはずです。
当日② 必ず「最近どうなの?元気?」から
素敵な会議作りのためには、開始直前が肝要です。
集まってきた参加者と、開始前に雑談をしてみること。
そのような文化がない組織では最初のうちはうまくいかないでしょうが、粘り強くチラホラと集まってきた参加者に雑談を振ります。
「つまらない会議」に慣れている人は、身体に「会議では、聞き手に回るものだ」という態度が染み付いてしまっています。それを、雑談をすることでゆっくり解きほぐすのです。
“会議ではあくまで、あなた自身の意見が聞きたい”
“あなたの、取り繕わない言葉がほしい”
というメッセージが、雑談を通して暗に伝われば完璧です。
また、会議開始後に、みんなの近況を短く共有する“チェックイン”の時間を取り入れてもよいでしょう。
当日③ 最初に「時間配分」について、改めて自分の言葉で伝える
最初に、この会議の「ゴール」と「実際やること」、そして「時間配分」を改めて進行者・企画者の口から伝えます。
「そんなこと当たり前だろう」と思っている人もいるかもしれませんが、こういうことは焦っていると意外と忘れるもの。
また、終了時間をしっかり伝えてみんなの合意を取ることで、全員に「時間を守ろう」という意識が生まれ、時間がおしてしまうことが減ります。
当日④ 会議中は、自分の感情に嘘をつかない
「今日は、私が進行しなきゃいけないから」
「時間がおしてるし、とりあえず先に進めなきゃ」
会議の進行をつとめる際、このように自分が思ったこと・感じたことを押し殺してはいませんか?
もちろん進行者としての自覚を持つことは大事ですが、会議を「発言しやすい場」にするためには、自分自身も自分が思ったこと・感じたことに素直にならなければなりません。
人間は、最初の3秒で第一印象が決まる、と言われているように、他の人間の気持ちの推察能力に優れています。あなたが自分の意見を言わず押し黙っていると、きっと他の参加者はそれを察して「この会議は、自分の意見を言う流れではないのだな」と無意識に不安に思ってしまうでしょう。
進行者として「時間がまずいから先に進めたい」と思ったときも、
「ごめんなさい、私ももっとこのことについて話したいのだけど、時間がおしてるんですよね。私はとりあえず次に進めてもいいかなと思っているのですが、みなさんはどうしたいですか?」
と聞いてみましょう。あなたが等身大の自分でいる限り、きっと参加者の人もそれに応えてくれるはずです。
当日⑤ モヤモヤは絶対に絶対に全部検知する
とくに、何か意思決定をしなければいけない会議で起こりがちなのが、「会議で決まったはずが、実はみんな納得していない」という現象です。
なぜ「納得」が大事なのか。
最初に述べたことに戻りますが、そもそも会議がつまらないものにならないためには、参加者が「私、ここにいなくてもいいんじゃ?」感を感じないことが大切でした。想像してみるとすぐにわかるでしょうが、納得感がないまま会議が進められるとその参加者は「勝手にやってれば」という気分になるでしょう。そういう意味でもしかすると、これは今回紹介するなかで最も大事なポイントかもしれません。
一方で、会議では、いくら進行者が気をつけていても、誰しも多少は「発言しにくい」と感じますし、そうでなくても
「納得していないけど、なんと言葉にすればいいか分からない」
「話の流れについていけてなくて言い出しにくい」
「時間がおしてるから発言しないほうがよさそう」
など本当に様々な理由で、みんな思ったこと・感じたことを口に出しません。
だから、進行者が積極的にモヤモヤのサインを察知することが大切なのです。ここでは僕が経験的に学んだ“モヤモヤサイン”を紹介します。
・感情がこもっていない相槌の「うーん」
・話が途切れたときの静寂
・話始めが被ったあと、自分から何を言おうとしていたか言い出そうとしない
・ずっと下を向いて考え事をしている
・賛同の相槌が少なく、じっとしている
話の流れがスムーズにいっている時こそ、それを止めてまでモヤモヤを拾うことは難しいでしょう。しかし、誰かのモヤモヤは、会議にとって新たな視点です。
新たな視点があるかないか、ということは組織に長期的な影響をもたらします。それをよい影響にするか、悪い影響にするか、は会議中のあなたの勇気にかかっているのです。
事例編
さて最後に、「そうは言っても、こういう状況ではどうしようもない」という、いくつかの困った事例を紹介して終わりにしましょう。
事例① そもそも参加者のモチベが低く、会議に参加してくれない
あなた自身が人間として面白がってもらうことが大切です。
最初に述べましたが「会議は、人の時間を取る行為」です。何も分からない状態で会議に参加することは参加者にとってはリスクでしかありません。
しかし、そこであなた自身を面白がってもらうことができれば、「こいつがやっていることだから、一度参加してみるか」という気持ちになるでしょう。あとは、その会議を最高のものにすればいいだけです。
事例② 全然喋らない人にはどうすればいい?
話の流れが一旦落ち着いたところで、進行者からその人の意見を聞いてみましょう。
「いろいろ考えてるようですけど、どうおもいます?」
「これまでの議論、納得感ありますか?大丈夫ですか?」
一番大事なのは、進行者が自分の言葉で質問をすること。“進行者として質問しなきゃ“という強制感は、すぐにバレてしまいます。
事例③ 「なんでも意見言っていいよ!」のハードルが高い
意見を言ってほしいのに、どうしても言ってくれない。ということはよくあることでしょう。その場合は、問いの投げ方を工夫してみると良いかもしれません。
「何か意見ある?」ではなく
「××さん、〇〇についてどう思った?ちょっとやりすぎかな?」と具体的に。
「どう思う?」ではなく
「もし、△△が□□だったら、どうおもいます?」とひねった問いを。
参加者から言葉が出ないときは、「言いたいことがまとまっていない」か「現時点でとくに意見を持っていない」のどちらかの場合が多いです。前者であれば具体的な問いを、後者であればひねった問いをそれぞれ投げかけてみるのが良いかもしれません。
事例④ 今日決めなきゃいけないことが、全然決まらない
抱え込まず、参加者に相談してしまいましょう。
そして、会議のスケジュールやプロジェクト全体のスケジュールの敷き直しも視野に入れながら、参加者の納得感と両立できる結論を出すことが肝要です。
事例⑤ 会議が良かったかどうかの評価指標ってある?
いちいちアンケートを投げることができないので、会議の良し悪しはすぐにはわかりません。しかし、それはその後の参加者の積極性に現れます。
良い会議には、参加者の居場所があります。
居場所があると、安心して挑戦することも、さらにコミットしたいという気持ちになることもできるでしょう。
場の最小単位としての『会議』
ここまで読んでくださりありがとうございました。僕のnoteでみなさんの会議が少しでも素敵になれば嬉しいなとおもいます。
僕は、会議が組織文化を作ると思っています。会議という、日常にあふれた1つ1つの“場”が組織の構成員の居場所となるれば、そこから良い組織の文化が芽生えると思うのです。
会議は、情報共有の場・意思決定の場でもあると同時に、組織作りの場でもあるかもしれない。そのような気持ちを、少しでもこのnoteから感じてくださったなら、そんなに嬉しいことはありません。
長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。
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