西森 有

読書が趣味の、ズボラな主婦です。

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最近の記事

良い文章を生むのは

 眠れる龍が目を覚ましてしまった。 何の前触れもなく、唐突に。 これまでの人生で一度は捕まるも、なんとか逃げおおせたと思ってきた。 しかしまたもや、この一大事に見舞われるとは。  インターネットでその魔物を調べ尽くす。 「手術」「切開」「入院」等物騒な文言と一緒に、目を覆いたくなるような症例写真が並ぶ。 恐ろしい。 最後の望みを託し、某有名な市販薬〇〇〇〇ー〇を使用したが効果はなかった。 自然治癒する見込みは限りなくゼロに近い。 あぁ、病院なんて行きたくない。 でももうそん

    • またのお越しをお待ちしております

      買い物から帰ると、夫の車の下に猫がいた。 白地に茶の牛柄模様。 足を投げ出してででんと横たわる、恰幅のよろしいおじさん猫。 (顔からしておじさん、としたがおばさんの可能性も捨てきれない) しゃがみこんで覗いてみたら、首だけもたげてこちらを見やる。 身綺麗なところを見ると、どこかの飼い猫に違いない。 沈黙。 出ていけなんて野暮なことは言わない。 10月に入ったというのに、世間はまだまだ暑いのだ。しばし休んで行けばいい。 「駐車料金、1ナデナデです」 徴収しようと手を出す

      • 未来をすくう

        今回『未来のためにできること』というお題に挑戦するにあたって、つい (既に9000件近くの応募……選ばれるわけがない) そんな思いが頭に浮かんだ。 どうせ無理だと、私は私を見捨てようとしたのだ。なんてケチな人生。 いま4歳の娘がそんな私を見て、大人や未来に希望を持てるだろうか? 家族で遊園地へ行ったときのことだ。 スーパーボールすくいがあった。1回500円。娘はこれをやりたがった。100円ショップで買えばすくうより安いし、こういう類のものは失くしたり飽きたりしてそれっきりだ

        • とうもろこしおじさん

          「間に合わないだと!?ふざけるな!俺は昼飯も食べずに車で走ってきたんだそ!ほら!」 船乗り場の窓口で働く私に向かって、怒鳴るおじさん。ふたを開けられたお弁当箱は、たしかに手つかず。 しかし、船は定刻で出航してしまった。私に怒鳴られたとて、出航してしまった船を戻せるはずもない。 次の船は2時間後。 おじさんはぶつくさと文句を言いながらも、窓口を離れて行った。 それから幾日か経って、あのおじさんが窓口に現れた。 私は内心、げ、と思ったのだが、その日のおじさんは上機嫌。 私の隣

        良い文章を生むのは

          「店員」という名の服を着て

          高校卒業後、就職することにした私。 これといってやりたい仕事は無かった。でも私には、どうしても克服したい難題があった。 それは、 人と自然に話せるようになりたい ということ。 常に誰かの顔色を伺い、ちょっと想定外のことを言われると混乱してしまい、妙な空気になった学生時代。人と仲良くなりたいと思いながら、人が怖くて近付けないというアンバランスさに悩んでいた。 そこで私が思い付いたのは、接客の仕事だった。 人付き合いも会話も下手だが、仕事として毎日取り組めば少しはマシになる

          「店員」という名の服を着て