医療ソーシャルワーカー⑨(代弁)

退院支援のケースとして自宅や施設以外に転院の調整があります。
リハビリを目的として転院もありますが、看取りをするための転院もあります。

この看取り転院についていつも感じてしまうことがあります。
看取りでの調整をする患者さんの多くは意思疎通が出来ず、痰の吸引がも頻回に必要で、食事の摂取が困難な為、点滴や胃ろう、経鼻栄養の管に繋がれ、基本的にベッド上で1日を過ごします。

転院調整をする前に主治医から病状説明があり、回復が困難なこと、今後は看取りになること、栄養摂取の方法の確認が行われます。

誰しもが患者には元気でいてもらいたい、回復してもらいたい希望は持っていますが、どうしてもそれが難しい時が訪れます。

その際、本人にはどんな形でも長生きしてほしいと望む家族の思いもわかりますが、本人の思いは聞けないまま調整することになります。

先に述べましたが、患者さんは意思疎通が困難な為、自身で最期の時をどうするかは決められません。たいてい決めるのは家族です。本人の代弁者として今後の方針を決めます。

どんな形でも生きててほしい。点滴でも胃ろうでも、とにかく長生きできる方法をお願いしたい。

患者さんの状態にもよりますが、痰の吸引が必要な際の患者さんの様子を見るととても楽ではないように思います。多い人では2~3時間置きに病棟看護師が対応します。一日で考えると8回~10回行うわけです。
意思疎通が困難でも吸引の際の咳き込む様子や、手を払いのける仕草をする患者さんもいます。それを1日10回・・・。

栄養摂取が確立されれば、数か月もしくはそれ以上続くこともあります。
本人にとっては苦痛かもしれないことを1日10回、それを数か月。体力的に弱りながらも毎日続く。
家族にも会う機会も減り、住み慣れていない環境で過ごしながら吸引は続く。
本人が元気な時にこの状態が想像できていれば望むことなのかと考えしまいますが、ソーシャルワーカーとしては適切な転院先に依頼することしか出来ません。

あくまで私自身の考えを述べているので、家族の選択することを否定はしませんが、なんとも言えない気持ちを抱えながら調整していく私はまだソーシャルワーカーとして未熟なのかもしれません。
もしかしたら今後、その選択にも肯定的に捉えられることが出来る日がくるかもしれないと思いながら、日々の仕事を取り組んでいきます。


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